北尾吉孝日記

『QE2後の世界』

2010年11月17日 13:48
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先週のブログでFRBが今月3日に踏み切ったQE2(Quantitative Easing2:量的緩和第二弾)について少し触れましたが、この施策が実体経済に対して今後どのような影響を及ぼして行くのかについては注視して行かねばなりません。
ただ先日のG20ソウル・サミットでもQE2に対して世界各国から非常にネガティブな反応が続出しましたが、このような米国を取り巻く環境下では次回第三弾に踏み切ることは出来ないのではないかというようにマーケットでは思われてきています。
そのような中でNYダウは下がり始め、一昨日は漸く僅かに上昇しましたが昨日は178ドルと大幅に下落したというような状況ですし、米国の長期金利については大幅に上昇し、上記グラフ(左)にあるように8月初め以来の高水準を付けるというようになっています。

「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」に「【ブログ】多くの経済学者はQE2の効果に懐疑的」という見出しの記事が掲載されていますが、バーナンキFRB議長としては、実質ゼロ金利状況下で基本的に金利政策の効果が見えない中、再び高まり始めている米国景気の先行きに対する不安感に対処するには、量的緩和しかないという判断を下したということです。
彼が自ら主張している通り、その理屈を端的に述べれば、量的緩和により株式市場を活性化して株価を高め、そして資産効果による消費を促して行くことで景気回復を実現するということを狙っているわけです。

では一方で量的緩和に批判的な識者が何を論拠としているのかと言えば、一つは将来のインフレに繋がるということであり、もう一つは金利上昇が抑えられることで財政破綻が引き起こされて行くということです。
後者について更に言えば、米国の財政赤字は2009年度(08年10月-09年9月):1兆4157億2400万ドル(過去最大)、2010年度(09年10月-10年9月):1兆2940億9000万ドル(過去2番目)と2年連続で年1兆ドルを大幅に超えるような規模となっており、更に2011年度(10年10月-11年9月)についても1兆ドルを超える見通しが米国政府により示されています。
従って、量的緩和に批判的な識者は、①ドル安に伴う信認低下、②財政破綻状況における信認低下、というように両面から基軸通貨としてのドルの信認低下が齎される施策が米国にとって本当に良いと言えるのかどうかという観点から主に批判的見解を述べているわけですが、このような量的緩和無くして一体如何なる方法で米国は景気回復を遂げることが出来ると考えられるのでしょうか。
仮に金融政策により目的が達成出来ないとなれば、結局は財政政策に拠って行くしかないわけですが、危機的な財政状況にある米国についてはこの施策の実効性についてもある意味未知数な部分があると言えるでしょう。

日本について言えば、その金融政策は米国追従を貫くことで何とか円高を回避して行くというような傾向があるわけですが、上述したようにもし米国が量的緩和を止め日本も止めるとなれば、日本はどうなって行くのでしょうか。
既に為替の面では米国がQE3に踏み切らないであろうとして、上記グラフ(右)にあるように円が安くなり始め、対ドルで83円台を付けるような状況です。
ついこの間までは「史上最安値の79円75銭を試す展開」などと言われていましたが、QE2が世界中から非難されるに至って上述の水準まで円安が進んでいるわけで、当面85円台の円安状況というのは十分あり得るというように私は考えています。
このような中で日本は輸出としてはこの間かなりの円高対策を施してきていることから、またぞろ大幅に回復して行くというようになるでしょう。
それ故、これまで日本経済のリカバリーについては米国の「ドル安誘導」に振り回され、輸出主体で実現することが出来なかったわけですが、その状況にポジティブな変化が齎されると考えられます。
従って、後はどのようにして内需を拡大して行くのかが焦点となりますが、まだまだ日米ともに様々な問題を抱えており大変厳しい状況であるというように私は認識しています。




 

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