北尾吉孝日記

『芸術と日本人』

2011年2月4日 8:59
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「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」の「芸術に冷たい日本人」という見出しの記事の中に下記記述があります。

「上海、ソウル、ハノイ、ジャカルタでは、アジアの経済成長で豊かになった収集家が地域の芸術家の作品を高値で次々と買い、アジアの現代アートはブームとなっている。しかし、日本は違う。日本のアーティスト代理人、一色與志子(よしこ)氏は、日本のお金持ちは高級車や高級腕時計なら買うが、現代アートは買わないだろうと指摘する。」

なぜ日本人が自国の芸術家を支援しないのかという問題は非常に難解であり、そこには様々な理由がありましょう。
上記記事では経済的理由として「不動産バブルの崩壊以降、日本には、超富裕層が多く存在しなくなってしまった」ということが挙げられていますが、本質的に言えば日本人自身が日本的なものに価値を見出していないということなのだと私は認識しています。
その意味で中国の状況について述べますと、昨今中国人は自国の祖先が創作した骨董に物凄い値段を付けています。
例えば昨年11月に英国で行われたオークションに「ロンドン郊外の家で見つかった」乾隆帝の時代の壺が出品されましたが(※1)、それを競り落とした中国人男性は「アジアの美術品としては過去最高となる4300万ポンド(約57億円)の値を付けた」というわけです(※2)。
その一方で日本人はと言えば、日本的な美に大きな価値が置かれているというような状況ではなく、西洋的なものばかりを買いに行っている嫌いがあるように思います。
嘗ての日本の景気が良かった頃を考えてみますと、日本人に人気が高かったのはクロード・モネやエドゥアール・マネ、あるいはピエール=オーギュスト・ルノワールといったフランスの印象派の作品であり、やはり西洋的なものに価値を見出していたのだと思います。
では渡仏した日本人画家に対する評価がどうであったのかという観点から上記問題を捉えてみますと、例えば藤田嗣治のようにある程度の成功を収めた人間の評価は高いわけですが、他の殆どの画家は世界で通用してはいないのです。
つまり私が何を言いたいのかと言えば、日本人が注目しないものに対しては世界も中々注目しないということです。
その中で唯一の例外が浮世絵であって、浮世絵だけはその価値を見出され世界に随分広がりましたが、それはフランスの画家達が浮世絵から多くを学び、それを参考にして賞賛したからであります。
そのような部分があって今日でも浮世絵というのは欧米人にも非常に人気があるというわけです。

日本においては外国人のみならず日本人までもが自国民の芸術作品を殆ど購入しないというような部分があり、そのような中では芸術というものが中々育ち難いということは言うまでもありません。
従って、やはり今後は日本人自身が日本的なものにどんどん価値を見出して行かねばならないということなのだと思いますし、そうでなければ日本の芸術というものは衰退の一途を辿って行くことになるのではないかというように私は危惧しています。

参考
※1:中国のつぼ、アジア美術では過去最高の57億円で落札
※2:屋根裏で発見の壺が57億円に、出品者もオークション業者も大興奮。




 

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