北尾吉孝日記

『失われゆく日本人らしさ』

2019年11月29日 16:15

10年前発売された拙著『安岡正篤ノート』(致知出版社)の第2章で、私は「陽明学を日本に普及させた安岡正篤」と題し次の通り述べました--「悪が必ずしも滅びるとは限らない」「力の強い者が勝つ」と考えるような人たちが出てきているのは、日本人の遺伝子が変異してきているためかもしれません。しかし、これは日本人らしさを失うことに他なりません。性善説、勧善懲悪という考え方は、時代を超えて訴え続けていくべきものだと思います。
私は「正義は必ず勝つ」「悪はろくなことはない」といったことを、テレビドラマ等を通じ日本国民に啓蒙すべきと思うのですが、嘗て小生が子供時代に観ていたような勧善懲悪の番組は今非常に少なくなっているように感じられます。或いは、「積善の家には必ず余慶(よけい)有り」(『易経』)とのエッセンスが入ったテレビ番組があれば良いと思うのですが、何故かそうした類が無くなって行っており私は此の現況を大変憂慮しています。
「正義は必ず勝つ」というようなテレビドラマを子供時代に観て育てば、悪い思いになる人は少ないでしょう。例えば『水戸黄門』を観て、悪代官を最後に遣っ付ける単純なストーリーだと思う人はいるかもしれませんが、その結末が悪い終わり方だと思う人はいないでしょう。訳の分からぬ終わり方で何かスッキリしない結末の番組は、最早不要ではないでしょうか。
我国が「世界一安全な国」で在り続けようとするならば、国民の道徳心や良識を更に高めるためのテレビ番組を制作して行くことが極めて大事になります。或いは、これからかなり増えるであろう移民に対しては、「日本社会においては○○○が非常に重要視され、○○○から逸脱する行為者は、逆に著しく軽蔑される」、といった具合に道徳的教育を施して行かねばなりません。
その時、彼等を何に同化させるのかと言えば、それは、日本人が持っている伝統的な良き特質に同化させることに他なりません。例えば今月2日閉幕したラグビーワールドカップ日本大会でも「おもてなし」が随分評判になりましたが、之は我国民が有するトラディションの良き特質の一つに違いないわけです。武道における「礼に始まり、礼に終わる」という精神等々そういうものを残して行くために、マスコミ関係者は「如何なる番組を作るべきか」「どういう思想を日本国民に子供時代から持たせたら良いか」等々よくよく考えて、その職務に当たって貰いたいと思うのです。
取り分け国税の如く視聴料を徴収するNHKに対しては、その受益者負担に反する側面に不公平感を持っている人も沢山います。それだけにNHKの大事な役割というのは、国民の知的水準だけでなしに道徳的水準も上げ、日本をより一層住み易く・明るく・高潔な世界に誇るべき社会に導いて行くよう注力することだと私は考えています。
今年の大河ドラマ「いだてん」は、来年のオリンピック東京開催に合わせてみたものの、続く視聴率低迷が報じられます。しかし、そもそもが視聴率を気にしなければならないのは民放テレビ局であります。毎年この時期に、NHK紅白歌合戦の視聴率がどうだこうだと騒ぎ立てるのもナンセンスです。NHKは唯々、日本人らしさの維持・発展に資する真面な番組作りに日々真摯に向き合うのです。そして、我国の人民の知的・道徳的レベルをより高い方向に誘導して行くよう尽力し続けるべきだと思います。




 

我々が20年程前に立ち上げたSBI証券は、新しいインターネットのテクノロジーを駆使して、顧客便益性を高め手数料を徹底的に安くし、多くの投資家の賛同を得て今日の隆盛に至っています。顧客便益性を高める、投資家利益を追求する--創業以来の顧客中心主義というのが、我々の正に基本的な事業の精神であります。今日でもその気持ちは全く変わることなく我々は更にそれを達成するために、フィデューシャリー・デューティを投資の世界に徹底的に浸透させるべく、色々な技術革新を取り入れながら事業展開を進めています。
そういう意味では、今回日本経済新聞が「日本版フラッシュ・ボーイズ」などと題されたアイキャッチングな記事を書いていますが、私から言わせれば十分な検証なくして軽々に記事化すべき事柄ではないと思います。『米作家マイケル・ルイス氏が2014年に著書「フラッシュ・ボーイズ」で描いた米国株市場の状況が、日本でも繰り返されようとしている』 とは、余りに不勉強甚だしく幼稚な記事と言わざるを得ないものです。
上記書でマイケル・ルイス氏は、『株式の超高速取引トレーダーに売買注文で「先回り」される一般の小口投資家が不利益を被っている』とか「通常のデータ供給に頼っている市場参加者を超高速トレーダーが出し抜く構造的な要因がある」というような主張を行いました。対してそれが正しいか否かをデータ分析により検証したのが、米国カリフォルニア大学バークレー校のロバート・バートレット氏、及びジャスティン・マクラリー氏の両教授です。
その結果は「How Rigged Are Stock Markets? Evidence From Microsecond Timestamps」と題された51頁から成る論文に纏められており、結論としてマイケル・ルイス氏の主張は妥当ではないというふうになりました。以下ロイター記事よりの引用を御紹介しておきますが、私は此の論文につき極めて正しいやり方で検証を行ったものとして高く評価しています。

【フラッシュ・ボーイズが掲げた2つの理論は実際に証明されていないと指摘。1つ目のマーケットメーカーが最適な価格を提供しないことで顧客を欺いているという考え方は「正しくないことが分かった」と述べた。さらにもう1つの超高速トレーダーがより素早く売買注文情報を入手して一般に出回るよりも前に取引を執行しているという説も「現実には起きていない」という。このため両教授による調査では、SIP(セキュリティ・インフォメーション・プロセッサ)と呼ばれるシステムを通じてより遅いスピードで供給される価格情報を用いる投資家が、不利な立場に置かれている証拠は乏しいことが判明した。】

我々はと言うと、欧米でグローバルスタンダードと現在なっている注文形態TIF(タイム・イン・フォース)の導入によって、SBI証券の顧客全体で見た場合、実際に定量的にも非常に大きなメリットがあるということも我々自身の実証データから得ています。即ち、月間の約定価格の改善効果が約4000万円、手数料割引が約550万円ということで、此のエビデンスからも上記の両教授の実証分析は妥当であり、大いに投資家を利するものであると私は考えています。
更に言えば今回日経は、2019年10月からのTIFで、板乗りする僅かな時間にアルゴリズムを使うHFT(ハイ・フリークエンシー・トレーディング)が個人投資家の注文を先回りしている可能性がある、と論ずるわけですが、そもそもHFTは元よりどの投資家においても、東証に「いつ、いくらで、どれだけ」の注文が回送されるかは、原理的に確定情報は知り得ないのです。

●PTSの注文は、SBI証券の顧客の注文であるかも含めて、誰の注文か分からない。
●PTSの注文が、SBI証券の個人投資家の注文であったとしても、当然、それがPTSで約定し、東証に全く回送されない場合がある。東証に回送される場合であっても、「成行」であるのか、「指値」であるのか、指値の場合に「いくら」であるのか、また、PTSで一部約定する場合もあるため「何株」であるのか、分からない。
●PTSの注文は、当然、全市場参加者が見られる情報であり、HFT業者も含めた多数の市場参加者が存在するため、ある一つのHFT業者が先回りしようとしても、個人投資家も含めた他の市場参加者がPTSの注文を取りに来る場合も容易に想定される。
●そもそもSBI証券の個人投資家は、発注毎に「SOR」、「東証」、「PTS」から選択することができるが、「SOR」ではなく「PTS」を選択して発注している場合は回送されない。こうした顧客の選択については、HFT業者も含めてどの投資家も板情報から判定することはできない。

こうした状況をよく調べずして記事を書くことは、革新的技術を使いながら更なる投資家利益を追求しようとしている我々にとっての理由なき誹謗中傷であり、我田引水的な論説と言わざるを得ないわけです。記者が余りにも不勉強で専門的知識を習得すること無く、唯唯特ダネ記事のような調子で全く魅力の無い記事を書いている、としか言えません。
また、我々が考えている売買手数料ゼロ化というのは既に米国で起こり出していることであって、それを具現化すべくHFTのリベートがどうといった類とは全く関係のない話です。本日出された「日本版フラッシュ・ボーイズ」の(下)ではリベートと関連付けられていますが、我々はそんなつもりは毛頭ありません。勝手な妄想でSBIグループを誹謗中傷する者とは、私は断固として戦います。
私は先ずブローカレッジのコミッションを全体の5%にし、それを前提として手数料を無料化にするという基本方針を立てています。そしてそれが5%以下になりますと手数料ゼロ化の影響はそれ程大きなものではなく、同時に之による御客様の増加で補って余りあることだと確信しています。
チャールズ・シュワブのCEOが言うように、時代の流れとして不可避的なものは先にやる者が基本的にはメリットを得、やらなければ負けるのです。我々はこれからも、顧客中心主義に基づいて徹底した合理化とテクノロジーの最大限の使用を心掛けます。之が、我々のスタンスであります。




 

『小泉進次郎環境相に思う』

2019年11月12日 17:30

第4次安倍第2次改造内閣の発足から、ふた月が経過しました。本改造人事の「目玉」として環境相就任を果たした小泉進次郎氏はと言うと、当初「気候変動や原発処理水をめぐる自らの発言が批判を浴び」、与党内でも「化けの皮がはがれ始めた」との指摘もあったようです。そして次第に発言に慎重になって行き、昨今「進次郎節」を封印していると報じられるようになっています。
2週間程前にも『「次期首相」トップは小泉氏の20% 日経世論調査』と題された記事がありましたが、今の段階で近い将来総理になるか否かといった議論は余り意味がないと思います。勿論、「栴檀(せんだん)は双葉(ふたば)より芳(かんば)し」という「白檀(びゃくだん)は発芽のころから香気を放つことから、大成する人は幼少のときからすぐれているというたとえ」もあります。
他方で、大器晩成という言葉もあります。安岡正篤先生曰く、「人は自然が晩成した大器だ。(中略)だから、自然の法則は人間においても同じく、人間は、早成する、早く物になるというほど危ないことはない。人間もなるべく晩成がよい」ということであります。「本当の大器量、大人物はそんなにちょこちょこっとできあがるものではない、ゆっくり時間がかかるもの」なのです。
先ず以て総理になるためには、それなりの勉強・修養をして行かねばなりません。総理は何もかもを分かっておく必要もないですが、やはり人望というものは極めて大事です。人望を持つとは、イコール修養するというプロセスが必要で、それはそう簡単に出来るものではありません。ある程度時間を掛けながら自分自身を磨く中で、どういうふうにその人が伸びて行くのかということです。
あるいは、一人で何もかも出来るわけでありませんから、総理になるべくは正に賢才を登用していくための目を養うことが極めて大事です。国家の発展を考える場合、トップが如何なる賢才を集め、彼らを信用(…信じて任せて用いること)し適材適所に配置して、その人達にどんどんと活躍して貰わねばなりません。
また賢才を挙げる時でも、才のみで人を評価せず、やはり徳のある者を評価して行くことが大切です。何故なら人徳ある賢才の下には沢山の優秀な行政官等が集まるわけで、大臣たるは少なくとも佐藤一斎の『重職心得箇条』にあるようなレベルで、その役目をきちっと吟味しなければなりません。
ジョン・F・ケネディやビル・クリントン、バラク・オバマ等々40代で米国大統領に就任したケースも多数ある一方で、十分に鍛えられることなくそれなりの人間が出来ておらず、大臣になって直ぐに駄目になるようでは仕方がないと思います。大器晩成の対句に小器夙成(しゅくせい…幼時から学業などができあがり、大人びること。早熟。早成)という言葉もありますが、未だ38歳・初入閣の小泉氏に今総理の器かどうかの結論を下すのは難しいのではないでしょうか。マスコミも余りに早く若い芽を摘むような報道は慎むべきだと思います。




 


Copyright © SBI Holdings, inc. All rights reserved.