北尾吉孝日記

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Sequoia Capitalが示すような「スタートアップの成功条件」についてはSequoia Capitalだけではなく昔から様々な人が述べていることですが、最終的に企業の盛衰を左右する要因はやはり経営者の能力、運、熱意、そして倫理的価値観であると私は思っています。それらの要因を総合して人間力というならば、その人間力によって一つの会社が成長するのかしないのか、またどの程度成長するのかが全て決まるといっても過言ではないと考えています。
やはり良い心掛けの人の周りには良い人が集まって来ますし、悪い心掛けの人の周りには悪い人が集まって来ます。私が好きな論語の言葉に「徳は孤ならず必ず隣あり」とありますが、徳性の高い人の周りには必ず同じ様に徳性の高い人が集まって来るということです。清朝最後の皇帝である愛新覚羅溥儀の弟溥傑がこの論語の言葉を書いた書がありますが、私はそれを偶然にも手に入れることが出来て今額装させています。流水の如き独特の流麗な書体です。溥傑という人は日本の嵯峨侯爵家のお嬢さんと結婚して最後は不遇な生涯を送ることになりますが、最終的にはそれなりに幸せな生き方をしたのかもしれないと私は思っています。
書について更に言えば、例えば私の好きな言葉に「寧静致遠」という諸葛孔明の言葉がありますが、中国の書道家協会の名誉会長をやられていた啓功さんによって書かれたこの言葉の書も手に入れることが出来ました。自分の好きな言葉がそれなりの人によって書に表せられますと、その言葉が一層の訴求力を持って迫って来る感じがします。従って、私は自宅にも会社にもそれなりの人が書いた好きな言葉の書を沢山飾っていますが、折につけそれらをふっと見ながら、ある意味自分自身を反省する材料としています。

話が少し横道に逸れてしまいましたが、結局会社を成長させるためには経営者が自分自身を練って行くしかないと私は思っています。そして自分自身の人間力を増して行けば、会社の器も大きくなるのではないかと考えています。Sequoia Capitalがビジネススクールの教科書に出て来るような成功の条件を色々と示した所で、その通りに実施しても成功する経営者は殆どいないであろうと思われます。小学校を卒業しただけで世界的な事業を興した松下幸之助さんや本田宗一郎さんは、恐らくそのような成功の条件を気にもしたことが無いと思っています。このような人々は「人間として如何にあるべきか」や「人間として如何に生きるべきか」というような答え無き質問に対する答えを考え抜き、知能ではなく知性を磨かれていたのではないかと思われます。また事業についても「どうすれば人は一生懸命働いてくれるのか」や「従業員と社長の関係はどうあるべきか」というようなことを考えることで知性を磨き、それによって色々な判断力や直感力を身に付け、結果としてあのように会社を大きくして行くための正しい選択が出来たのではないかと思っています。
Sequoia Capitalという会社は一世を風靡したベンチャーキャピタルではありますが、そこに所属する多くの人とお会いして話をした印象は、それほど大したものではありませんでした。SBIインベストメント株式会社は654社に投資を実行して106社を公開していますが(2009年6月末時点)、この数字はベンチャーキャピタルとしては非常に高い確率で成功していると言えると思います。これはSequoia Capitalが示すような判断材料によって成されたわけではなく、人物を見極めてきた結果として成されて来たものであると私は認識しています。




 

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