北尾吉孝日記

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一昨日、ウォール・ストリート・ジャーナル・ジャパン株式会社が「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版(以下、WSJ日本版)」を正式にオープンしました(※1)。

WSJ日本版の開設は、まさに革命的意義を持つメディアの誕生と言えます。その革命的意義の詳細については私のスピーチをご覧頂ければと思いますが(※2)、このブログではWSJ日本版の持つ幾つかの革命的要素のうち「日本初の本格的有料オンラインメディア」になって行くということを述べたいと思います。

米国内の状況と同様に日本国内の新聞発行部数は減少の一途を辿っており、その中で各新聞社はウェブでの配信に乗り出していますが、有料電子版サービスについては日経新聞の2010年開始予定ということだけが現在公表されており、その他の国内有力各紙は開始するかどうか分からない状況であります。その一方で「Financial Times」に先駆けること6年、1996年に有料電子版化された「The Wall Street Journal(以下、WSJ)」 は、数少ない有料オンラインメディア(年間購読料:103ドル)の成功例であり、購読者数は100万を超え、月間平均PV数が2億2000万PVという状況であります(2009年3月現在)。また2002年に開始されたWSJ中国版について言えば、その会員数は既に70万人を超えています。『徒然草』に「先達はあらまほしき事なり」とありますが、そのような大変貴重な経験を持つ先達、Dow Jones & Companyをパートナーとして、私どもは最も早くその世界に入ることが出来るということです。

Dow Jones & Companyをパートナーとしたことの利点について更に言えば、「良質なグローバルコンテンツと速報性」ということが挙げられると思います。ご承知のように1889年創刊された発行部数全米No.1のWSJは120年の歴史を持ち、総勢約2000名の記者と編集者、そして全世界86都市122箇所の編集支局を持っています。またピューリッツァー賞を33回も受賞していますが、それに関しては下記の通りWSJと日経新聞の「Google社の2009年4-6月期の決算に関する記事」を比べてもらえれば、分析力の歴然たる差をお分かり頂けると思います。
7月17日にWSJでは「Google Growth Slows Again; Sales Rise 2.9%(Googleの成長がまた鈍化:売上は2.9%上昇)」という見出しで掲載された記事ですが、同じタイミングで掲載された日経新聞の記事では「米グーグル、純利益19%増 4~6月期過去最高、リストラ奏功」となっています。これらの記事をもう少し読みますと、日経新聞が主にGoogle社の「最高益」という業績に焦点を当てる一方、WSJでは成長の鈍化という業界トレンドに焦点を当て、洞察を含めた記事を配信していることが分かるかと思います。そしてWSJの記事は、決算の数値に触れるにとどまらず、企業の直近の動向や注力している分野、更には業界の動向など、様々な視点を含めた分析を行っていることも分かるでしょう。
実際に売るか買うかを判断する投資家がこれらの記事を見た時にどう感じると思いますか?日経新聞に書いてあることも正しいことは間違いありませんが、投資家に本当に役立つ情報が提供されている記事がWSJであることは一目瞭然かと思います。このGoogle社の決算に関する記事は一つの例であって、WSJと日本の有力各紙の差は残念ながら万事がこのようになっているということを私のブログをお読みの皆様には是非分かって頂きたいと思っています。

更にWSJ日本版は速報性にも大変優れており、時差の関係上、ニュージーランドに次ぎ世界で2番目の早さで最新情報を日本語にて閲覧することが可能であります。このことは未だに時代遅れの体制を敷く日本の新聞では考えられないことです。勿論正確な情報でなくてはなりませんが、間違い無く情報は早い方が良いに決まっていますので、我々は幸いな事に時差というものを大きな武器に出来るということです。これは例えば機関投資家にとって物凄く有り難いことだと思われます。

このようにWSJ日本版は様々な優位性を持っていますので、私は革命的なメディアになり得るポテンシャルを持っていると確信しています。ただ面白いことに「WSJ日本版サイトオープンイベント」には200名程度のメディア関係者が出席されていましたが、国内有力各紙はこぞって報道しませんでした。WSJ日本版が売れれば自分たちが売れなくなる可能性があるということで、それだけライバルとして意識していると思われますが、そのようなことをすれば益々売れなくなるということが分かっていないのではないかと感じています。メディアの最大の使命は正しく物事を伝えるということで、敵だから伝えないということでは、戦争中の「大本営発表」と同じような事ではないかと言わざるを得ません。都合の良いニュースだけ流れ、都合の悪いニュースは一切流さない-日本のメディア業界の問題というものを、今回改めて垣間見ることとなりました。

参考
※1:「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」 サイトオープンのお知らせ
※2:ウォール・ストリート・ジャーナル日本版サイトオープンイベント




 

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