北尾吉孝日記

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中国経済の今後の動向を考える上で最も重要なポイントとなるのは、基本的にはインフレ率がどうなって行くのか、そしてまた不動産のミニバブルがどうなって行くのかということであると私は認識しています。

今中国国内で最大の問題はインフレにどう対処して行くのかということですが、余りインフレになると今や社会不安が起こってくる可能性もあるような状況です。
中国の消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)を見ますと(※1)、11月は前年同月比5.1%の上昇で2008年7月(同6.3%)以来の高水準となっており(※2)、今年7月以降5カ月連続で上昇幅が拡大しています(参考:CPI前年同月比・・・7月3.3%、8月3.5%、9月3.6%、10月4.4%、11月5.1%)。
以前ブログで述べた通り、本来ならばインフレ阻止のために最も有効な措置は為替政策により元高にして行くことであって、まずは元安維持のための為替管理を撤廃し、その後必要に応じて金利引き上げを考えるのが順当なことです。
元を強くすることによって全ての輸入物価を下げるということが、言うまでもなくインフレ対策として最も大事なことであります。
ただ現在の中国は為替をコントロールした上でインフレに対処しなければならないというような非常に難しい状況を自ら招いているわけで、やはりこのインフレ問題に対しては先ず為替政策で処理して行くということでなければいけないと思っています。
従って、私は来年中のどこかのタイミングで中国が為替についての考え方を大きく変える転機があるのではないかというように見ています。

中国の経済成長率自体は世界各国が相互依存している中では、米国経済がどうなるのか、欧州経済がどうなるのか、そしてまた日本経済がどうなるのかによって、中国からの輸出がどうなるのかということで基本的には決まってきます。
では中国が為替管理を緩めた場合に輸出がどうなるのかと言えば、中国からの輸出が大打撃を受けるような現況ではないというように私は認識しています。
なぜかと言えば、その輸出の殆どが大企業のアセンブリーを中心とした言わば多国籍企業の子会社の生産拠点として使われているもので、それが為替管理を緩めたからといって直ぐに甚大な影響を被るというようには思えないからです。
従って、まずは為替管理をやめ、インフレを抑えるということが今の中国にとって最も大事なことであると考えていますし、やはり今年4月『中国の国益に資する人民元政策のあり方』と題したブログでも述べた通り、強い元で海外の安いアセットを買って行く方が現況から見れば中国の国益に合致しているというように私は思います。
しかも米中の貿易バランスについては全く改善の兆しが見られず(2000年~2009年の米中貿易バランスについては「Table 1: China’s Trade with the United States ($ billion)」参照)、今年も既に10月時点で米国の対中貿易赤字(226,749.8 millions of dollars)は2009年通年の水準に達しているわけで(※3)、このような状況を今後も続けて行くということであれば米国経済の回復を遅らせることにもなるのです。
従って、米国が経済回復することにより中国の米国向け輸出が再び増加することになるという意味においても中国は為替への対処をまずはしなければならないでしょう。

また上記不動産のミニバブルについては以前ブログで述べた通り、所詮中国の不動産というものは土地が付いていない上物(アパートの部屋)だけの世界で売買という形に直ぐ繋がるわけではなく、そこにアパートの部屋を貸すという行為が当然ありますので、嘗て日本が経験したような大きなバブルの崩壊というような形にはなり得ないというように私は考えています。
中国主要70都市の不動産販売価格が「11月まで3カ月連続で前月に比べ上昇」している中で(※4)、中国はミニバブルに対処すべく預金準備率の引き上げ等の抑制的な金融政策を採っており、今月26日にも「今年2度目の利上げを実施し、期間1年の人民元建て貸出金利を5.56%から5.81%へ、預金金利を2.50%から2.75%へそれぞれ0.25%引き上げた」というわけです(※5)。
ただ今年10月の利上げ実施時に書いた『中国の利上げに関する私の考え方』というタイトルのブログでも述べた通り、今の中国経済を考えてみますと経済成長率は非常に高いように見えますが、今後内陸部における本格的な経済成長を支えて行かなければならない中で、余りにも早くから金利を引き上げるのは中国経済の今後にとって良いことではないと考えています。
従って、中国内陸部の経済成長により内需を拡大して行くという国策の下、それが折角盛り上がりを見せる中では利上げを行うにしても極僅かなものとなるでしょうし、基本的にはやはり出来るだけ利上げを実施しない方向で行くべきではないかと私は思います。

中国以外のアジア金融経済について言えば、インドネシアやマレーシアの経済発展というものに私は今非常に注目していますが、特にインドネシアの場合は総人口が約2億4300万人(2010年7月現在)と世界第4位であることから(※6)、消費のマーケットとしても、あるいは今後は生産のマーケットとしても非常に重要であると考えています。
ただその一方でやはり様々なインフラを改善して行く必要があるというようにも見ており、例えばジャカルタなどは飛行場からシティセンターに行くのに2時間以上も掛かってしまうというように嘗てのバンコクのような状況です。
従って、インドネシア政府は特にこのような道路網の圧倒的不足から交通渋滞が物凄く激しくなっているという状況について一刻も早く改善しなくてはならないでしょう。
またそのインドネシアと共にVISTAの一角を占めるベトナムも注目国の一つであり本ブログで何度も取り上げてきましたが、このベトナムについても常に警戒しているのは非常に高いインフレ率で(1995年~2009年のベトナムの消費者物価上昇率)(※7)、11月のCPIを見ますと前年同月比11.09%の上昇で2009年末からは9.58%上昇しているという状況です(※8)。
その点ではインドネシアの方がベターであり(1998年~2009年のインドネシアの消費者物価上昇率については「1.主要経済指標」参照)(※9)、11月のCPIを見ますと前年同月比6.33%の上昇で2009年末からは5.98%上昇しているという状況です(※10)。
従って、ベトナムについてはインフレをどのようにコントロールして行くのか、特にドンという通貨とドルとの関係をどうして行くのかが重要な問題の一つとしてあるわけです。
以前ブログで述べた通り、上述した問題はベトナムの他にもドルリンクしているような通貨圏、例えばカンボジア等の東南アジア諸国についても同じ様なもので、ドルが弱体化する中で皆ドル安から自国通貨安(結果としての)インフレを回避すべく相当な危機感を持っています。
ただ何れにしても上記国々の経済成長率は世界的に見て非常に高いわけで、日本にとっても政治リスク等から中国一辺倒という状況ではなくなって行く中で日本企業の進出もどんどん出てくると思われ、近い将来というよりも既に非常に有望な国の一つになっていると私は認識しています。

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中印経済の現状と今後の展望
欧・中の金融経済情勢など最近の雑感
ベトナム経済圏の現状と見通し
「通貨戦争」と基軸通貨ドル

参考
※1:National Bureau of Statistics of China
※2:中国の消費者物価指数、11月は5.1%上昇
※3:UNITED STATES INTERNATIONAL TRADE COMMISSION
※4:中国、0.25%追加利上げ 2カ月ぶり
※5:中国は1-3月期に追加金融引き締めの可能性:政府系シンクタンク
※6:CIA – The World Factbook
※7:Consumer price index by month of the year
※8:Social-economic situation in 11 months of 2010
※9:インドネシア経済・投資・貿易の動向
※10:CONSUMER PRICE INDEX




 

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