北尾吉孝日記

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先日内閣府は日本の09年10~12月期の「需給ギャップ」がマイナス6.1%(年換算で約30兆円の需要不足)になったという試算を発表しました。
09年1~3月期の過去最悪の需給ギャップがマイナス7.9%(年換算で約40兆円の需要不足)でしたので、10兆円程度は減ってはいますが、今後も減り続けるかと言えば、それは中国が今後どうなって行くのかに掛かっている部分が非常に大きいと思います。つまり日本経済は内需が非常に弱い状況のままであり、外需、特に中国頼みという側面が強いということです。

日本の中国向け輸出は「単月では8月までは前年同月比2ケタのマイナスであったが、11月、12月は2ケタの伸びを記録した。特に12月は前年同月比51.3%増と激増、輸出額も121億ドルと単月ベースで過去最高を記録した」(日本貿易振興機構「2009年通年の日中貿易について」)とあるように09年10~12月期に大幅に伸びていることがわかります。
また日本の輸出総額に占める中国のシェアについて言えば、10年前には米国のシェアと非常に大きな差がありましたが(1999年-対中国シェア:5.6%、対米国シェア:30.7%)、昨年初めて米国のシェアを抜いて遂に世界最大となりました(2009年-対中国シェア:18.9%、対米国シェア:16.1%)。
従いまして、上述の通り日本の需給ギャップは改善されてはいますが、それは中国向け輸出によるところが非常に大きいと言えますし、今後の推移についても世界最大の輸出相手先である中国次第と言えるでしょう。

その中国に対しては、ここに来て米国等の人民元切り上げ要求がやはり非常に強まってきています。昨年11月に『元はどうなるか』と題したブログに書いた通り、中国商務省等の貿易関連の人達は元安状況の維持を主張していますが、一方で中国でも現在の国内景気の過熱を抑えるため、あるいは逆説的に言えばインフレギャップを抑えるためにも元を切り上げた方が良いのではないかという声も出ており、将来元高にならざるを得ないような方向に次第に動いていっています。
私は前々から秋口に10%程度の人民元切り上げの可能性があるというように言っていますが、ひょっとするとそれよりも早まって、物価の高騰を防ぐために5%程度の段階的な切り上げが先ずあるのではないかというようにも考えています。

何れにしましても、上述したような人民元の切り上げが中国の輸入需要の減退、あるいは国内消費の減退に繋がって行くとすれば、今度は日本経済が再び大変厳しい状況になって行くということです。一昨日、平成22年度予算案が衆議院を通過して年度内成立が確定しましたが、子ども手当等々の民主党の政策に果たしてどれ程の内需拡大効果があるのかということが、現在の大きな需給ギャップを減らして行く上で非常に重要になってきます。

先月の金融政策決定会合前後に菅直人財務相と白川方明日銀総裁が夫々インフレターゲットに関する認識を示しましたが、そもそもこのインフレターゲットを採用したからと言って、この30兆円程度ある需給ギャップが無くなるという世界ではありません。根本的な問題として、どのようにして需要を増やして行くのかという部分が無ければ、需給ギャップは解消されては行きません。つまり「1%程度のインフレ目標」を設定し、それに合わせて通貨供給量を幾ら増やしてみても、結局は不要な金がダブつくだけで需要が増えるわけではないということです。
従いまして、インフレターゲットがどうこうというよりも、実質的には有効需要になるという状況を作り出して行かなければなりませんので、そのためにはやはり根本的には産業を興して行くしかないと私は思っています。あるいは消費需要をどのように高めて行くのかと言うことですと国民可処分所得を増やして行くしかありませんが、それを増やそうとしたところで、将来の雇用や所得に対する不安があれば、国民の消費性向が高くなって行く方向にはならないわけです。
今の状況というものは、名目GDPの五十数%を占める「家計最終消費支出」がここ十数年の間低迷し続けていて、更に近代経済学にある「生産要素価格均等化法則-グローバル資本主義体制の一要素である自由貿易が貫徹されていれば生産要素価格は均等化されるという法則」に沿う形でモノは当然ながら安くなる方向に動いているという状況です。これは経済原理の通りに動いているわけで非常に難しい問題であるとは思いますが、この傾向自体が一概に悪いことであるというわけでもありません。
このような現況下でインフレターゲットついて議論することには余り意味は無いと思われます。それよりも需給ギャップを減らすためには、先ほど述べた通り、まずは産業を興すという基本から注力して行くべきだと私は思っています。




 

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