北尾吉孝日記

『日本の金融政策』

2008年7月7日 17:10
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サブプライムローン問題に端を発した世界の経済問題は、当初想定していたよりも深刻な様相を呈してきています。最初はクレディット・クランチの問題、その後は個別金融機関のいわゆるキャピタル・クランチの問題と認識されるに至り、続いて世界経済に景気面でネガティブな影響を与えはじめてきました。現在はサブプライムローンではなく、プライムローンについても、リクイディティが非常に減少したり、大幅に評価額を下げるという状況になり、金融機関の業績についても更なる悪化の可能性が出てきています。世界の株式市場も暴落しています。世界の株式市場は、世界中にスタグフレーションの傾向が出始めていることを織り込んでいると言えます。当面は相場の好転は難しいでしょう。

日本の景気について言えば、昨今新聞紙上で述べられているように、企業景況や設備投資動向等について、すべてダウン・トレンドであります。他方、物価については、長い間日本経済を悩ませていたデフレからの脱却ができるような消費者物価の大幅上昇を示しています。このようなスタグフレーション的な状況が続くと深刻な社会的格差を生むようになってくるでしょう。すなわち金利が相変わらず上がらず、超低金利政策の下で円高が進行しない状況になることで、オイルや食料等の輸入物価が大幅上昇し、いわゆる生活必需品が高騰し、格差の問題が余計に深刻になるということであります。

日本の個人金融資産の50%以上が預貯金であり、超低金利政策によりその利子部分がほとんどないので、年金生活者はもちろんのこと、一般の人たちの消費意欲が非常にそがれてきたと思います。その上、物価高で消費意欲がそがれると、結局日本経済全体の景気を悪くしていきます。設備投資や消費が減少傾向にある中で、外需についても新興国を中心に急速に縮小する可能性が出てきており、当面日本経済についても良い要素は無いと考えています。

それから日本の不動産業界に関しては、金融機関による貸し渋りどころか貸しはがしが問題となっており、先日の近藤産業株式会社や社債不履行になった株式会社スルガコーポレーションのような形で、このセクターに次々と倒産が起こっています。今後もまだまだ倒産が起こるだろうと考えていますが、そのような状況が日本経済全体の足を引っ張ることとなり、悪循環に陥るのではないかと非常に危惧しています。

上述のような状況において、私としては、まず10数年に渡り超低金利を継続しているという異常な低金利政策をやめ、一刻も早く金利水準を適正にすべきであると考えます。現在の為替水準は実効レートで見ると、プラザ合意の頃と同程度であります。かつてはそれがアメリカを中心として貿易摩擦を起こし、非常に大きな問題になりました。プラザ合意後は大幅な円高となりましたが、日本経済にとっては中長期的には良かったと思っています。現在、実効レートではその時と同程度の為替水準にあるということは、円高を日本経済自体が必要としているということであり、そのためには金利を上げ、日米の金利差を2~3%以内にすべきだと思います。そうすることで、結果として消費需要を刺激することになり、今のジレンマを断ち切ることになるであろうと考えます。また、円高になれば、オイルやその他輸入品の値段が上がっても、日本の物価水準は低位安定していくことになると思います。

そもそも適正な円高は、国民の経済的レベルを上げることでありますから、大いに歓迎されるべきことです。有利子負債の大きい企業や輸出関連企業だけをサポートするような超低金利と円安をいたずらに長引かせることは、日本のポスト・インダストリアル・ソサエティ(脱工業化社会)に向けた、新しい産業構造への転換を遅らせるだけであります。従って、少し痛みが出るかもしれませんが、思い切って金利水準を適正化し、実効レートで見るとプラザ合意の時と同程度の円安水準を円高にし、物価水準を下げるべきです。そして、円高になることを期待し、かつ日本経済のファンダメンタルズが将来良くなると期待する諸外国の投資を受け入れていくことが、日本経済が今後進むべき道として非常に大事なことではないかと考えています。




 

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