北尾吉孝日記

『Googleについて』

2010年3月5日 13:36
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「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」に「【肥田美佐子のNYリポート】グーグルはIQキラーか、英知の泉か」という見出しの記事があります。記事では「2008年夏、IT(情報技術)専門ライターのニコラス・カー氏が、米国の由緒ある文芸誌『アトランティック・マンスリー』に「グーグルで米国人はバカになったのか」という挑発的な記事を寄稿し、話題を呼んだこと」をきっかけとして行われた「無限大の情報にクリック1つでアクセスできるグーグルは、はたして人間を愚かにするのか、賢くするのか」に関する共同調査の結果と調査対象となったIT専門家達のカー氏の主張に対する様々な反論が紹介されています。

私自身がGoogleというものをどう捉えているのかと言えば、これまでのところは便利な検索エンジンという程度としか思ってはいません。カー氏は「ネット革命で膨大な量の情報が一瞬にして手に入るようになり、検索やネットサーフィンにおびただしい時間を費やすようになったことで、読書量が激減し、深い思考ができなくなった」と嘆いているようですが、私はあくまでも便利なツールとして調べ物をする時に使うだけで、それを超えることはありません。カー氏の懸念はそれを超えているような人、つまり朝から晩まで検索やネットサーフィンに時間を費やしている人が沢山いるということに対してであり、この記事における意味ではそれこそが問題なわけです。

一方で私の問題意識は、今後Googleがどれぐらい人間の知的な生活の中に入り込んできて、そして、色々な既存のシステムを破壊して行くことになるのかということです。つまりGoogleが便利なツールとして留まるという世界であれば良いですが、段々とその膨大な情報量を武器にありとあらゆる分野に色々な形で入り込んでくる可能性があるということです。勿論それは金融の世界についても言えることですが、金融の世界は免許業種ということである面で守られている部分があることも事実です。ただ金融の世界に入り込んでこないとも言い切れませんし、Googleは先日お話した「超意識-潜在意識を更に超える深層の部分の世界」のようなもので、過去、現在、未来のあらゆる情報が全て集積されてくるということですので、その意味ではある面で怖い存在であると思っています。
また例えばGoogleMapsは非常に精巧になってきており、人間のプライバシーを意図的に侵害することも出来ますし、あるいは人間を攻撃することすら出来るわけで、その意味においても怖い存在であると言えるでしょう。

「産業革命」が筋肉を機械に置き換えたということに対して、次は「デジタル革命」により筋肉ではなく脳に置き換わると昔から言われていたわけですが、ある意味Googleの存在というものは、巨大化し情報を集積するに従って、「脳に置き換わるということは一体どういうことなのか」ということを次々と具現化していっているとも言えます。そのような中で「人間の脳の役割とは一体何なのか」というような問題意識が醸成されてくるわけです。ただGoogleであらゆる情報をピックアップ出来ますが、その中から情報を選択するのは人間ですし、選択した情報で判断して行くというプロセスもありますので、当然人間の思考の全てを置き換えるということは当面有り得ないことであると私は思っています。

人によっては考えるというプロセスの殆どをGoogleにより省略して行こうとする人もいますが、その行為は人間にとって非常に危険なことであると思います。やはり考えることで人間は進歩して行くわけで、余りにもGoogleに頼りすぎると人間は考えるということをしなくなり、人の考えを見るだけになってしまいます。つまり考えるプロセスを無くしてGoogleに考えてもらうとするならば、それはインプットした人の考えだけの世界になってしまう危険性があると言えるでしょう。

中国にとってGoogleはどのような存在かと言えば、Googleによって思想の統一が図れなくなる可能性がありますので、中国は当然ながらGoogleを恐れているわけです。以前このブログで少し書きましたが、東欧共産圏の崩壊もやはり西欧の情報が大量に流入したことが原因でありました。例えば当時はコピーの機械が発明されたことが非常に大きなことで、それが東欧でも流通するようになり、西欧の情報がいとも簡単にコピーされて広がって行くということが起こりました。このように世界の情報が大量に流入することによって、一つの体制の崩壊にまで繋がって行くわけで、体制にとって情報というものは致命的なものに成り得るものです。

あのマルクスの著書『資本論』一冊であっても、当時は非常に大きな影響を及ぼしたわけですが、Googleはそのような一冊の本とは全く違う意味を持っていますので、中国が恐れるのも良く分かります。中国についてもこれだけ世界の情報が流入するようになった現代においては、不安定要因とされている様々な政治的問題点についても、やはり時間の問題で今後大きく変わって行かざるを得ないと私は思っています。




 

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