北尾吉孝日記

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2009年4-6月期のロシア経済のGDPは、前年同期比でマイナス10.9%と大幅な落ち込みとなりました(※1)。BRICsの他の国とは対照的に不振が続いている要因の一つとして、余りにもロシアのイメージが旧ソ連時代のイメージと結び付いていることが挙げられると思っています。

近年ロシアという国はメドベージェフ大統領とプーチン首相の「二頭体制」において実質的にはプーチン首相主導の支配体制を続け、その中でプーチン首相が強権を発動し世界の常識から外れた様々な政策を実施して来ました。例えば自動車について言えば、日本製の自動車をあれ程輸入していたにも拘らず、今年の一月から輸入関税を大幅に引き上げました。ロシア人にしてみれば、性能の悪いロシア製の自動車など買いたくはありませんので売れないのは一緒なのですが、それにも拘らず強権を発動しました。あるいはその前に起こったエネルギーの問題においても、サハリンエナジー社(三井物産と三菱商事とロイヤルダッチシェルの共同出資会社)の株式を強引にロシアのガスプロム社に譲渡させるということを強行しました。このようなことは対日本だけではなく世界中で起こったことであり、結局欧米諸国から「結局ロシアっていう国は…」と敬遠されて資金が一気に引き上げられ、ロシア経済は大きなダメージを受けることになりました。

ロシアという国は天然ガスや石油等のエネルギーに依存する国ですので、エネルギー価格がリカバリーして来れば、ロシア経済も比較的早くリカバリーすると基本的には思っていますが、ロシア国内の政治状況によってはその通りにはならない可能性もあると私は思っています。例えば、2008年まで2期8年を務めたプーチン元大統領(現首相)が2012年の大統領選挙に立候補する可能性があるという話や、あるいは民主化されたはずのロシアという国で再び軍事大国を印象付けるようなパレードを復活させたということ等はやはり欧米に敬遠される一つの理由になると思うからです。新興国の場合、全てのことが民主化されて行っているということが非常に大事で、そうでなければ欧米から十分な資金が入って来ることはないでしょう。あるいは規制に関して言えば、世界中から資金を集めるためには、やはり市場の透明性を高める(Transparent)と共に、資金や人や物の出入りを制限しない(Free)という部分が必要になると思っています。従って、ロシア経済のポテンシャルが非常に大きいことは間違いないことではありますが、同時にロシア経済を見る場合、これまで述べたような様々なリスク要因も十分考慮しなければならないと私は常に思っています。

先週の日曜日に出発して一昨日の朝に帰国するという非常にタイトなスケジュールで、モスクワに出張して来ました。主な仕事としては、一つは私どものパートナーであるメトロポール傘下の銀行に出資するかどうかについての案件で(最終決定が為されれば発表します)、もう一つはガスプロム社の説明会と見学会に参加することでした。ガスプロム社は流石にロシア最大の国策企業だけあって警戒態勢が非常に厳重で、二重三重のチェック体制の中でようやく辿り着くという感じでありました。そこでガスプロム社のCFOやその他の幹部職員から様々な説明を受け、やはりロシアにおけるエネルギー、とりわけ石油と天然ガスの重要性を改めて認識することとなりました。また天然ガスの生産及び配送を全てコントロールしている制御室も見せてもらい説明も聞きましたが、如何に欧州の様々な国に天然ガスが供給されているのかを実感することが出来ました。以前ウクライナへの天然ガスの供給を巡って大きな国際問題となり、結果としてロシアは一時的に天然ガスの供給をストップしましたが、供給される側にとって死活問題となり得るエネルギー資源を握っているロシアという国は、時としてそれを政治的に利用するということです。今回モスクワに出張して、やはりロシアにとってエネルギーが国家戦略上も非常に重要なものであるということを再認識することが出来ました。また、今回のロシア出張にはSBI証券の井土社長も同行しました。その理由は、現在提携先のメトロポール傘下の証券会社と連携してロシア株を SBI証券のサイトを通じて売買できるようにするプロジェクトを推進していることや、ガスプロム社の今後の日本市場での社債発行を中心とした資金調達についての可能性を探るということでした。

参考
※1:http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090912AT2M1201J12092009.html




 

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