北尾吉孝日記

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先日15年ぶりに1ドル=83円台をつけましたが、今後80円位になるとすれば、11年度の日本の実質経済成長率は恐らく1%を割ることになると思いますし、もし70円台に突入するということにでもなれば、マイナス成長になってしまうことでしょう。現下の経済情勢は「リーマンショック」、「ギリシャショック」と度々の危機を経て本格回復する間もなく、今度は二番底になるかもしれないという厳しい状況です。企業業績は回復してきたけれども雇用は一向に拡大せず、また物価が下落して行く中で消費も増加してこない。大幅な需給ギャップによる完全なデフレ状況になっています。この円高で経済全体は非常に甚大な影響を受けますので、現在日経平均株価は8900円を割り込むという状況ですが、70円台に突入するということになれば、もしかしたら2008年10月28日につけた6994.90円というバブル崩壊後の最安値を更新するだろうと私は考えています。
私は6月に掲載した『現下の世界金融経済情勢と今回のファイナンスについて』と題したブログの中で、私どもがファイナンスをあのタイミングで決めた理由の一つとして、金融経済情勢の見方を取り上げています。大変厳しい経済環境下において会社を守るため、延いては多くの株主の現経営陣への付託に最大限に応えるための最大の要素は潤沢な資金力であると考え、あのタイミングでファイナンスを決断しました。将来利益が見込めるような有望なアセットの値段が下がってくる時に、その調達資金を一気に投資をすることによって、株主も一時的には損を被る形になったかもしれませんが、必ず喜んで貰える結果が出てくるという信念の下、このファイナンスを実施致しました。

私どもの海外アセットの含み益の状況を見ていますと、幸いにも大きく毀損しているわけではありませんし、これまで創設してきた海外ファンドについては、その殆どについて最も良い投資のタイミングを探りながら待機してきましたので、今後それらについて動き出して行くということになります。また、昨今の相場環境下において、7~9月決算で利益を出せるリアルの証券会社は恐らく極めて少数になると思いますが、私共のSBI証券についてはネットの証券会社の雄として、きちっと利益を出して行かなければならないというように思っており、現況を見ていますとそれが実現出来ないという状況はありません。

金融経済情勢の行方については、今後日銀がアメリカでバーナンキFRB議長がやったように実効性を持たせた形で出来るだけ迅速に量的緩和を打ち出して行けるのかということが一つの大事なポイントになると考えています。なぜなら、予想実質金利は2%前後で高止まりしており、今回の急速な円高ドル安は金利差によるものだと考えているからです。ちなみに米国の予想実質金利は1%台です。
また、仮に日銀が円売・ドル買いを実施する場合は、短期国債を売却するといった非不胎化介入とすべきでしょう。
他方、個人消費は中々増えて行きそうにないというように思っています。なぜ個人消費が増えて行かないと考えるのかと言えば、例えば、このゼロ金利の環境下においては、団塊の世代の人達が退職金を銀行に預けても元本が減るばかりだし、投資信託での運用を試みても世界的な株価下落という中で資産を目減りさせて行くという状況になっているからです。更に言えば、円が非常に強くなっていますので、外貨建て投資信託を購入した殆どの人は大変な影響を被っているということです。こうした状況下では、老後のことを考えると、余裕資金を持つ団塊の世代の人達も消費を増やすことは出来ないでしょう。ただ、米国をはじめとして世界各国で金利が下がるという中で、例えば、PIMCOが運用するような債券ファンドは為替による損失を吸収してこれまではかなりのプラスになっていっているものがあるわけで、投資信託でも選別が非常に難しいという状況です。皆さんには、是非モーニングスター株式会社のサイトSBIファンドバンク株式会社のサイト等々から適切な情報を得て、投資信託の選別において賢明な判断をして貰いたいというように思っています。

上述したように個人消費は中々増えて行きそうにないので、次の産業を起こすような設備投資を増やして行かなければならないということになります。そのためには日銀は積極的な金融政策すなわち実質金利を下げるような政策を採り、また銀行ではなく我々のような企業を育てる専門家に資金を拠出して行かなければならないというように私は思っています。以前このブログでも指摘した通り、 日銀がリスクマネーを提供出来ない銀行に資金を拠出して、それをばら撒いて行くというようなことをしても、今後の成長産業というものは全く育たないわけで、本物のベンチャーキャピタルにこそ公的資金が回って行くべきなのです。私共のグループについては、近い将来韓国政府の資金を導入することが出来るような状況になるかと思いますが、日本政府も将来の基幹産業育成支援を実効性あるものにすべく、韓国モデルのようにベンチャーキャピタルファンドを積極的に活用して行くような方策を採るべきであると私は思っています。

また以前ブログで述べた通り、日本政府は直ちにSWFを創設して、早急に世界の有望なアセットに投資をして行くということが必要であります。凡そ7年ぶりに0.8%台に突入した長期金利については、下がる所まで下がれば後は債券価格は暴落するしかありません。そして、先日述べた通り、この国債価格の暴落を現実のものとしないための唯一の支えとなるであろうと思われていた株式会社ゆうちょ銀行等の「改革」についても、現在の政情において国民新党は諦めざるを得ないというような状況になってきています。そうなりますと、国債漬けになっている金融機関延いては、日本の金融システムがどのようになって行くのかということが非常に重要になってきますが、私はどの金融機関が最初に国債を売り出すかという部分に関心を持っています。例えば、株式会社みずほフィナンシャルグループのように、先日のファイナンスを実施するために利益面でコミットメントしているためいずれそう遠くない将来に売却益を出そうと考えているかも知れませんし、あるいは日本国債の買い増しが続く中国が今度は一気に利食って行くということがあるかもしれません(※1)。このように誰かが先鞭を着けて国債を売り出すということがあれば、大暴落して行く可能性があると思いますし、そうなれば金融システムは再び崩壊するという危険性があります。これまでは日本国債の約95%を日本国民が引き受けているということから、ギリシャよりはまだ良い状況ではないのかと思われていた日本ですが、今度はそのようなリスクが片一方であるということを思い知らされることになるかもしれないというように私は危惧しています。

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参考
※1:http://s.nikkei.com/vx5XMU




 

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