北尾吉孝日記

『ソフトバンクのARM買収』

2016年7月28日 16:10

ソフトバンクが英国の会社を大切にしてくれることに(メイ氏は)非常に感謝していた――孫正義さんは今週月曜日に訪英され、テリーザ・メイ英首相との会談後、当該国の「歓迎」ぶりをこう話されたようです。
その一週間前「ソフトバンク、約3.3兆円で半導体設計大手の英ARMを買収」との報道に触れた時、私がぱっと思い出したのはキングストンテクノロジーを15億ドルで同社の80%買収した20年前の案件でした。
95年CFOとして私がソフトバンクに入社して以降、ジフデービスやコムデックス等々、孫さんが買いたいと言われた沢山のネット企業を次々に買収してきました。その一つが上記のパソコン用の半導体メモリモジュールの会社で、ジョン・トゥさんが経営されていたキングストンテクノロジーです。
「半導体には好不況が必ずあるのでは?」と言われていた当時、孫さんは「需要が落ちようが利益幅を維持しながら、今迄もずっと推移してきている」とか「DRAM価格が下がっても、Kingstonの利益は増加しており、寧ろ追い風となっている」とかと説明されていて、私もその意に沿う形でプレゼンテーションの資料を作った覚えがあります。
そして今回「世界のスマホの95%以上に内蔵される半導体」を設計する最大手、ARMの買収に際し孫さんは次の通りコメントされています――今回の投資の目的は「IoT(モノのインターネット)」がもたらす非常に重要なチャンスをつかむことにあり、ARMは、当社グループの戦略において重要な役割を果たしていくでしょう。加えて、今回の投資は、当社の英国に対する強いコミットメントと、ケンブリッジにおける豊かな科学技術の才能集団がもたらす競争上の優位性を特徴としています。
調査機関等に拠る各種見通しを示すまでもなく、確かにIoT(…Internet of Things)というのは大変大きなマーケットになって行くでしょう。但し孫さんが今回「ネット社会の圧倒的な根源を握る」べく、「たかが3兆円」で買収に乗り出したARMという会社が、今後も変わらず此の世界の覇者足り得るかと言えば、それは分からないことではないかと思っています。
これから後「ブレグジット(Brexit)…英国のEU離脱」が及ぼす悪影響として取り分け注視すべきは、EU諸国よりの人の流入の垣根が高くなって行くということ、あるいは難民に限らず他国から英国への移動自由が若干制限され行くことに繋がるのではないかということです。
冒頭挙げた「孫・メイ会談」で改めて孫さんは、「英国内に約1700人いるアームの従業員を今後5年で2倍以上に増やしたり、アーム本社を英ケンブリッジに置き続けたりする方針」を話されたと報じられています。
こうしたテクノロジーの分野にあって、英国人だけで大丈夫かと言えば、決してそういうものではないでしょう。例えば中国人が今、米国の高度科学技術の最先端領域でどれだけ活躍し出しているかと様々見るに、やはり優秀な人材が世界中から常に集まってくることがこうした領域では大事だと私は思っています。
科学技術の進歩や革新にとって、人材の多様性というものは非常に重要であります。何の世界でも画一的・均一的になってしまえば、そこに進歩というものは無くなるとすら思っています。インターネットやバイオテクノロジーでもそうですが、真に多様性が重んじられる環境下、様々な人間が集まってくることが一企業、延いては当業界の興隆に必要不可欠だと私は考えています。
嘗ても『日本の教育、欧米の教育』(14年4月2日)というブログで指摘した通り、例えばノーベル物理学賞であれノーベル化学賞であれ、その受賞者を見てみると、日本人であれ外国人であれ大学を卒業した後に渡米し、研究者としてそこで博士号を取得するとか、あるいは長期間現地に滞在し研究活動に従事する、といった人が多くを占めているという事実があります。
あの第二次世界大戦時にも、アルベルト・アインシュタインをはじめ世界トップクラスの科学者達がナチス・ドイツの迫害を逃れ、新天地を求めて米国へと脱出して行った類のケースがありました。
米国という国は、どこの国の出身であろうと、何人であろうと、優秀であれば自由な中で色々な事柄にチャレンジをさせ、そして起業するのであればそういう人の始めた会社に国や地方公共団体の助成金のみならず、エンジェルやベンチャーキャピタルも含めきちんとお金をつけて色々な形でサポートして行く、といった風土が備わっています。
あるいは米国内からでも、多様な人間の集まるシリコンバレー等を目指して行く起業家も非常に多くなっています。つまりは、そこに一つのイノベーションを齎すシステムが上手く創り上げているわけです。ブレグジットは英国に、そうした土壌の喪失を招くのではないかと危惧しています。
テクノロジーの「シンカ(深化・進化)」は、日進月歩の発展を遂げて行っています。今回ソフトバンク史上最大の「3兆円買収劇」より思い出したキングストンテクノロジーの件で更に言えば、ソフトバンクは当該企業の買収から3年後の99年、4.5億ドルでトゥさん等にその持分の全株式を売却しています。
そこからキングストンテクノロジーは勢力を盛り返し、その6年後の05年には「上海に当時世界最大規模のメモリモジュール工場」開設といった所に至ったりもしたわけです。しかし、嘗てのようにはパソコンを使わない時代となった今、結果論から言えば、あの時に株を売っておいて良かったのかもしれません。
何れにせよ、ブレグジットが故ARMを巡る状況は中長期的に大分変ってくるでしょうから、そういう意味でも先頭を切って走り続けるのは簡単なことではないでしょう。繰り返しになりますが英国という国はブレグジットにより、人材の自由な流れをある意味押さえ行く可能性を秘めた世界に入って行こうとしている、ということを忘れてはなりません。




 

常識品性もなかった舛添要一前東京都知事の後継選びが、先週木曜日より正式にスタートしました。今回「立候補者数 21」ということですが、「有力3候補」に絞って見れば現況「どの政党の推薦も受けていない元防衛相の小池百合子氏が幅広い支持を得て優位に戦いを進め、民進、共産、生活、社民の4党の推薦するジャーナリストの鳥越俊太郎氏が追い上げ、それをさらに自民、公明、こころの3党の推薦する元総務相の増田寛也氏が追う展開となってい」るようです。
現在2番手とされる鳥越氏に関して率直に申し上げれば、御年76歳とは都のトップとして激務を熟すに少し年寄り過ぎるのではないかと思います。今週月曜日、私は上山信一さんのツイート「鳥越氏の超高齢立候補は美談でなく究極の無責任 … @agora_japanより」や、池田信夫さんのツイート「【放送事故】都知事選 鳥越俊太郎さんの容態が急変!病院へ | ノンスタイル」をリツイートしましたが、多くの識者も指摘する通りやはり「体力面での不安は払拭できない」のではないかということです。
例えば17日に『主要3候補、早くも「運動量」で大きな差 鳥越氏は演説“1日1回”で体力不安も』という記事を見たかと思えば、その2日後遂には「鳥越氏、告示後初の街頭演説なし」とのことで、体力的にもちょっとしんどいのではないかと思います。BLOGOSで連日1位の「都知事選2016」タグを見てみても、「鳥越氏にドクターストップかける必要がある」等の見出しの記事があったりと、彼を巡る論評は総じて辛辣を極めているように思われます。
先の日曜日、秋葉原で行った街頭演説で小池氏は「この人なら勝てるといって政策も何もない人、病み上がりの人をただただ連れてくればいいというものではないんです」と発言され、後にあるテレビ番組で之を問題視した鳥越氏より指摘を受けたようです。此の「病み上がり」発言に対して、小池氏は『「もし言っていたならば、失礼なことを申し上げて…」とかわそうとした』云々と報じられています。私見を申し上げれば、鳥越氏の主張に共感を持てる部分もありますが、もう余り無理をされない方が良いのではないかと感じます。
冒頭ご紹介した候補3名の現況が齎されるは、言うまでもなく「17年ぶり保守分裂」がその主因の一つでありましょう。今回は自公推薦の増田氏でなしに、小池氏で決まりではないか、というのが小生の見立てです。先週月曜日までは、都議会民進党が出馬要請した衆議院議員の長島昭久さんが出られたら、と思っていましたが今回彼が「出馬しない」と判断されたので、小池氏に次の都政を託したいと思っています。
選挙は水物ですから、組織票の動向等々その行方を見通すは、最後の最後まで分からないのかもしれません。但し私自身は今、「一歩リード」「序盤先行」と言われる小池氏がこのまま勝ちそうな雰囲気が、何となく漂っているような気がしています。




 

『自民に代わる政党なし』

2016年7月12日 18:05

大方の予想通り、今回の参院選は「改憲勢力、参院の3分の2超 与党で改選過半数」という結果に終わりました。自民党は「1人区で21勝11敗と圧勝した」、比例「得票数は参院選としては01年以来、15年ぶりに2000万票を超え(中略)、与党で比例票の約半数」獲得となりました。
他方、「期日前投票者数は1598万人で過去最多を更新し」たものの最終的な投票率は54.70%と「過去4番目の低水準」ということで、政治無関心・選挙無関心といった状況が相も変わらず続いているようです。
自民党執行部としては今回、このような圧勝劇を初期の段階では想定していなかったのではないかと思われます。衆参同時選挙にも一度は踏み切ろうとしたものの、「今やっても20、30(議席が)減ることは覚悟しなければいけない」(安倍晋三首相)ため、自公での衆院3分の2割れのリスクを考慮して止めたのだろうと思います。
消費増税を再延期したということもあって、麻生太郎副総理等は「信を問わなければ筋が通らぬ」等と「先送りするなら同日選とセットだ」と最後まで言われていましたが、結果から見れば之だけ躍進できるなら「セット」にしたら良かった、ということでしょう(笑)
1年前の4月『統一地方選後の雑感』でも指摘した通り、「自民に代わる政党なし」「自民は下野する必要なし」という判断が未だ働いていると考えられる中、今回も投票率が上がってこなかったということだろうと思います。
民進党以下の野党勢力が余りに御粗末であるが故、「投票に行かなくても結果は分かっているし…」といった類の意識が働き、「自らの一票を必ず行使しなければ!」とした投票行動に結び付かないのが現況ではないかと思います。
現下の議会勢力バランスが齎されるは必ずしも自民党の圧倒的な実力ではなく、相対比較において仕方なしというふうに感じている多くの有権者による、消極的な評価に基づいた結果と言えましょう。
当ブログでも一貫して申し上げている通り、自民党と真っ向から対立できるような二大政党制の一翼となる次の新勢力を再編成するは、少なくとも岡田・枝野体制では到底無理だと確信しています。
民進党の岡田克也代表ご自身が今回得られた「手応え」とは裏腹に、「岡田執行部では伸びしろがない。次期代表選では全面刷新だ」といったも多々聞かれますし、私もそう思います。




 
  • 小
  • 中
  • 大



Copyright © SBI Holdings, inc. All rights reserved.