北尾吉孝日記

『元はどうなるか』

2009年11月30日 17:20
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元がどうなるかについては以前このブログで書いた通り(『中国の外貨準備と元の国際化』)、近い将来元高にならざるを得ないと私は考えています。これについて中国では現在意見が二分した状況になっており、例えば中国商務省等の貿易関連の人達が元安状況の維持を主張する一方、中国人民銀行等の金融関連の人は逆に元をある程度強くすべきと主張しています。これまでの中国は「元を安く押さえることが国民的利益である」という考え方で統一されており、このような対立状況はありませんでした。しかし、このような状況になってきたということは、中国も蓄積された外貨の使い道や将来の国益を真剣に考えていくというステージに突入したということでしょう。

また現在の中国は元の強さを使って、海外のアセットを買って行くというステージに入っています。これまでは元を強くすれば中国の外貨準備高の6割以上を占めるドルが相対的に弱くなりますので、中国人民銀行等は様々な観点からドルの価値の減価を心配してきました。しかしそれよりも今は「むしろ海外の安くなったアセットを買いに行く方が得策ではないのか」との考えから、一つの国家戦略における長期的な国益を考慮する中で、最初は資源会社、あるいは様々な資源そのものや食料を押さえていくことからお金を使い始めてきています。そしてここに来て世界の金融を支配していくという動きすら出てきています。

バーゼル委員会の銀行自己資本比率に関する規制が今後非常に厳格になって行く中で、その新規制に対応でき、大きな世界的なプロジェクトファイナンスに対応できる銀行は世界でも5、6行程度しか無くなってくると思われます。そのような流れの中で今中国の銀行が非常に大きな力を持ち始めています。中国は強い元を持つことにより、世界の金融マーケットにおける色々な業務を様々な形で有利に展開することを考え始めています。これまでの中国は物を輸出して外貨を稼いできましたが、これからはお金の価値を高めてお金に働いてもらい、お金がお金を儲けるという形にしていくということです。そして今は出来る限り安く金融資産を買ったり、金融機関の株式を持ったりしながら、グローバルな金融事業の展開についても真剣に考え始めているのです。

考えてみますと常に金融経済は実体経済を上回るボリュームに膨らんで行くわけですが、その金融の世界で利益を上げていくことを中国が考え始めていることは戦略上極めて正しい事と私は思っています。またこのような動きは「上海国際金融センター化構想」とも密接不可分なことで(『中国の国際金融センター化構想とSBIグループの事業戦略』)、一国の通貨が弱い状況の中ではその構想は実現され得ないことを考えますと、やはり元高にならざるを得ないと思われます。従って、元安の状況を維持し続けることが中国の国益にならないかもしれないということについて、中国は既に気付いていると私は考えています。




 

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