北尾吉孝日記

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欧州は長い時間を費やし、ユーロという形で通貨統合を成し遂げましたが、現在のユーロを相対的に強くしている要素は、生産要素や生産物が関税などを気にせず自由に欧州内を移動出来るという意味で経済規模が拡大されたことや通貨統合がなされたことによるものではないと考えています。つまり、広大なEC経済圏を「ヒト、モノ、カネ」が自由に動き回れる環境を構築したわけです。さらに新たにユーロのメンバーに加わった東欧諸国が安価な労働力と消費財マーケットを提供しており、それが欧州全体の生産性の上昇や国際競争力を高めることにつながったと考えています。

また東欧という地域は、これから経済発展していく上で、非常に大きな市場にもなっていくと思います。例えば、日本の自動車メーカーが人件費が比較的安いポーランドに工場を作り、生産拠点化することで東欧自身の中における雇用創出につながり、結局はそれが一つの消費マーケットに拡大していきます。従ってそのような意味において、東欧諸国がユーロのメンバーになり、今のところ非常に良い効果が起きていると思います。

かつて東西ドイツ統合時に再三議論されたことは、西ドイツと東ドイツの統合が必ずしも1+1=2にはならないという説であります。確かに歴史的事実として、統合直後の状況は1+1=1.3~1.5であったかもしれません。私はまだ東西ドイツに垣根がある時に、何度か東ベルリンを訪れた記憶がありますが、印象として残っているのは町全体が異臭を放っていたことであります。それは戦前から使用されていた下水道がそのまま使われ、社会的インフラが全く整備されていないことに起因していました。あるいはその当時、私は北イタリアから共産圏のユーゴスラビアに車で入国したこともありますが、高速道路からデコボコの土の道路になり、コンクリートの電信棒から木材の電信棒になるなど、光景が一変したことを鮮明に覚えています。そのような経験から、私は国家統合、経済統合には大変な困難が伴うだろうと思っておりましたが、しばらく時間が経過すると、1+1が2以上になるということが分かりました。

私の大学時代の恩師である気賀健三という経済政策の教授は「共産主義とは資本主義から資本主義に至る苦難の歴史である」と言っておられましたが、共産主義崩壊に至る歴史的な考察を行う中で、まさに至言であるとケンブリッジでの留学時代に感じておりました。その苦難の歴史を中国は修正社会主義という形で見事に克服し、今日の繁栄を勝ち取っていますが、私は結局、資本主義体制も社会主義体制も程度の差はありますが、混合経済体制になると考えています。

少し余談が長くなりましたが、将来ユーロは基軸通貨の一つとして位置づけられるようになると思います。また、しばらくアメリカ経済に比し欧州経済はインフレ懸念はありますが順調に進むと考えています。そして世界の中でのECの位置づけはより上がってくると思います。その中で例えば、英国のように独自のポンド経済圏を維持しているところがあれば、スイスも長い間ユーロ加盟に抵抗しているなど、ユーロ圏で埋没すること無くそれなりの地位を確立している国々もあり、それらが今後EC通貨圏のメンバーになるかどうか大変興味深く見ています。




 

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