北尾吉孝日記

『世界の富裕層のお金』

2008年8月5日 11:47
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シンガポール金融通貨庁によると、2007年末時点の同国の資産運用残高は前年比32%増の1兆1730億シンガポールドル(約93兆円)であり、7年連続で2ケタの増加を達成したということです。この背景には、米国景気が減速する中、世界の富裕層の資産が効率運用を求め、シンガポールに流入したことがあるようです(※1)。

日本の富裕層のお金が離れてシンガポールに行くことはあっても、その逆については、日本の現状を考慮するとあり得ないと思います。外国からお金が流入する国とそうでない国との大きな違いは何かと言えば、それは基本的には税制にあると考えています。例えば、スイスの税制に関して色々と調べてみますと、世界中の資金がスイスに入ってくる理由がよくわかります。例えば贈与税や相続税ですが、日本とは根本的に異なり、国税としての課税はありません。また、課税額に関してカウンティー(州政府)と交渉の余地があり、交渉の結果「ある一定の税金を払えば、スイスでいくら利益を上げてもそれ以上の課税はない」というような条件にすることが出来るのです。ですから、世界中からお金が集まるようになっているわけです。

それに対して日本はと言えば、国家財政が大赤字だと言えば、さらに税を重くする施策ばかり考えています。『礼記』の中に「苛政は虎よりも猛し」という言葉がありますが、行政における様々な非効率を改善せず、増税ばかり考えているようでは、日本からお金が流出して行くのは当然のことです。

それに加え、外からお金を入れようと思えば、インターナショナルな都市でなくてはなりません。以前から申し上げている通り、例えば各国GDP比の対内直接投資残高を見ると、日本が2.5%であるのに対し、英国では47.8%、アメリカは13.5%と、日本の国際化が全く進展していないことが明らかであります。あるいは日本在住の外国人の内、永久永住権を持っている外国人の割合は、1000人あたり0.6人であり、そのような面から見ても、非常にお粗末な国際化の状況がうかがえます。従って、インターナショナルでない日本にはお金が流入せず、人々や会社も入って来ないのであります。

さらに言えば、日本は観光業を除き、外国人を集める努力を全然していないと思っています。世界の富裕層をどう取り込むのかということは、即ち金融分野でどう魅力的な環境を作るのかということであり、税制を中心とした様々な制度設計によって、どう世界の富裕層に対して訴えていくのかと言うことであると考えています。中国人やインド人など様々な人種が混在し、国民の大多数が英語で会話できる国際的都市シンガポールは、いよいよ金融立国としての発展を目指そうとしています。そのような国と日本を比べて見ますと、インターナショナル・シティとしての役割を日本に期待することは、現状では到底不可能であると言わざるを得ません。

アジアにおける日本のプレゼンスに関して、私が最も憂慮していることは、このシンガポールや香港だけではなく、いつの日か中国が政治体制として安全な国であると認識された時に、お金が大量に中国へ入って行く可能性があることです。特に上海は、国際的な金融の中心地になると思っています。現在の中国は未だ共産国家であり、私有財産制度もある意味で認められていないことが、最大のボトルネックとなっています。これが変わる時、つまりあの広大な国で、様々な制度が非常に柔軟に運用され、世界に通用する法体系の中で外国人の資産が守られ効率的な運用が出来ることが確実になれば、アジアの構図は全く変わってしまうと思います。このようにして世界の富裕層のお金は動いていくのです。

参考
※1:http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20080731AT2M2801C30072008.html




 

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