北尾吉孝日記

この記事をシェアする

約1年前に『日立低迷の諸要因』と題したブログを書きましたが、その株式会社日立製作所(以下、日立)の2010年4~6月期の業績を見ますと、最終損益が860億円の黒字、そして、全部門が営業黒字を確保したということで、復活への第一歩としては順調と言えるような状況かと思います。この復活に向けた過程において、例えば、日立グループの上場企業を完全子会社化し本体に取り込んで行くということや経営資源を成長分野に注入して行くということ等々、様々な手を日立は打ってきましたが、それこそ日経ヴェリタス第127号の記事にあるように「真の復活へ次の一手」が今正に必要であるというように思います。

今回の日本経済全体の回復というものは、中国特需を受けているような業界やエコ減税に支えられた特殊な業界だけが潤っているような世界で、全般的に恩恵を被っているわけではないということが一つあります。そのような中でこうした事業分野を手掛ける日立は、どちらかと言えば、恩恵を被ることが多かったわけですが、この恩恵が無くなった時に日立がどうすべきかと言えば、やはり海外展開に最も注力して行くべきであろうと思います。つまり、このアジアを中心とした海外戦略をどう打ち立てるかが、正に日立の次の一手であるというように私は考えています。

上述した記事に「本社機能が日本に必要か、から考える」という中西社長の言葉が紹介されていますが、それについては今後確りと考えて行くべき経営課題であると私も思います。最近経営者の中で本社機能云々という人が明らかに増えてきているように思いますが、それは片一方で言えば、日本という国にそれだけ魅力が無くなってきているということです。税制の面で考えますと、例えば、香港に本社を移せば法人税は17%程度ですので、JSOX(日本版企業改革法)等々で経費ばかりが掛かるというような状況で、日本の株式市場のパフォーマンスが他国と比較して悪い状況が続けば、日本を出て行くというようになる企業がどんどん増えて行くことも事実でありましょう。

また、消費の出来るだけ近くに生産拠点を置くということは、ごくごく自然で合理的な企業行動ですので、当然そのような所に工場が移転されることになります。そして、その工場移転について、更にもう一つの合理的な判断の拠り所は生産コストの高低ですが、今、海外への機能移転を構想するにあたり生産だけで考えているようでは判断を誤ってしまうことになると思っています。今後は、例えば、デザインや研究開発、あるいはグローバル展開を牽引して行く人材の確保等々、あらゆることを全て踏まえて、どこに本社、生産拠点を置くかということを考えるべき時代であるというように私は考えています。

今や私が前々から提唱している「国際化の三段階説(第一段階:輸出入の世界、第二段階:製造・販売拠点を海外に移転する段階、第三段階:本社、生産拠点をどこに置くのかというある意味でのロジスティクスをグローバルに構想する段階)」における第三段階に突入しています。企業の合理的行動として一番望ましいのはどこかについて論じる場合、これまでは「人」について考えられることは余りありませんでした。その背景には、日本人主体で運営して行くということが日本の会社では当たり前いう考え方があったわけですが、今後のグローバル事業において国籍ということは全く関係ありません。英語圏であれば英語でしょうし、中国圏であれば中国語かもしれませんが、少なくとも共通の言語を話すという環境さえ整えば、(あるいは整わないとしても通訳を入れる形で)事業運営は十分に可能なわけです。そのような形で、今後グローバリズムは更に進展して行くというように私は思っています。





(任意/公開)
(任意/非公開)

  1. 日本の法人税では、内部留保が困難です。確かに法人税を下げないと優良企業はどんどん海外に移転してしまいますね。

    日本国内の法人税収は、これからも激減すると思います。

    国際競争に勝つために、今の日本の税制は不利ですし、世界と戦えるだけの十分な資金が日本企業には必要だと思います。

    成長産業への投資を続けるためにも・・・。



Copyright © SBI Holdings, inc. All rights reserved.