北尾吉孝日記

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今回の大地震が日本経済に与える影響を考えれば、当然ながら政府は震災復興という形での補正予算を早急に組むことになるでしょう。
今後の焦点はそれがどの程度の規模になるのかということですが、下記のように様々な見通しが伝えられています。

『政府・民主党は、災害復興のため、最大で十数兆円規模の補正予算案の検討も始めました。また、民主党の看板政策でもある子ども手当や高速道路無料化などの予算を復興支援の財源に充てることも検討しています。』(※1)
『仏ソシエテ・ジェネラルの大久保琢史チーフエコノミストは「日本政府は阪神大震災当時ほど財政状況が良くない。追加予算の規模は1兆円程度になるのではないか」と指摘した。』(※2)
第一生命経済研究所主席エコノミスト熊野英生:『2011年度の当初予算案は、財政赤字の規模が前年とほぼ横ばいの44.3兆円。おそらく、ここへ復興対策を盛り込んだ補正予算が加わると、数兆円の上振れになると予想される。』(※3)

2011年度予算案及び関連法案の成立が困難を極めていた状況下、先週金曜日に突如として大地震が起こったわけですが、やはりこの復興支援に向けた補正予算についてだけは兎に角与野党協力し、是非とも最優先で速やかに議会を通過させて貰いたいと思っています。
また日本銀行ついても「巨大地震の翌営業日にあたる3月14日に資産買入基金の規模を35兆円から40兆円へと増額」し(※3)、更には金融市場に対し昨日まで3日連続(14日:15兆円、15日:8兆円、16日:5兆円)で資金供給を実施して(※4)、そして本日も続けています(※5)。
それに加えて「民主党は補正予算案の編成と並行し、被災地の生活を制度面で支援する特別立法を4月上旬をメドに国会に提出する方向で準備」に入ったというようにも伝えられています(※6)。
何れにせよ今回の地震については、エネルギーの大きさから見れば「阪神・淡路大震災」の約178倍と伝えられていますが(※7)、災害の大きさから見れば原子力発電所関係を除くと恐らく数倍程度ではないかと私は見ています(この推測については厳密な計算により算出した数値ではなく新聞・テレビ等を見ての直感的なものであり、大きく外れているかもしれません)。
現時点では下記URLにあるように「被害の全容がわからないため試算に開き」があるというような状況です。

参考①:「経済的被害は予想以下との指摘も―
参考②:「被害総額は最大20兆円 東日本巨大地震、阪神上回る 民間試算―

私は神戸市出身で、それも「阪神・淡路大震災」において最も大きな被害を受けた東灘区の出身です。
今は母親だけになりましたがその当時は両親が家にいて、あの時私は新幹線が動くようになった日に実家に帰りました。
新大阪駅で降り在来線のJRに乗って芦屋駅に向かったところ、まず驚いたのは塚本駅の辺りから屋根にビニールシートを張った家が兎に角続出してきたということです。
そして芦屋駅に着いてみれば、芦屋駅自体が大破されているという状況でした。
そこから家までは通常であればタクシーに乗って10分程度ですが、その時は塀や家が倒れていたことにより道路が使えない状況であったため、山を迂回し約50分を要して自宅に漸く辿り着くことが出来ました。
そして家のテラスから下を眺めた時、「あぁ、正に戦争の後だなぁ」というように思ったのを今でも鮮明に覚えています。
被災地ではライフライン足る水道、ガス、電気が完全に麻痺していましたが、特に切実なのは水道で上述したような道路状況であったため給水車すら来ることが出来ませんでした。
こうした中、近所の子供達は谷川の水を汲んできて、それを何回も煮沸しながら使用していたわけで正に非常事態ともいうべき状況でありました。
その後約10年を経て神戸の街並みはほぼ完全に復興したわけですが、恐らく今回も10年程の歳月が掛かるのではないかというように私は見ています。
私自身の両親や親戚の多くが正にその被災地にいたこともあり、今回の大地震が齎した甚大な被害、そして被災された人々の苦難といったものについて切実に理解出来る部分があるのです。
完全復興に至るまで今後10年程度の歳月を要すると思われる被災地に対し、今回幸いにも被災しなかった人々は長期に亘って様々な援助を継続実施して行くべきであろうと思っています。

次に経済的な観点から述べますと、今回のようなことが起これば当然ながら「復興特需」と称されるものが生じてきます。
従って、それが設備投資や消費需要を誘発するという側面もありますので、下記記事にあるように経済的に言えばある意味ではポジティブな面があることも否定は出来ません。

『20世紀以降に自然災害の影響で経済が崩壊したことはほとんどない。米国の経済専門チャンネルCNBCは「地震は経済的な打撃を与えるが、復興過程で雇用創出や消費増加が見込まれる」と指摘した。
LG経済研究院のイ・グンテ研究委員は「日本経済は慢性的な需要不足が大きな問題だったが、地震の復旧で需要が生じれば、長期的に成長をけん引する役割を果たすのではないか」と分析した。』(※8)

昔は世界的な経済停滞に陥ってきた場合、その困難を克服する方法は唯一つ、戦争というものしかありませんでした。
つまり資本主義の景気変動において世界的景気変動の悪化を招いた時には、第一次世界大戦、第二次世界大戦が勃発しているわけで、戦争でしか問題を解決することが出来なかったということです。
英国の経済学者ジョン・メイナード・ケインズが「公共投資でピラミッドを作ればよい」としたのと同じ様なことで、需要を創出しなければ仕方がないわけです。
そうすることにより再び景気が持ち直して行ったわけですが、現代においては嘗てのような戦争が起こるということはありません。
しかし大規模天災というのはある意味戦争と同じ様な効果を齎してくることから、そのような意味において世界では今回の日本の「復興特需」というのが今後様々な形で出てくることになるでしょう。
従って、世界経済に対する影響という観点から見れば、巷で言われているようにはネガティブなものとはならないと捉えており、私は楽観視してはいませんがそれ程悲観もしていません。
ただその一方で一昨日のブログ『日本の貯蓄率』でも述べましたが、日本の財政はと言えば、非常に難しい均衡状態を何とか維持しているという状況であり、その中で大規模な財政支出を伴わなければならないのです。
従って、下記のような財政状況にある日本は政府も地方公共団体も公的な部分について凡そ一切の無駄を排除すべきであると私は考えています。

『災害復興には相当長期化するとの見方も出ている。阪神大震災の際、日本政府は3回の補正予算で3兆2000億円を復興費用として投じた。1994年の日本の財政赤字はGDPの3.8%で、赤字を拡大させる余力があった。95年の日本の政府債務残高の対GDP比は86.2%で、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均(72.3%)を13.9ポイント上回っているにすぎなかった。
しかし、今年は状況が異なる。日本の財政赤字はGDPの7.5%に達し、政府債務残高の対GDP比は世界最高の204.2%に達するとみられている。OECDの平均(100.7%)の2倍を超える水準だ。』(※8)

民主党の蓮舫氏等により実施されてきた所謂「事業仕分け」というのは無意味なことであって、現存する無駄を全て無くすためにはそれを齎している法律に遡り、その法律そのものを変更しなければならないということです。
最近のブログでも何度か指摘していることですが、私は以前から1950年代に作られた法律に関して、その一切を見直すことを提起しています。
その見直しと共に、その法律の下で生み出されてきた様々な半官半民の機関、あるいは公的な機関といったものが本当に必要なのかどうかという所まで見て行くことで、今こそ一切の無駄を排除すべきであると政府関係者には強く要請をしたいのです。
今回の大災害によって昨今日本は大変厳しい状況にありますが、併せて国を開くということに関しても積極的に進めて行くべきであり、日本が21世紀を生き抜く上での必須事項であると考えています。
従って、TPP問題については早急に前進させるべきと捉えており、これこそがグローバリズムの世界の中で日本が生き残る唯一の方法であるというように私は思っています。

参考
※1:【地震】最大十数兆円規模の補正予算案の検討へ
※2:東日本巨大地震:経済への影響、分かれる見方(下)
※3:COLUMN-〔インサイト〕東日本大震災と財政の正念場=第一生命経済研 熊野氏
※4:日銀、資金供給5兆円 昼過ぎに1.5兆円追加
※5:日銀、即日供給6兆円 4日間で計34兆円
※6:民主、特別立法提出へ 被災地支援で野党と議論本格化
※7:東北大地震、エネルギー規模は阪神大震災の178倍
※8:東日本巨大地震:経済への影響、分かれる見方(下)





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  1. 初めてコメントさせて頂きます。
    いつも、共感する提言に敬服いたします。この度の天災、いろいろな意味で現代社会を考えさせられているところです。例えば、様々な通信機器が果たすべき役割(マスコミの報道の仕方など含め)。また、その通信機器類に頼りすぎたが故の、ひとたびトラブルが起きれば全く無用の長物ぶり。石油製品に、あまりにも依存しすぎている社会構造等。便利さの恩恵に改めて気付かされたのではないでしょうか。ある首長さんの天罰発言などもありましたが、天罰を受けたどうのうこうのは別として、ある意味、便利さへの警告、日本人として失ってしまったものを気付かせたという意味ではあながち間違ってはいないような気もしています。
    経済的損失と、これからの近未来を考えると、電力供給の大幅減に対する対応や、これからの電源開発のあり方など、大きな課題が残ることでしょう。また、円高に拍車がかかったことで、原油の高騰に対する価格安定の面で見ると、やや安心できる材料になったのではないかと思います。輸出産業界はまた大変な状況になってしまいますが、そこは、是非ともクローズアップしないで欲しいと願っています。
    それより、バラマキ政策のお金が、復興支援に向けられ、公共投資、民間の内需拡大に一役買っていただければ、若者の就職難騒ぎ、ひいては不況の脱出へと繋がっていくのではないかと思ってというよりも、期待をしたいと思います。
    被災された方々には心よりお悔やみ申し上げます。残された我々は、犠牲になってしまった方々の無念を、復興そして、更なる飛躍・改善へとつなげることで、その犠牲を無駄にはしないことが出来るのではないかと思っています。

  2. 上のコメントでは「犠牲を無駄にしない」という武士的思想が飛び交っておりますが
    武士というのはその「犠牲」の内容から歴史まで知っているので
    それを背負い活かしていくことができたと思います

    しかし日本の報道規制により報道は
    死者が何人とか「数」とか
    被害総額の「数」ばかりで
    死体を報道することはしていません(できません)

    タイムズのロイター通信社の写真には死体があります
    日本人は「気持ち悪い」というかもしれませんね
    臨済宗の一休和尚が嘆くように
    いつのまにか「土葬」から「火葬」にして
    死体をどんどん遠ざけてきた民族ですから

    死体の顔、歴史、人生を知らないで
    どのようにして「犠牲を無駄にしないようにする」のか
    武士的思想をもった山浦さんにお尋ねしてみたいとおもいます

    「地震で1600人が死んだ」なんて情報と
    「今日は13時間も寝ちゃった」という情報とでは
    たいして差は生まれてこないはずです

    その情報に歴史やリアリティを見出して初めて
    その情報が自分にとって有益になってくるはずなのに

    ネットや出版には格言のまとめが多いですが
    その歴史も背景もともにしないと
    なんの重みもない正論になってしまうのではないか

    単なる格言という誰かの発した言葉の情報を得て
    一喜一憂したところで
    その正論を実践するかといわれればしない

    その情報を他人に自慢して
    自分は博識だと陶酔することはできますが
    そんなの無意味な滑稽であると思います

    北尾さんは中国古典に精通しているみたいなので
    「魂魄」という概念を知っているでしょう

    武士的な魂は残っているのに
    武士的な魄が残っていない
    この二元が両立しない限り
    王陽明のいう「良知」というのは生まれない

    ルネサンス芸術における「ヴァニタス」も
    このような空虚から生まれたものなのでしょうか

  3. 私は、誰かに自分の考えを強制しようとか、自分の考えに共感して貰おうなどという気持ちなどさらさらありません。人がどのように思い、どのように受けるか人それぞれです。だから、私の発言に対してそう思われたらそれはそれでお好きなように。

    ただ、武士的発想って何ぞや?私の根底にあるのは神道であり、それぞれの人生における本来の役割です。

    以上、答えのない議論は嫌いです。未来は明るく楽しく元気にをモットーとしていますので・・・・・。

  4. 皆さま☆どうもありがとうございましたm(__)m
    疲れました(-_-#)
    280年分の想いを受け止めました(T_T)
    重いよ~
    (T_T)



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