北尾吉孝日記

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第二次世界大戦後の国際通貨体制について考えてみますと、やはり1944年に開催されたブレトンウッズでの会議が歴史的に重要な意味を持っていたと思われます。その会議において英国の国益を代表したのがかの有名な経済学者ジョン・メイナード・ケインズで、片や米国の国益を代表したのがハリー・ホワイトでした。この両者は夫々の国益を実現すべく議論を展開するわけですが、その中でケインズはもはやスターリング・ポンドが世界の基軸通貨であることは不可能であると言う認識の下で、次善の策としてどうすべきかと言う対応に終始し交渉を進めました。彼はその次善の策として、二度の世界大戦により財政が破綻する中で失った基軸通貨の発行権と言う最高の国益を米国に単に渡してしまうのではなく、「バンコール」と言う人工的な世界通貨を創出する「世界中央銀行」を創設して、そこで英国が指導的な役割を果たすことを考えていました。「世界中央銀行」と「バンコール」の提唱は、ある意味将来をも予測したものであったと私は考えています。このような将来を見据えつつ英国の国益を最大限実現して行こうとする彼の構想は、ホワイトの強行路線により潰え、結局は米国のドルが世界の基軸通貨となりました。

このブログで何度も指摘している通り、今回の世界経済危機を経て米国政府は莫大な財政投融資を行い、ある意味財政は破綻状態になっています。その中でドルの信認は確実に揺らぎ始めており、それが米国債の長期金利の上昇に繋がって来ています。そして、今や国際通貨体制に多大な影響を与えているBRICs諸国は米国一辺倒から明確に決別して、例えばSDRに金の一部を移し始めたり、あるいは中国やロシアは自国通貨による貿易決済を推進し始めたりと様々な形でドル脱却の方向で動き出しています。また米国は経済力だけではなく政治力や軍事力についてもかつての勢いを失っています。例えば、イラクやアフガンでの軍事的な制圧に関する失敗や、あるいはそもそも核自体が世界中に拡散して戦争抑止力が高められている世界において、政治面・軍事面での相対的なリーダーシップの低下が見られます。従って、政治面・軍事面・経済面で衰弱した米国の今後の地位の如何は、如何に新しい産業を切り開き、技術を開発し、そしてその部分でリーダーシップを発揮して行くのかと言う事に懸かっていると思われます。

かつて英国は7つの海を支配し、「英国の領土に日没することなし」と言われた時代がありましたが、植民地を失い、経済力を失って行き、そして二度の大戦で国富の多くを失い、軍事力も急速に衰えて行きました。その結果として多額な借金を米国に依存することでポンド基軸通貨体制を維持できなくなりましたが、米国のドル基軸通貨体制も金とドルとの兌換を停止したニクソンショック(1971年)の時にある意味終わっていたと見ることも出来ると私は考えています。これまでは米国の軍事力や民間の技術開発力を含んだ総合的な経済力等によりドル基軸通貨体制が維持されて来ましたが、今回の世界経済危機を経てその状況に大きな変化が齎されましたので、やはり米国経済の本格的な回復がなければドルの信認は急速に低下して行かざるを得ないと思っています。その中で今米国は最終的なドル基準通貨体制の終焉のとどめとなり得るサウジアラビアのドルペッグ離脱を最も恐れており、オバマ大統領を始め、ガイトナー財務長官等が何度もサウジアラビアを訪問していると言う状況です。勿論ポンドからドルへの移行がそうであったように、ドル基軸通貨体制が実質的な終わりを迎えるには多少時間が掛かるとは思います。ただその方向性は揺るがず、今後も徐々にではありますが進行し、新たな国際通貨体制へと移行していくことになると私は考えています。




 

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