北尾吉孝日記

『多極化する世界』

2009年7月15日 13:40
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先週イタリアのラクイラで開かれた主要国首脳会議(サミット)では世界経済危機や地球温暖化問題等について議論されましたが、結局そこで浮き彫りとなったことは、もはやG8だけではグローバルな政策決定を行うことが非常に難しい状況にあると言うことです。

1975年にフランスで初めて開かれたサミットはG6(日本、米国、英国、フランス、西ドイツ、イタリア)でスタートし、その後カナダとロシアが参加してG8にまで拡大して来ましたが、現在はグローバルな政策を決める場として機能不全に陥りつつあります。例えば今回の温暖化ガス排出量を巡る交渉について言えば、世界全体の排出量の80%を占めるMEF(主要経済国フォーラム)の17カ国が協調しなければ、グローバルで見る限りにおいて大きな改善が期待し難いと言う現実を前に、G8諸国は「2050年までに先進国で80%以上削減する」と言う長期目標に合意して中国やインド等の新興国に対し相当譲歩したつもりでしたが、結局は「2050年までに世界全体で50%削減する」と言う長期目標でさえ設定することが出来ませんでした。このような地球温暖化問題に対するG8の実態は一例に過ぎず、今やあらゆることがG8と言う国際的な枠組みでは決められなくなって来ており、その存在意義が問われている状況にあります。

これまで続いてきた米国を中心とした先進国が主導する世界は今後おそらく多極化した世界に変わって行くと考えられますが、ある意味でその直接的な契機が今回の世界経済危機なのであろうと思っています。既にドルの信認は大きく揺らぎ始めており、中国やロシア、ブラジルと言った国々がドル基軸通貨体制に批判的な意見を述べ、自らSDR建ての債券を購入することを表明しています。今後サウジアラビアがドルペッグをやめればドル基軸通貨体制は一挙に崩壊します。アメリカはオバマ大統領を始め、ガイトナー財務長官までサウジを引き止めるべくリヤド詣でをやっています。
以前ブログで申し上げた通り(『オバマ政権の二つの課題』)、米国の財政赤字は今後数年以上に亘り巨額のまま高止まりしていくと試算されていますので(2010年~2019年の財政赤字総額は9兆ドルを超える見通し)、その中でこのようなドル離れの動きが加速度的に進んで行く可能性があると思っています。従って、2003年~2004年に日本が行った約40兆円の膨大なドル買い介入の様な何が何でも米国を支えると言う動きは、これからの多極化した世界においては無くなって来るであろうと考えています。




 

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