北尾吉孝日記

『今年の漢字について』

2010年12月17日 9:03
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昨年のこの時期にも書きましたが、毎年恒例の「今年の漢字」が先週金曜日に発表され、今年は「暑」が選ばれました(※1)。
暑寒について中国古典には「暑いということを暑いといわないことも人間にとって重要なことである」というように書いてあったと記憶していますが、正に心頭を滅却すれば火も亦涼しという部分もあるということでしょう。
「暑」に関しては『亜熱帯化する日本と北海道の可能性』や『地球環境危機下で希求せられる東洋の自然観』等々、私も今年このブログで幾度か触れてきましたが、「今年の漢字」としては「暑」というよりも迷走の「迷」が相応しいと私は考えています。
この一年の政権の動きを見ていますと、何ら一つの信念、筋というものが無いまま右往左往して結局何も出来なかったわけで、例えば前回のブログでも指摘した通り、「県外移設、県外移設」と散々喚き散らした挙句、結局名護市辺野古への移設で日米合意するという状況に至った鳩山政権の迷走ぶりには呆れるばかりです。
そして菅政権はと言えば、上記「普天間基地移設問題」で5月末に連立を離脱した社民党ともう一度連携して行こうとするなど、最早党として貫かれた政策の柱、あるいは政権の国家ビジョンや安全保障観というものが全く見えてきません。
更に閣僚が何かを話せば後で悉く陳謝をしなければならないという状況で、現政権与党の迷走ぶりを見ていて正に「迷」、あるいは「狂」という字が「今年の漢字」として相応しいというように思いました。

今年の漢字ということで言えば、先月「2010年の仕事観を表す漢字」が発表されましたが(※2)、根本的には仕事観というものは一貫したものであり、何時だからどうこうというものでもないと私は思っています。
ただ昨年に続き総合1位が「楽」という結果については、大いに結構なことだと思っています。
やはり仕事というものは「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず(ただ知っているだけの人はそれを好む人に及ばず、ただ好むだけの人はそれを楽しんでいる人に及ばない)」という言葉が『論語』にあるように、楽しみの境地に入ることが出来た人は恐らくそこに働き甲斐や生き甲斐を感じることでしょうから、ある意味人生の最高の境地とも言えるわけです。
一方で上記記事にあるように『昨年は5割以上を占めた「今の仕事が楽しい」という回答が今年は2割に減少する一方、「仕事を楽しみたい」という願望を表す回答が全体の5割以上を占める結果』であったということで、仕事の実感よりも願望の方が現れているということなのでしょう。
寧ろ現実の仕事の中で感じているのは昨年に続き総合2位となった「忍」であると思われますが、この忍というのは修養する上で一つ大事なことであると思います。
以前ブログで述べた通り、例えば仏教でも忍辱(にんにく:耐え忍ぶこと)というように忍ということを悟るための一つの修行としていますし、あるいは結婚生活を送るに当たっても末永く、そして味わい深い夫婦生活を築いて行こうと思えば、お互いがこの忍の字を心掛けて行かねばなりません。
従って、多くの人がある面忍の字を持ちながら現実の仕事場にいるということは、私は良い傾向であるというように感じています。
そして昨年に続き3位、4位を占めたのは「耐」と「苦」で、耐というのは忍耐の耐で上述の忍と同じようなことですが、中国清朝末期の偉大な軍人、政治家で太平天国の乱を鎮圧した曾国藩は『四耐』、即ち「冷に耐え、苦に耐え、煩に耐え、閑に耐える」ということを言っています。
その中に「閑」に耐えるということがありますが、要するにある意味閑職に左遷され窓際族となった人が暇に耐えるということで、これは意外と難しいことです。
A級戦犯として絞首刑に処せられた広田弘毅内閣総理大臣(第32代)は「風車 風が吹くまで 昼寝かな」という句を詠んでいますが、その閑に耐えるというのが『四耐』の中では最も難しいことなのです。
このような御時世で上述した閑の悲哀を味わっている人は大分いるのではないかと思われますが、これもまた曾国藩が言うように四つの耐を潜り抜け、そして大きな仕事を成し遂げて行くことが出来るということではないかと思います。
最後に「苦」について言いますと、これは上記記事の総合順位において最も悪い漢字であると私は思います。
曾国藩が言うように苦に耐えるということではなく、唯唯仕事を苦と感じているようなことであれば、それこそ最大の悲劇と言えましょう。

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私の趣味~中国古美術収集~

参考
※1:2010年「今年の漢字」
※2:2010年の仕事観 一文字で表すと?




 

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