北尾吉孝日記

『代案なき規制強化』

2008年8月8日 9:34
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厚生労働省は、「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」の報告書を7月末に受け、労使代表による労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)において、労働者派遣法改正に向けた議論を再開しました。9月を目処にまとめられる結論には、その報告書にて挙げられた「日雇い派遣の原則禁止」などが盛り込まれるだろうと思います。

私は、日雇いで生計を立てている人々の雇用がどうなるのかについて、大変憂慮しています。また、日雇労働者を雇っている企業があるからこそ、成り立つ商売も多数あります。現在進んでいる労働政策の規制強化に向けた動きは、過去に実施された代案なき行政政策の失敗に基づく教訓が何も活かされていないと思います。

例えば、介護問題について言えば、株式会社コムスン(以下、コムスン)が行った不正は、確かに許し難いことです。法律に違反した企業は、当然罰しなければなりません。しかし同時に、コムスンが潰れて最も困るのは、そのサービスを利用していた人々であり、その代わりとなる十分な手当てが必要であります。

現在、日本の看護・介護分野で働きたい若いフィリピン人が沢山いるにも関わらず、日本政府は移民を制限しています。そのビザのコントロールを緩和すれば、フィリピンからの若い労働力を日本で活用することが出来ます。ところが現在は60歳超えたような日本人が中心となって、あれだけエネルギーのかかる介護を行っている状況です。行政はそのような現状を直視し、責任ある政策を実行しなければなりませんが、いつも代案をきちんと出さずして、「これはいかん、あれはいかん」と規制強化することだけを考えています。

また、長らく商慣習として許していたグレーゾーン金利(利息制限法と出資法の間の金利)についても同じことが言えます。現実に消費者金融のお金を借りて、延命している人もいる中で、消費者金融業者の経営が立ち行かなくなれば、そのサービスを利用していた人々が闇金業者(違法高利業者)を頼ることになってしまう可能性があります。そして、ある日突然出た最高裁判所の判決により、その利息や借入金を返還する必要がないとなれば、闇金業者も貸さなくなり、誰も貸さないような経済システムが出来てしまいます。物価が大幅に上昇している中、このような人々の面倒をどう見ていくのか。日本の行政には、いつでも代案がありません。それはすべてコスト負担の問題であり、税金の問題に繋がっていきますので、行政は責任ある姿勢を持とうとしません。

事程左様に日本の社会システムは、「鉄を作るために鉄鉱石はあるがコークスは無い」というような、昔の共産圏のようであります。自由主義、資本主義の世界の中では、生産活動において一つの均衡が保たれ、鉄鉱石の量に応じた石炭が利用できるようになります。この「神の見えざる手(インビジブル・ハンド)」によって、その整合性が取られ、均衡状況が作られていくのですが、共産主義の世界では、人間がみな決めていきますので、均衡状況を作ることが出来ません。それが無駄を生み出し、品不足を発生させ、共産圏の経済システムを破綻させていくことになります。

そのような意味において、代案なき規制強化にひた走る日本の行政には、ある種の危険性が潜んでいると思います。これまでのように、日本が行政の抜本的変革を先送りにする限り、21世紀に経済的繁栄を実現することは非常に難しいと考えています。




 

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