北尾吉孝日記

『日本の貯蓄率』

2011年3月15日 9:16
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皆さん、日本の貯蓄率が現在幾ら位になっているかをご存知でしょうか。
私が学生の時分には大体20%以上をキープしていました。
特に日本の高度成長期においてはこの高貯蓄率が間接金融偏重の金融システムの中で活かされ、重化学工業といった成長分野に資金を効率的に傾斜配分したことが高度成長の一つの原動力となりました。
しかし1992年にはこの貯蓄率が14.7%程度にまで下がってきて、更にそこから漸減し2007年には2%台となり(2007年:2.4%、2008年:2.3%、2009年:2.3%、2010年:2.4%)、2011年には3.2%と少し回復はしましたが昨今非常に低くなってきています。
なぜ上述したような低水準にあるのかについては様々な理由が考えられますが、その一つとして高齢化が挙げられます。
即ち、現在の日本においては4人に1人位が既に65歳以上になっているわけで、そのような高齢化の中、老人は貯蓄をせずに寧ろ貯蓄したものを消費する側にまわっているということです。
従って、高齢化の進行により貯蓄を取り崩して消費を行うということになるわけですから、当然ながら約1442兆円(2010年9月末)とも言われる家計の金融資産残高は減少していると思われます。
最新データが公開されていない中(※1)、なぜ私がそのように推測するのかと言えば、上述したような低貯蓄率の状況において「現金・預金は家計の金融資産全体の55.5%を占めて」おり(※2)、それ故その残高は減少してきているというように考えられるからです。

これまでも本ブログで何度も指摘してきたように、現在の日本国債というのは、その95%程度が日本の銀行システムを中心とした様々な金融機関によって所謂個人金融資産を背景に日本国内で消化されており、そのような意味では他国とはかなり違う状況にあります。
しかし、この個人金融資産とバランスする形で公的債務が約900兆円弱あるわけで、貯蓄率が低水準にある中、このバランスが崩れた時には外国人に日本国債を買って貰わなければならないような世界になってくるということです。
上記バランスを崩す要因として貯蓄率の低下が挙げられるのは先程述べた通りですが、その貯蓄率低下を齎す主因としては高齢化だけではなく可処分所得の減少も挙げられます。
どういうことかと言えば、現在のような経済状況においては可処分所得が上昇して行くわけもなく、日本の貯蓄率は先進諸国の中でも際立って低い水準にあるということです(参考:「Household Saving Rates as % of disposable income 1992-2011」)。
こうした状況下、日本国債格付けが引き下げられたのはご存知の通りですが、今後更に引き下げられて行くとすれば、当然ながら外国人は国債購入時に高金利をどんどん要求してくることになります。
そして高金利がどんどん要求されるならば、国債の利払いがどんどん増えて行くことになるわけです。
端的に言えば、今後例えば金利が1%上昇するだけで9兆円の金利負担増が発生し、それがまた国債発行を誘発するという悪循環に陥りかねないような水準に現在の日本は最早あるということです。
我々は既にこのような大変際どい状況に直面しているという認識をまずは確りと持たねばなりませんし、その現実について今正に真剣に考えなければならないというように私は強く思っています。

以上、①低下して行く貯蓄率、②上昇が見込まれる金利、③一向に改善に向かう気配の無い公的債務の拡大といったものが近い将来日本経済の非常に大きなボトルネックになり得るということであり、それ故消費税を中心に「増税、増税」の声が昨今噴出しているというわけです。
何れどこかのタイミングで増税せざるを得ないのは間違いないわけですが、例えば名古屋市においては河村市長が極端な減税論を展開しており、上述したような現実を彼は十分に理解出来ているのかということに私は懸念を抱いています。
勿論言うまでもないことですが、増税前にすべきは余りにもくだらない様々な事柄を徹底的に合理化することです。
つくづく思うに日本経済全体の合理化や生産性の向上を阻んでいるのは、1950年代に作られた法律に基づく様々な事柄であるということです。
一例を挙げれば、農地法があるために農業の株式会社化や証券化が行われないというわけで、このようなことが日本の未来にとって大きな妨げとなっている現状を見るにつけ、上記年代に作られた法律を早急に全て見直すべきであると私は考えています。
そしてまたその法制度において役所が色々な機関を作り天下りを送っているわけで、このようなものを全て打っ潰すということを実行した後に、税率に関する具体的議論をして行くのが筋というものであると私は強く思っています。

本稿は大地震発生前に書かれたものです。

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参考
※1:資金循環
※2:日銀:9月末の家計金融資産は1442兆円、前年比0.3%増




 

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