北尾吉孝日記

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「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」に「資本主義の現状」という見出しの記事があり、私自身も昨年7月に「資本主義の将来」と題したブログを書きましたが、特に今回「リーマンショックのような事」が起こり、資本主義に関して様々な角度から非常に多くのことが論じられています。
「リーマンショックのような事」とは、端的に言えば、「グローバル資本主義体制における一つの欠陥のようなものが露呈し、異国のサブプライムローンの一種がデリバティブ等の金融テクノロジーの高度化もあって、世界中にあれだけ短時間にしかも増幅されて伝播して行くというような現象」を指しています。
そして、それが起こった結果として世界経済の停滞を招くということになったわけですが、資本主義体制そのものが悪かと言えば、それに勝るシステムは無いわけで、チャーチルが言うように資本主義体制ほど有効なシステムは無いのです。
資本主義体制は「最低のシステム」のように見えるかもしれませんが、これにより多くの貧困が地球上から消え去ったことは間違いありませんし、一方で社会主義体制が人類に何のプラスも齎さなかったことは明らかです。
どのような体制であれ様々な問題というものは起こり得るわけで、例えば、繁栄を謳歌する中国も現体制においてやはり何らかの問題を内在していることは間違いなく、いつの日かその経済成長が止まった段階で色々な矛盾が露呈してくる可能性もあり得るということです。
従って、資本主義体制において起こった問題をどう克服して行くのかということが問題の本質であり、それについて世界各国が真剣に取り組まなければならないと私は考えています。

以前このブログで「米国を中心とした先進国が主導する世界は今後おそらく多極化した世界に変わって行くと考えられますが、ある意味でその直接的な契機が今回の世界経済危機なのであろう」と述べましたが、リーマンショック以降、様々な形で世界の政治経済の変革というものの兆しが見え始めています。
例えば、今やあらゆることが8カ国財務大臣・中央銀行総裁会議という先進諸国による国際的な枠組みだけでは対応出来なくなっており、20カ国財務大臣・中央銀行総裁会議という形でのグローバルな政策決定がなされるという状況にあります。
そして、その多極化する世界において特に注目すべきは中国やインド等のBRICsの台頭であり、先々を見ればこの国々はある種の大きな力になって行くことでしょう。
例えば、中国の場合は言わば修正共産主義体制でありますが、そのようなものとグローバル資本主義体制とが並存した状況の難しさも、今後益々深まって行くこともあり得るわけです。
また政治的に見れば、先月このブログで核テロの脅威について書いた通り、世界各国が核軍縮によりその量を懸命に減らそうとする一方で、核が明らかに拡散して行っている部分も出て来ているということがあります。
例えば、テロリストに核兵器が渡った場合、あるいはイスラエルが核開発をめぐって先制攻撃の可能性を排除していないイランという国が核兵器を持った場合、あるいはこれまで国境付近で摩擦を頻繁に起こしてきたインドとパキスタンにおける紛争と核拡散問題、あるいは北朝鮮が核兵器を保有していること等々、そのような意味でのリスクというものは、ある意味増大しているわけです。

このように現在、グローバル資本主義体制は政治的及び経済的な諸リスクを孕んではいますが、それは資本主義体制そのものの否定に繋がるということではなく、そのリスクをどう減じて行くのかということこそが問題なのです。
資本主義というものは自由と密接に結び付いているわけですが、今後も世界中の叡智を結集して様々な問題を克服して行く中で、この資本主義体制というものを人類はやはり支えて行かざるを得ないと私は思っています。

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