北尾吉孝日記

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最近の書籍や雑誌を色々見ていますと、グローバルインバランスという言葉を良く目にします。
私の考える最大のインバランスが何かと言えば、世界全体の貿易に占めるドルの割合が約25%であるのに対し、外貨準備に占めるドル資産の割合が約60%になっているということです。
そのような現況で最近特に世界の注目を浴びていることとして、先月中旬胡錦濤がドル基軸の国際通貨体制を「過去の遺物」と切り捨てたことが挙げられますが、それについては以前から例えば中国人民銀行総裁の周小川がドル基軸体制の欠陥を指摘した上でSDR代替案を提示するといったことがあるわけです。

中国の外貨準備については昨年年間で「4700億ドル増加し、世界最高の2兆8500億ドル」となり(※1)、今年も恐らく4000~5000億ドルが積み上がってくると思われますが、中国は直接投資を行ったり、あるいは援助や融資を行う等して出来るだけその膨大な外貨準備を使っておこうとしています。
本来は外貨準備などというものは変動相場制下においてGDPの2,3%もあれば十分なのですが、中国自体が変動相場制を敷いておらず、為替介入を実施している国ですから、上述の通り外貨準備も特異な形で増加してきたというわけです。
そして今この増え過ぎた外貨準備は世界全体を不安定にして行くパワーを内包しており、国際金融市場における中国のアクションがドルやユーロの暴落を誘発出来る水準にまで達しているのです。
しかしながら中国も馬鹿ではありませんから、自分で自分の首を絞めることになるかもしれないようなことは行いませんので、例えば実際にそうしたパワーを振り回すか振り回さないかは別の話であります。
ドルを暴落させるような形で中国がパワーを行使したら今度は米国側が対抗措置として中国からの輸入を激減させるような貿易摩擦的な状況に繋がって行くような戦略を進めてくると考えられ、これにより中国の輸出が大打撃を被れば中国の雇用は危機的状況になり、そして今エジプトで起こっているような政情不安が中国でも起こりかねないというわけで、現在の共産党幹部はそのリスクを熟知していると思われます。

根本的に言うと、トリフィンが指摘したように世界全体にばら撒くドルの量というのは過大でも過少でもこの世界に危機的状況を齎すことになるわけです。ドル基軸通貨体制というのは米国の経常収支赤字により世界全体の貿易量の拡大に見合うようにドルが供給される仕組みであり、うまくバランスさせることは本来的に難しいのです。
そしてその経常収支が長期に亘り赤字を計上し続けて、昨今のように財政赤字が大きくなり過ぎると今度はドルの信認の大幅低下というように繋がって行くわけで、そもそもそのような矛盾を内在した仕組みであるということを我々は認識すべきです。
従って、今回のダボス会議でもサルコジがドル基軸通貨体制を終焉に向かわせる国際通貨制度改革の必要性を訴えたように(※2)、現在多方面からドル基軸通貨体制の終焉を訴える声が出ているわけで、今正にこのグローバルインバランスをどうして行くのかという大問題と世界は向き合うべきではないかと私は思っています。

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参考
※1:中国の外貨準備は第4四半期に1850億ドル増加
※2:商品高G8で協議 ダボス会議、仏大統領が表明《日本経済新聞》




 

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