北尾吉孝日記

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私は2011年弊社年賀式で今年の年相について下記の通り述べました。

【今年は辛卯(しんぼう)であります。刑具に用い切ったり突いたりする鋭い刃物を描いた象形文字です。白川静博士の『字統』によると辛の字は奴隷や罪人に入れ墨をする道具としています。だから、舌を刃物で刺すような、ぴりっとした味のことをこの字を訓読みし「からい」と言うのである。辛酸、辛辣、辛苦という熟語は、以上のような内容の意味合いがある。
さらに辛は上を表わす二と干と一の会意文字である。干は冒す、一は一陽を表わし、説文学的には、一陽が上を、干(おか)す形とみる。すなわち、今まで下に伏在していた陽エネルギーが色々な矛盾、抑圧を排除して敢然として上に発現する形であり、前年の庚(かのえ)を次ぐ革新を意味する。その際、後漢の『白虎通義』にあるように、殺傷を生ずることがある。故に『漢書礼楽志』にあるよう斎戒自新を要するものである。】

上述の「一陽が上を、干(おか)す形とみる。すなわち、今まで下に伏在していた陽エネルギーが色々な矛盾、抑圧を排除して敢然として上に発現する形」というのは正に今中東・北アフリカ諸国で起こっているようなことです。
つまりチュニジアから発して長期独裁政治の中で抑圧されていたものが未だ上に向かって出て行っているということであり、その時に上記『白虎通義』にあるように殺傷を生じているというわけです。
そして、そのような中で今それがどんどん伝播して行っているわけですが、これがある意味民主化という動きだけに止まらずイスラム原理主義と結び付くような形になってくるとすれば、それもまた考えものです。
唯そのような動きに対しても抑圧されていたものを抱える民衆は最早我慢出来ないものと思われ、より強固なイスラム原理主義的なるものが出てくるような状況にはならないと私は見ています。

MENA(Middle East and North Africa)と呼ばれる中東・北アフリカ諸国において、例えば湾岸産油国では自国民の場合、所得税、教育費、医療費は基本的に国家負担となり無料ですので、その意味では本来何の問題も無く社会的安定が保たれるはずであります。
しかしそのような国々や、あるいはその他観光資源等に比較的恵まれている国でも社会不安が起きてきている背景に何があるのかついては、『MENA地域の情勢をどう見るべきか』と題したブログで述べた通りです。
この辺りの国々では若年層人口が急激に増加しているにも拘らず雇用を提供する産業が未発達であることから非常に大きな貧富の格差が現出しているわけで、昨今はそのような状況に加え食料価格をはじめ様々なモノの値段がグローバルに高騰してきており、それ故今回悲鳴を上げているのではないかと私は見ています。
チュニジアやエジプトのケースが上述したものであるということは前々から主張している通りですが、正に年初に述べていたことがそのような意味での民主化という形でグローバルに現れ、そしてまた先日の「ニュージーランド大地震」を含め今年に入り世界各地で様々な天変地異が起こってきているわけで、今更ながら中国数千年の統計学の凄さというものを私は痛感しています。

そして今私が一番危惧しているのは上述したような世界規模でのうねりの中、中国にこの民主化の動きが伝播し嘗ての天安門事件のようなことが再び起こらないかどうかということです。
一昨日の「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」の「中国、反政府デモ抑えるためソーシャルメディアの規制を強化へ」という見出しの記事にもあるように、中国政府は厳しいインターネット検閲を実施しているわけですが、今の中国はそのようなことで情報の拡散・流入が阻止されるという世界では最早ありません。
現在中国は国をかなりオープンにしており、多くの中国人が海外にどんどん渡航し、多くの外国人が入国しているわけですから、そのような観点から見ても様々な情報が中国国内に流入してくるような状況にあるわけです。
それ故中国政府も上記うねりが中国へ本格的に伝播することに対し神経を尖らせているわけですが、仮に中東諸国で見られたような動きに発展するならば、中国政府は再び大規模な軍隊による武力鎮圧に乗り出すことと思われます。
また基本的には中国が民主化されるのは結構なことだと思われますが、昨今の世界的潮流の中で現在の政治体制が崩壊するということにでもなれば、世界経済に対して相当大きな打撃を少なくとも短期的には齎すことになるということについても確りと認識すべきではないかと私は考えています。

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