北尾吉孝日記

『国際通貨体制の行方』

2010年11月17日 17:29
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「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」にも「欧州ソブリン危機」というトピックスがありますが、最近は所謂「PIIGS問題」が再び連日のように報道されています。
この問題について世界は暫く忘れ掛けていたようにも見えますが、例えばギリシャについて言えば、「今年の財政赤字を国内総生産(GDP)の8.1%に抑えるという目標」に関して「つい10月には、7.8%となり、目標はクリアできるとしていたが、現在は9.4%を予想。年末の累積債務のGDP比率は144%になるとの見通し」で全く改善されていませんし、そもそも公務員が総人口の約1割(日本:約3%)、100万人を超えているような国が財政規律を遵守して行くということは殆ど不可能に近いわけです。
またこのような問題が起こった時、ユーロ加盟国の中で結局ドイツが最も負担を被ることになりますが、当のドイツでは「なぜ、ギリシャのために我々がそれ程負担しなければならないのか」「なぜ、PIIGSのために我々だけが…」というように国民が強く反発する中、メルケル首相としても政治家である以上、選挙を意識せざるを得ないわけで、この問題はそう簡単には解決に向かわないということです。

このブログで何度も述べてきた通り、ユーロは単一通貨であっても財政主体が複数国に跨っているという非常に困難な問題を抱えており、統一的な金融政策は実施できるものの財政政策に関してはそれが出来ないわけで、やはり基軸通貨にはなりきれないということではないかと思います。
ただ今週月曜日にIMFが発表したSDR(特別引出権)構成比率では「米ドルの構成比率を2005年の44%から41・9%に、円は11%から9・4%に引き下げる一方、ユーロの比率を34%から37・4%に、ポンドを11%から11・3%にそれぞれ引き上げた」わけですが、このドルの構成比率引き下げについては基軸通貨としての信認低下がその要因であると思いますし、ユーロについては構成比率が引き上げられはしましたが、やはり現体制のままでは基軸通貨足り得ないということは上述の通り明らかであると私は考えています。

私は恐らく来年は国際通貨制度改革の議論の年になるのではないかと思っています。
そうかと言って、今月8日付の英国ファイナンシャル・タイムズへの寄稿でゼーリック世界銀行総裁が提唱したとされている金を参照指標の一部にして行くというようなことは、世界的デフレをもたらす可能性があるので基本的には無理と言わざるを得ません。
米国でもドルがシニョレッジを喪失することに対する危機感を持ち始めているわけで、これ以上のドル安を誘引するようなQE(Quantitative Easing:量的緩和)というものはやはり難しいのではないかと思っています。
もし米国がQE3を実施しないとすれば、上述したことが最大の要因であると思われますし、そのようなことを懸念しているからこそ、最近ガイトナー財務長官は「強いドルは米国の国益」というように再度言い始めているのだと私は思います。

上述した通り、来年は恐らく世界中が国際通貨制度改革に関する議論を行わなくてはならなくなるでしょうが、それは①力を持ち始めた中国等の新興国が最近そのようなことを大分言い始めていること、②「リーマンショック」以後、基軸通貨ドルの信認というものが実態として急速に低下しているということ、がその要因として挙げられます。
ただ先月のブログで述べた通り、現行の国際通貨体制におけるドルの信認低下というものは徐々に起こってくることで、最終的にはどこかの時点で最早もたないという日が来るのであろうと思います。
従って、ある日突然そのXデーが来るということにはなりませんが、これから徐々に様々な現象として現れ、遂には既存の国際通貨体制に大きな変革が齎されるようになると私は考えています。




 

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