北尾吉孝日記

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今週火曜日に株式会社東京証券取引所(以下、東京証券取引所)の斉藤社長が「MBO(経営陣が参加する買収)で上場廃止する企業が増加していることについて」下記見解を示したと伝えられています(※1)。

「一言でいうと残念。これまでMBOを実施した企業のほとんどが初値の値段よりも株価が低い。株主に高値で買ってもらい増資もしたり、リスクマネーを取っておきながら、株主がうるさいから上場廃止にするというのは心情的に非常に不快で、投資家を愚弄している。資本市場のシステムそのものを毀損する恐れがある」

経営者としてみればMBOを実施するのは当然のことで上記発言はとんでもないものであると私は思っています。
つまりそこに経済合理性が有るから公開し、経済合理性が無くなるから非公開にするわけで、「投資家を愚弄している」などということでは全くないわけです。
2010年はMBOで10社が上場廃止となり「日本でMBOが本格化した05年以降で計64社が市場を去った」わけですが(※2)、なぜ日本でMBOが増加しているのかを端的に言うならば、それだけ現在の日本のマーケットというのに魅力が無いからなのです。
高い業績を上げても株価が上がって行かないというような現況である他、例えば日経225採用不採用による株価への甚大な影響や、そもそもの日経225銘柄「選定基準」なるものの問題点等々、日本のマーケットは全くと言って良い程ナンセンスなものとなっています。
東京証券取引所の経営が如何にナンセンスかと言うことについては昨年も『東京証券取引所の取引時間延長について』や『世界的な取引所再編の動き』と題したブログ等で下記の通り指摘してきましたが、いつまで経ってもその程度の経営しか出来ないが故に日本のマーケットというものに世界を惹きつけられないのだと思います。

【凡そ1年前にスタートしたプロ向け市場「TOKYO AIM」について、私はこれまで様々な観点から批判的な意見を述べてきましたが、悪過ぎるタイミングもその一つです。マーケットというものはある意味シンプルで、状況が悪い時にはどれだけの取引時間があろうとも、それに応じて参加者が増えるというものではありません。東京証券取引所は年内に取引時間の延長について結論を下すということですが、もし延長すると決めた場合はTOKYO AIMの現況に鑑み、是非適切なタイミングで実施してほしいものです。】

【株式会社東京証券取引所について言えば、今年1月に漸く新システムが導入されはしましたが、例えば2005年11月に「大規模システム障害」を起こしたこと、あるいは同年12月の「ジェイコム株大量誤発注事件」において「東証システムの不具合」があったということ等々、世界標準から何周も遅れたシステムによる問題をこれまで枚挙に暇が無いほど起こしており、緊張感の無い経営が行われてきたということが事実としてあるわけです。】

一昨日の日刊工業新聞の『経営ひと言/SBIホールディングスCEO・北尾吉孝氏「PTSの成長期待」』という記事にもある通り、SBIジャパンネクスト証券株式会社の運営する日本最大の株式私設取引システム「ジャパンネクストPTS」に対して「すでに外国系の複数社から買収の申し入れが来ている」というのが現況です。
私としては「利益を出せるようにしてから売却したい」と考えており、「37.5%出資するゴールドマン・サックスとよく相談した上で良い条件があれば、売却に向けて積極的に交渉」して行こうと思っています。
漸く本年6月から株式会社SBI証券(以下、SBI証券)もベターなマーケットを自動選別するシステムを導入する予定です。
私はそのことが、SBI証券の株式委託売買取引額における圧倒的なマーケットシェアを考えると、アルゴリズム取引を行う投資家を引き寄せる大きな材料になって行くと思っています。SBIジャパンネクスト証券は6月以降大変な成長を遂げて行くことになるというように見ています。

昨今のような証券取引所の世界的な大再編が表面化しても尚、東京証券取引所の斉藤社長は「危機感はあまり感じていない」と言い切り「米欧とは状況が違う」と静観しているようです(日経ヴェリタス第153号)。
唯現在の私設市場が対東京証券取引所比3%程度であるということから私設市場というものを軽んずるような姿勢でいれば、あっという間に窮地に追い込まれることになるでしょう。
先週買収が発表されたPTSで「欧州最大手のチャイエックス・ヨーロッパ」が一体何時設立されたのか(※3)、あるいは下記のような米国証券取引所の歴史というものを斉藤社長は知っているのでしょうか。

【米国の証券取引所を見ますと、いわゆるPTS(Proprietary Trading System、私設取引システム。米国ではATS: Alternative Trading System、ECN: Electronic Communication Networkとも呼ばれる)が証券取引所と合併する中で変化が起こりました。例えばNew York Stock Exchange, Inc.とATSの代表格であったArchipelago Holdings, Inc.の合併のように、証券取引所のシステムの進化と密接に結びついた形で再編が行われました。】(『国内証券取引所の再編成』より抜粋)

斉藤社長の言動を見るにつけ全くと言って良い程PTSの歴史を知らないと思われますが、このような人をいつまでも東京証券取引所のトップに据えて置くということ自体が日本の国益を損なっているのではないかと思います。
先日の石原都知事ではありませんが、斉藤社長についてもこれまた老害の域を出ないというように私は思っています。

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参考
※1:MBO増加「非常に不快。投資家を愚弄」 東証社長
※2:(上)自ら上場廃止、6年で64社 株主より速さ重視、カネ余りで銀行も積極融資
※3:米私設取引BATS、チャイエックス・ヨーロッパを買収




 

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