北尾吉孝日記

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バーナンキFRB議長の4年の任期が、来年1月末に切れます(※1)。バーナンキは学者であった時に、1929年のThe Great Crashについて研究していましたが、あの時もしも大幅な金利引き下げが行われていたらThe Great Crashは起こらなかったという趣旨の論文を書いています。そのような形で学者時代の彼は、どちらかと言えば「金利一点張り」の言論を展開して来ました。そこで今回の世界金融危機に対処するに当たって、当初は金融政策を中心とした彼が最も得意とする施策を打ち出し、政策金利を急速にゼロに近づけて行きました。しかしながら、その後の彼は金融政策だけでは不充分であると理解し、公共投資の必要性を認識してある意味宗派替えをすることとなりました。

今までの経済学の世界を順番に見てみると、アルフレッド・マーシャル、アーサー・ピグー以来の古典派経済学から始まって、ケインズ経済学が現れ、少し横道にそれた形でヨーゼフ・シュムペーターが「イノベーション」と言う概念を経済学の中心に据えました。そして、サミュエルソンにより「新古典派総合」が提唱され、次にマネタリストのシカゴ学派ミルトン・フリードマンが出て来て、それと並ぶ形でロバート・ルーカスの「合理的期待形成論」と呼ばれるものが現れて来ました。政治家で言えば、そのようなマネタリズムや合理的期待形成論を理論的支柱としたのが、例えば英国のサッチャーであり、米国のレーガンであったわけで、彼らにより資本主義自体は市場原理主義的資本主義と称されるようなものに変質をして行きました。

そしてそれが発達して今回の世界金融危機に至り、今どうなっているかと言えば、やはりケインジアン的な有効需要施策も有効で、これ無くして難局は切り抜けられないと言う認識が主流となり、その中で積極的な財政投融資が行われて来ました。先ほど述べた通りバーナンキはある意味宗派替えをしましたが、その判断には日本の経験が役立ったのではないかと思われます。結果として、日本でおよそ10年掛けて実施して来たことを、彼は宗派を替えて迅速に断行し、数ヶ月でやってのけました。そういう意味ではある面で私は彼を評価しています。

尤も前FRB議長のグリーンスパンも在任中は神様の如く言われていましたが、そこから今回の世界金融危機が起こり、彼が諸悪の根源であるかのように批判され始めたことを考えますと、バーナンキに対する評価についても、もう少し歴史を経てみないと分からないことだと思っています。

参考
※1:バーナンキFRB議長再任、オバマ大統領は決断急がず




 

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