北尾吉孝日記

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先日GDPの2009年10~12月期1次速報値が発表されましたが、結果は前期比1.1%増、年率換算で4.6%増と3四半期連続のプラス成長となりました。ただこの数値をもって、もはや二番底のリスクは無くなったと考えるのは、少し早いと私は思っています。

2009年という年は、金融大緩和と大規模財政出動という中で各国とも方向性が一緒であったので、世界経済はある意味一本調子で非常に分かり易い年でした。ただ2010年という年は、以前ブログで述べた通り、各国政府が所謂「出口戦略」を進めて行く年になると思いますので、どのタイミングでどのような形でそれが行われていくのかという意味で、2009年に比べて国際経済情勢を洞察することにはある面での難しさというものがあると思っています。従って、そのタイミングや程度を誤れば、世界経済全体の景気後退に繋がって行くこともあり得ると私は考えています。

「出口戦略」を最初に進めている国は、勿論中国です。09年に政府目標の8%を上回る8.7%となった中国のGDPは、10~11年については10%程度の経済成長率が見込まれており、既に土地や株式等でミニバブルが発生していると言われています。だから中国は今年に入って預金準備率の引き上げを2度発表したり、あるいは銀行の融資規制強化に動き出したりと、当然のこととして出口戦略を実施し始めているわけです。また、物価の高騰をふせぐために5%程度の元の切り上げの可能性も出てきています。従って、中国マーケットは下がったりもしていますが、その動きは中国だけに止まらず、様々な国のマーケットで見られています。例えばBRICsの直近の株価は年初来高値と比較して夫々6~13%下落していますが、これは出口戦略がBRICsから進んでいくということに起因する外人投資家の利食いの動きと言えるでしょう。

世界各国が2010年のどのタイミングでどのような形で出口を見出して行くのかということが、非常に重要な意味を持ってくると私は考えていますが、もし出口を見出すことが出来なかった場合は、これまで生み出された過剰流動性により猛烈なインフレが世界的に引き起こされて行く可能性があると思っています。だからどうしてもそのインフレを食い止めなければならないと世界各国は皆思っているわけで、その出口戦略実施の順番として中国やインド等のBRICsのように経済成長率が高い国から先になっていくということです。従って、将来BRICsから出口戦略が行われマーケットが下がると見通すならば、当然売ってくるということは極めて常識的なことで、新興国から投資資金が引き上げられるということになって行くわけです。

中国については1年4カ月ぶりに米国債保有高で日本に逆転されたという報道がありましたが、これについては前々からこのブログで私が言い続けているように、中国がドルを全く信用していないというだけのことです。中国には元を国際化させるという一つの野望がありますし、そしてまたリーマンショックの前後でドルに対する信認は遙かに低下しているという認識も持っていますので、金やSDR等の他の資産に代替するということも積極的に行い始めています。中国からすれば、「ドル基軸通貨の時代は終わっており、減価することが避けられないドルをなぜ持ち続けなければならないのか」というぐらいの認識で、例えば2021年にはSDRのシェアを10%相当に持って行くというように今計画しているわけです。それに基づいて元の国際化も着々と進んでいっているということです。

今回の米国債保有高の逆転が意味することは、中国の外貨準備多様化の動きが着実に進んでいるというだけではなく、中国がドルに対する信認を更に低下させており、これからも売り越しが持続するのではないかというような形から、米国の長期金利が再び上がり出すかもしれないということです。これこそが米国の問題点であり、この問題が世界景気にどのような影響を及ぼすのか、今後も注視していかなければならないと思っています。

日本経済について言えば、今は中国のお陰で何とかなってはいますが、内需は非常に弱い状況のままです。以前ブログで述べた通り、日本の需給ギャップ(2009年7~9月期)はマイナス7%程度、年換算で35兆円程度とされていますが、この大きな需給ギャップをどのように減らして行くのか、取り分け内需をどう拡大して行くのかが非常に重要になってきます。従って、子ども手当等々の民主党の政策が景気回復にどのように貢献して行くのかが一つ大事なポイントになってきます。ただ先日もどの程度の乗数効果があるのかについて国会では盛んに議論されていましたが、私自身はその効果は殆ど無いのではないかというように考えています。




 

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