北尾吉孝日記

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皆さんは人間と動物を区別するものは何だと思われますか?

これについて安岡正篤先生の本を読んでみますと、人間と動物を区別するものは「敬」という気持ちであると書いてあります。子が親を敬するという気持ちは動物には殆ど無いかと思います。ただ究極的には動物の気持ちを聞くわけにはいきませんので、それがあるのかどうかは分かりませんし、私が飼っている犬の「ジャスミン」を見ていますと、私のことを敬しているかのようにも思います。しかし、その敬の気持ちの対極にある「恥」の気持ちというもの、即ち「その人は大したことをやる人だと思い、逆に自分が出来ないことに恥を感じ、自分も何糞と思い発奮して頑張ろうという気になること」は明らかに人間と動物を区別するものと言えるのではないでしょうか。この敬と恥が人類をもって進歩させ、今日まで万物の霊長としてある意味この世を支配しているということです。

上述のテーマを脳神経学の世界で見てみますと、脊椎動物の中で動物と人間の決定的な違いがどこにあるのかと言えば、それは新皮質、正確に言いますと前頭連合野という部位にあるとされています。この前頭連合野という部位は人間の思考や想像、あるいは意志決定といったものをコントロールしていますが、これについてはチンパンジーでも殆ど無く、人間のみが発達していると言われています。そして、新皮質の中で知能座と言われているような他の脳の部位は大体3歳ぐらいのまでの間に完成しますが、この前頭連合野については20歳ぐらいまでの間に完成します。このような動物と人間を決定的に違い付ける前頭連合野に対してどのようにアプローチすれば、素晴らしい人間が出来て行くのかということに関して、私は今非常に大きな関心を寄せています。

あるいは「人間の運命というものは、どうすれば良くなるのか」ということも私の興味の対象です。これに関しては中国古典の様々なものを読みましたし、拙著『中国古典からもらった不思議な力』においては、どのようにすれば運命を上向きにすることができ、幸せになることが出来るのかということを人間学の観点から書きました。恐らくそこから出て来る解答と科学で実証したものは殆ど同じになると私は思っていますが、様々な本を読んでみますと未だその部分については十分に究明されてはいません。

昨日のブログで述べた通り、「人間とは何か」「人間如何に生くべきか」という私の長年の研究テーマから派生して、私の興味の対象はここ2、3年で更に広がってきており、上述したように様々な書物を読み、様々なフィールドに興味、関心を持つというようになっています。このことで良いことは何かと言えば、「師と友のネットワークが拡張して行く」ということだと思っています。「師」とは教えてもらう先生のことで傾聴に値する立派なことを言っている人のこと、「友」とは同じフィールドに関心を持っているような人、あるいは同じようなことを考えているような人のことで、この師と友のネットワークをどれだけ充実したものにして行けるのかが、仕事は勿論の事、人生において極めて大事なことだと私は考えています。

あるいは現代ではインターネットの世界で師と友のネットワークを直ぐに広げることが出来ます。例えばTwitterを利用すれば、見知らぬ人が次々とフォローしてくれますので、それにより師と友のネットワークを拡張して行き、人生の成功に繋げて行くことが出来るということです。不肖私もtweetしており(現在のfollower:8784)、「いやー北尾さん、経営者がそのようなことに時間を費やしていて大丈夫なのですか」と言う人もいますが、凡そ経営というものは顧客、取引先といった人間集団に財やサービスを提供する事業を展開することですし、人間の組織をマネージすることですので、人間学が分からなくては経営など出来るはずがありません。だから私も経営学の書物を結構読む方ですが、幾ら経営学の書物を読んでみても、それだけを読んでいては駄目だということです。もし経営学の書物だけを読んでいれば良いということならば、経営学者は皆大きな会社をゼロから立ち上げて隆々とさせているはずです。しかし、現実には誰一人としてそのような経営学者はいません。

例えば鉄血女史のサッチャー元英国首相は「指導者の条件」として「①スタミナを持つ、②決断力、③説得力、④孤独に耐える、⑤家族の協力を得る」の5つを挙げていますが、実はこれら全てを得る秘訣が中国古典には書いてあります。如何に自分を律するのかということとスタミナというものの関わりには非常に強いものがあります。

事程左様に「経営学を知っています」「経済学を知っています」ということは、凡そ指導者の条件とは全く関係がありません。昨日のブログでも述べましたが、やはり何千年もの歴史の篩に掛かった古典から直観的知恵、すなわち徳慧をどれだけ吸収出来るのかが最も重要なことで、そこから出発して違う世界に広げて行くことで、人間の幅と教養が一層出来てくるということです。そして、そのことが企業経営に大いに役立つと信じています。




 

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