北尾吉孝日記

この記事をシェアする

以前のブログで書いた通り(『資本主義の将来』)、今回の世界的な金融危機を齎した一因は世界経済全体がグローバル化しているにも関わらず、世界全体を統制するようなセントラルバンクが存在しないことにあります。EU(欧州連合)も同じようなものでEUを統制する一つのセントラルバンク、ECB(欧州中央銀行)を設立してみたところで、結局それがEU全体をそのような意味で調節することが非常に難しい状況になっています。なぜなら旧東欧と西欧では経済の発展段階が全然違いますので、そのような中で旧東欧諸国の経済のファンダメンタルズは非常に弱く、今回の金融危機のような状況になると常にその通貨が危機的状況に陥ってしまうからです。従ってハンガリーやラトビアのようにIMF(国際通貨基金)からの支援を受けたり、あるいはEU当局からの支援を受けたりしながら、何とか生き延びているのが現在の東欧の経済であります。

このように特に後から加盟した旧東欧諸国がその脆弱性を顕著に露呈している中で、ECBが加盟各国を上手く調和させ、発展させていくことが如何に難しいのかが分かります。このような状況下でトリシェECB総裁がこれまで実施して来た金融経済政策は、その中身もスピードも適切であったと私は評価しています。例えば、2007年8月の「パリバショック」後に大量の資金の金融市場への投入を最初に実施したのは米国ではなく欧州です。そのような意味で彼は非常に迅速な処置を採って来たと言えると思いますし、また彼のこれまでの発言を考えてみますと、そのほとんどが結果として正しかったと思われます。その彼は昨日のECB定例理事会後の記者会見で、ユーロ圏の失業率について「今後数ヶ月間でさらに悪化しそう」と述べていました。

各国の経済情勢を見てみますと、米国の住宅市場は販売、在庫、価格のどれもが好転し始め住宅市場が底入れしたかと思われる一方で、失業率に関するデータは上昇傾向にあります(6月の失業率-日本:5.4%、米国:9.5%、ユーロ圏:9.4%)。企業業績についてみても、今期は米国でも日本でも随分回復して来ていますが、それは人件費負担の大幅な削減が非常に大きく寄与していると思われます。特に製造業におけるクビ切りが顕著で、米国では勿論ドラスティックに行われて来ましたし、日本でもアルバイトや派遣、契約社員などいわゆる非正規雇用の労働者に対してかなり行われて来ました。従って、少し輸出量が増加したり内需が拡大したりすれば、直ぐに企業業績が回復して来ると言う効果を齎しました。その中で失業率は悪化の一途を辿って来ましたが、その回復は恐らく一番後になると私は考えています。他の経済指標に改善の兆しが見え始めて来た時でも、失業率に関するデータは更に悪化して行くと考えられます。なぜならかなりの持続性のある有効需要が発生しない限り、各国とも企業側は雇用の増加には消極的でしょう。従って、各国の雇用環境についてもまだまだ厳しい状況が続くと思っています。




 

(任意/公開)
(任意/非公開)



Copyright © SBI Holdings, inc. All rights reserved.