北尾吉孝日記

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上記グラフはここ3ヶ月のドル円とユーロドルの推移を表していますが、ご覧の通りドルは円やユーロに対して非常に安くなっています(対円:約-7.2%、対ユーロ:約-9.4%)。
またドルは他通貨に対しても幅広く売られており、例えば今月14日にはスイスフランが史上最高値をつけた他、「オーストラリアドルは1983年12月の変動相場制への移行以来の高値」をつけるというように、正にドル独歩安と言うべきようなシチュエーションになっています。

普通の通貨であれば、独歩安、独歩高は一時的なものではないかという程度で終わる話かもしれませんが、基軸通貨としてのドルの場合はそのような簡単な話しではありません。
つまりこの調子で独歩安が続いて行くとすれば、それは基軸通貨としてのドルの信認がどんどん低下して行くことを意味しており、これは極めて大きなことであります。
例えば上述の14日にはシンガポール金融管理局(Monetary Authority of Singapore)がある意味独自の金融政策を目指して「シンガポールドルの取引バンドを小幅拡大すると発表」しましたが(※1)、ドルリンクしているような通貨圏の国々からはドルと共に自国通貨が信用を失って行くということでは仕方がないと思われてきているわけです。
私は今のままでドル独歩安が放置されれば、今回のシンガポールと同じような行動に出る国が今後更に増えてくると思っていますが、その中でも仮にサウジアラビアが原油価格のドルリンクを放棄し、ドル建ての原油取引を止めるということが起こるとすれば、ドルの信認は一挙に低下して行くことになるでしょう。
従って、言ってみれば米国はこれまで紙切れを刷ることである意味世界中のモノを無料で買うことが出来るというような基軸通貨としての大変な特権を有していたわけですが、昨今は「強いドルは米国の国益」とは言わず、ドルを防衛しようという意思も見せない中でドル独歩安が続きその信認低下ということになってきており、この状況が続けば、必ずドルの基軸通貨としての地位が脅かされることになるでしょう。

またユーロも所謂「PIIGS問題」で明らかになったように、単一通貨でも財政主体が多数存在するという本質的な問題をかかえ、基軸通貨足り得ないという判断がなされる中で、日本の円が世界中から買われる状況になっています。
円が強くなることについて巷では悲観論が多いように思いますが、私は現下の状況はある意味絶好のチャンスではないかというように捉えています。
何のチャンスかと言えば、以前ある雑誌社のインタビューでも答えましたが、円という通貨を国際化するために最も良いチャンスが訪れてきていると思っています。
上述のように基軸通貨としてのドルの信認は低下しており、そしてまたユーロも通貨統合はしていますが財政主体の統合がなされていない以上、やはり基軸通貨になって行くことは非常に難しい状況です。
では現段階で中国の元が基軸通貨足り得るかと言えば、それは非常に難しく、スターリングポンドについてはその可能性すら殆ど無いという中で、結局円しかないという現況を日本は利用して行くということでなくてはなりません。
従って、今人気のある通貨は、例えばオーストラリアドルのように資源をバックグラウンドとしている通貨や、または日本のように財政大赤字であると言われながら、実はその国債の約95%が国内で消化されているような通貨になっています。

このように円が世界中から買われる状況を上手く利用し円の国際化を進めて、諸外国に国際的なリザーブカレンシーとして円を出来るだけ沢山保有してもらえるような体制を築いて行くことが非常に重要であると私は思っています。
以前ブログで述べた通り、円の国際化のチャンスは80年代にもありましたが、当時の政・官界はそれを導くことが出来ず、残念ながら世界の主要通貨になりえませんでした。
従って、日本の政策当局者には同じ失敗を繰り返すことがないよう戦略的な言動を期待していますが、そのようなことを的確に判断・実行している人がいないということは情けない限りです。

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参考
※1:ドル独歩安で円15年半ぶり水準、介入期待も





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