北尾吉孝日記

『日本税制の諸問題』

2010年12月27日 14:58
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今月16日に閣議決定された「平成23年度税制改正大綱」によれば、『現在、総合課税としている店頭FX取引に係る所得について、「くりっく365」など取引所FX取引に係る所得と同様に、20%の申告分離課税とした上で、両者の通算及び損失額の3年間の繰越控除を可能とする』ということになりましたが(※1)、これは私がずっと主張してきたことです。
要するに同じ外国為替証拠金取引をしているにも拘らず、取引所取引に係る所得であれば申告分離課税が適用され、店頭取引に係る所得であれば総合課税が適用されるというような事は余りにも馬鹿げているということです。
更に言えば、例えば株式会社大阪証券取引所は民間企業として既に公開しているわけで、そのような状況において取引所取引を「公的」なものであるかのように扱い、店頭取引との間に差異を設けるという事自体が可笑しいのです。
従って、このような意味において私はこれまでずっと「イコールフッティング(競争を行う際の諸条件を平等にすること。例えば、同一産業の中のある企業だけに認められた優遇措置を廃止するなど。)」ということを主張してきたわけですが(※2)、今回上述したような改善がなされたことは大いに喜ばしいことであると思っています。

そして上記問題の次に解決すべきこととして私が考えているのは配当の二重課税の問題、つまり「法人が稼いだ所得に対して、まずは法人税という形で課税される。そして、それが株主に配当される場合に、今度は所得税という形で課税される。このように、配当に関しては重複されて課税されており、そのことが投資の促進を阻んでいるという問題」です(※3)。
今年7月に『遺族が年金形式で分割して受け取る生命保険金について、相続税と所得税の両方を課すのは「二重課税で違法」との最高裁判決が出た』ことで所得税が還付されるということになりましたが(※4)、上記配当に関しても明らかに可笑しいわけで即刻改めるべきことであると私は認識しています。
従って、この問題についても今度の消費税増税も含めた税制の抜本的改善を行う中で決着を図るべきことであるというように考えています。

それから先週のブログでも指摘した「証券優遇税制」の2年間延長が決められたことについては当然の結果であるというように考えており、何度も述べているようにそもそもリスクを取った株式投資に対する課税とリスクを取らない銀行預金金利に対する課税が同率になるということは明らかに合理性を欠いていると言わざるを得ません。
また「証券優遇税制」が論じられる場合、兎に角いつまで経っても「株式投資家=金持ち=悪」というような前時代的発想が持ち込まれますが、その発想自体がそもそもナンセンスであり、例えば株式を保有していること自体が悪いことであるかのように代議士がこそこそと申告をするというように異常とも言えるのが現況です。
それ故日本は個人金融資産の約55%を現預金が占めるというように主要先進国と比べると極めて特異な状況となっているわけで(※5)、「証券優遇税制」については数年間の延長ではなく、無期限延長、つまり恒久化すべきではないかと私は考えています。

最後に税制ではありませんが即刻改善すべきこととして所謂「最良執行(どの市場で取引すれば最も有利かをシステムが瞬時に判断し、最も有利な市場を選んで自動的に売買を執行すること)」についても一言述べますと、日本では2005年に最良執行義務が導入され、金融商品取引法では「第40条の2」に規定が設けられていますが(※6)、実際には未だに最良執行というものは日本に定着してはいません。
このような状況は正に異様と言う他なく、投資家保護の観点に立つならば、最良執行を行わなくても許される現在の仕組みは直ちに改変されなくてはなりません。
例えば米国では最良執行を行わなければ投資家保護の観点から当局に罰せられるのが当たり前で、なぜ日本では未だ以て投資家が不利益を被るような状況になっているのか私には理解出来ません。
これについても即刻改めるべき問題であり、投資家がより有利な売買執行を行えるマーケットで取引出来るようにすることを証券会社の責務として負わせるべきではないかと私は思っています。

以上、日本が改善に向けて早急に取り組むべき税制上の問題点等を述べてきたわけですが、政府の対応はと言えば、枝葉末節にとらわれ改正対象として相応しくない税制ばかりに注力するというような有様で私は非常に残念に思っています。
政府は上述したような明々白々な問題を抱える諸課題に対する黙認を今すぐやめ、最優先課題の一つとして即刻対処して行くべきであるというように思います。

関連記事
日米の税制政策を巡る昨今の動きについて
証券優遇税制の廃止方針について
世界的な取引所再編の動き

参考
※1:店頭FXに20%の申告分離課税適用、証券優遇税制は2年延長 – 税制改正大綱
※2:イコールフッティング
※3:配当二重課税
※4:「年金型」生保、税還付受け付け
※5:第一生命研究所 個人金融資産(各国比較、2009年末)
※6:金融商品取引法




 

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