北尾吉孝日記

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一昨日のブログ『福島原発事故は天災か人災か』という問題に対してもそうであったように、「今時分にそんなことをいうのは不謹慎だ!」というような風潮が今日本には蔓延しており、何かにつけて問題視する人も多くいるような状況です。
ところが昨日の「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」の「ドイツ、原発7基を一時停止へ-仏は原発の安全性点検を実施」と題した記事にあるように、遠く離れた日本という国で起こった出来事に対して、ドイツは1980年までに建設された『国内の旧型7基の原子力発電所の稼働を3カ月間の「安全点検」期間中、一時停止』し、またフランスについては「国内の各原発について安全点検を実施」しているというわけです。
日本は2007年に起こった「新潟県中越沖地震」により柏崎刈羽原発が被災した時、独仏のような徹底した対応がなされていたのかについて今一度考えてみるべきであり、有事を経験しながらもそれに関し克明に調べ上げその教訓を生かして行くことが出来ない国では、今回のように何度も同じ様なリスクに晒されてしまうということになるわけです。
また米国について言いますと、「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」の記事にあるように「1979年にペンシルベニア州スリーマイル島で起きた原発事故で、米国の原発業界は凍結状態」となり、「新たな施設の許可は30年間認められなかった」わけですが、オバマ大統領は「2012会計年度予算として原子力発電所の建設資金に対する360億ドル(約2兆9400億円)の融資保証を提案」し、「原子力の研究や近代的な原子炉設計に数億ドルを投じるよう訴えて」います(※1)。
一昨日のブログ『福島原発事故は天災か人災か』でも述べたように、今回福島県で問題となっている原発は40年も前に作られたものだそうですが、40年前の基本設計と今とでは当然違うはずであります。
上述したように米国などでもより安全性の高いものに全て見直して行く方向性を示しているわけで、日本も旧型の原発を全て見直し、その近代化を推し進めるのは当たり前のことだと思います。
このようなことを考慮するならば、被災地に対する救済活動と同時に「なぜ今回このような原発事故が起こったのか」ということを徹底的に究明して行く必要性があるのは明らかではないでしょうか。
今日本ではあらゆる所で群発地震が起こっており、例えば一昨日も静岡で地震が起こった際、浜岡原子力発電所の異常に関して報道されていましたが、日本には稼働中の原発が未だに沢山あるわけです。
他所の国では正に「他山の石」として今回の教訓を生かそうと動いているにも拘らず、日本の対応は兎に角遅く、これからまた他の原発地域で地震が起こったらどうするのかということを私は問いたいのです。
私が「原発を全て停止すべきだ」と言えば、勿論それに対し反論する人もいるわけですが、その人達は15日に公表された国際エネルギー機関(IEA)による下記試算をどう考えているのでしょうか。

『停止した原発11基の発電量は合わせて約9.7ギガワット。IEAが15日公表した石油市場月報によれば、日本には原発停止による不足分を補うのに十分な石油火力発電能力があり、2009年の稼働率はわずか30%だったとしている。
IEAはまた、天然ガスを燃料とする火力発電も原発停止による発電不足を補う可能性があると指摘。日本のガス火力発電所の稼働率は現在55%にとどまっているという。』(※2)

今週月曜日から始められた計画停電について言えば、東京電力株式会社は「4月いっぱいになる」との見通しを示していますが(※3)、4月という根拠がどこにあるのかと私には不思議で仕方がありません。
原子力発電に代わるものとして、例えば上述したような火力発電であったり(※4)、あるいは上記ブログでも指摘した水力発電であったり(※5)、あるいは何か新しい発電システムといったものが4月以降確実に供給されることが判明しない限りにおいて、「4月いっぱい」というのはずっとクエッションマークであるわけです。

4月という具体的時期を明言している位ですから既に確定的な何かが関係者間では決まっているのかもしれませんが、そうであればそのこと大々的に宣伝すべきではないでしょうか。
私は昨今のニュースを聞いていて、常々上記部分が抜け落ちているように思っていましたが皆さんはそのようには感じませんでしたか?
これから夏に向かい昨年のような酷暑にまたなってくるとすれば、エアコン等により電力需要がピークを迎えるのは間違いないわけで、それにどう対応して行くつもりなのでしょうか。
IEAの言うように「日本は原子力発電の不足分を補うだけの十分な石油火力発電による余剰能力を有している」のであれば(※6)、なぜ日本は火力発電に直ぐに切り替えるということを実行に移さないのか、そしてなぜ国民に対してその事実を公表しないのか私には理解が出来ないのです。
今後も根拠不明確な計画停電を続けて行くことに一体何の意味があるのかと疑念は耐えないわけで、まずは「4月いっぱい」という根拠を明確に示して欲しいと強く思っています。
また一昨日に出された経済同友会の「東日本巨大地震への対応に関する緊急提言」では計画停電の代替として電力の総量規制が打ち出されたようですが(※7)、私はそのようにしたとしても本質的な解決には繋がらないと思っています。
やはりまずは電力を作るというのが最重要であり、上記IEAの試算の是非を確りと検証し、真実を国民に示すべきでしょう。
2007年の「柏崎刈羽原発事故」、そして今回の「福島原発事故」を含め、これまでの原子力政策の失政により日本では最早原子力発電に対する国民的コンセンサスが当面得られないのは明らかなわけで、現在私たちが使う電気の約30%を供給する原子力発電の代替として水力発電、風力発電、火力発電を再び活用して行かねばならないのです(※8)。
仮にこれまでのように原子力発電を推進して行くということであれば、この40年間に進んだ技術を全て導入するのは勿論のこと、更には10年毎の安全性点検というレベルではなく、自動車を買い換えるのと同じ様なものですから当該分野での技術革新を適時導入すべく全て入れ替えて行くという位のことをしたらどうかと私は一昨日から提案しているわけです。

私は原子力政策の専門家ではありませんので余り迂闊なことも言えないわけですが、上述したような素朴な疑問は他にも持っています。
例えば「なぜ日本は地震が多発する地域にばかり原子力発電所を作っているのか」や「なぜ地震大国日本は津波にやられる可能性の高い海岸沿いばかりに原子力発電所を作っているのか」といったことで、尤もらしい理由を述べる人も沢山いますが私の納得が行くような説明は聞いたことがありません。

地震ということを考えた場合、海岸沿いに作れば当然津波に襲われてしまいますし、更に言うと例えば葛西辺りというのは今回液状化により水がブクブクしている状況であると聞きました。そのような埋立地に原子力発電所を作るとすれば、地震、津波、液状化現象による甚大な被害を受けることになりかねないわけです(※9)。
そのような意味で私は原子力発電所建設において最も適した所は地盤の固い山であると考えています。
なぜならあの「阪神・淡路大震災」の際、神戸市の私の実家は山の方にあったことから大ダメージを受けなかったわけですが、その一方で下を見ると街が焼け野原になったというのを経験しているからです。
従って、「なぜ日本は地盤の固い山に原子力発電所を作らないのか」や「山に原子力発電所を作ることに何か問題でもあるのか」というような素朴な疑問が沸いてくるというわけです。もちろん、海水が冷却のために必要だという議論はわかりますが、山間のダムの近辺ならどうでしょうか。

以上、長々と述べてきましたが、私の解せない素朴な疑問も一因となっているのかどうかは分かりませんが、過去の教訓を生かすことが出来ない日本では現に何度も原子力絡みの大事故が起こっています。
これは大罪と言うべきものであり、これまでの日本の原子力政策における責任が一体どこにあるのかについては早急に明らかにすべきことではないかと私は強く思います。
それが原子力安全・保安院にあるのか、原子力安全基盤機構にあるのか、原子力安全委員会にあるのかといったことは私には良く分かりませんが(※10)、2度と今回のような悲惨な事態を招かないためにも原子力政策の在り方を徹底的に見直さなければならいと今正に考えているところです。

関連記事
亜熱帯化する日本と北海道の可能性
福島原発事故は天災か人災か

参考
※1:米原発業界、日本の事故による影響を懸念
※2:日本の石油消費量、停止原発代替なら日量約20万バレル増-IEA
※3:計画停電「4月いっぱい」 東電見通し
※4:政府、電力確保急ぐ 火力発電の能力増強など柱
※5:水力発電の規制緩和 国交省、発電能力を強化
※6:日本、原子力発電不足分補う石油火力発電の余剰ある=IEA
※7:同友会「電力の総量規制を」 計画停電代替で提言
※8:発電設備と発電電力量
※9:上関原発埋め立て「推移見守る」 町長、議会で答弁
※10:原子力安全・保安院とは?





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  1. 私も不思議に思っていました。なぜ4月なのか。メルケル首相の素早い反応にも日本政府にはないなと感じました。火力発電の余力があることは初めて知りましたが。日本は火山の多い国ですから地熱等の選択肢を持っています。コストの問題にも真剣に取り組むべきではないでしょうか。

  2. エネルギー事情に詳しい友人に聞いた話です。余力はあっても火力発電はスイッチをいれたらすぐ発電できるというものではないそう。相当量の石油の確保が必要、かつ発電できる状態になるまでに時間がかかるとのことです。また、計画停電はもちろん本質的な解決ではありませんが、蓄電できないため、その日の電気の供給量が必要量に満たない場合は計画停電もやむをえないとのこと。それほど緊急事態であるということです。短期的には原子力を火力などで代替して供給量を回復することが急務ですが、原子力のリスク・化石燃料の有限性を考えると、長期的には電力消費自体のダウンサイジングを本気で考えていく必要があるのではないでしょうか。

  3. この度は色々とありがとうございました。最近はやっと冷静に物事を分別出来るようになりました。しかし今日「儀」より「考」が勝る現実を知り突然職場を離職してしまいました。後悔はしておりません。こんな些細な事よりも今現在与えられた「大義」にどう報いるのかが!今の私に与えらた「挑戦」の本当の意味だと思います。3月21日にとある集落へ「お彼岸参り」に行ってまいりました。その際にも85歳の老婆から色々な事を教わりました。私は身の丈169.5cmですが調子に乗ると物凄い事をやらかしてしまう癖が有ります。それが私の父が話す「トカチ」です。(「トカチ」とは一升マスの盛り上がった「小豆」「米」をすり切る事を言うそうです。)父親は私が何やらおかしな行動をしている事に気づき「トカチを掛けられるなよ」と言われた所以です。「身の程を知る」難しい事です。しかし私は元来臆病でとても「器」が小さいのです。そんな私が出来る最大の事。11日の時点で有る程度の被害状況は想像がつきましたが、まさかこれ程までにはと「危機管理の重要性」を切実に感じます。脇の甘さが感じ取れます。私も「しっかりと脇を締めて」考えます。 小島 文博

  4. 個人的に原子力発電を否定したいが、環境問題・エネルギー問題を考えたときには、今後さらに原子力発電に依存する比率を上げるしかないと考えています。石油やガスなどの化石燃料を使用すれば、大気中の炭酸ガス濃度が上がり、温暖化を加速します。ノーベル平和賞受賞者 アル・ゴア元米副大統領の「不都合な真実」を持ち出すまでもなく、温暖化防止は待ったなしです。
    短期的には化石燃料に依存しなければならないとしても、可能な限り早く既存原子力発電設備の安全性を確認強化し、安心して受入れられるようにすべきと考えます。
    広範な放射能被害をだしてはいますが、誰もが想定外とする地震・津波の大災害でも、古い不十分な安全性レベルといわれる福島原発が、チェルノブイリのような壊滅的な状況を起こさない頑健さにも注目しています。早く炉心冷却が動くようになることを願っています。福島原発現場で命がけで作業している東京電力と原発メーカ(東芝・日立)の方々に深い感謝と尊敬をささげます。

  5. 今回の福島第一原発のことを考えていて、それだけを見ていると確かに原発はもう懲り懲りだというような考えに陥ってしまうのですが、少し冷静になって見てみるといろいろと大切なことがあることが分かるように思います。 たとえば直ぐ近くの福島第二原発のこと。 そして福島第一原発がこの大きな地震の中で、完全に自動的に停止したという事実(これが事実かどうか、私は知る方法がありませんが、問題を引き起こしたのは10メートルを超える津波だというのが本当だとして。)

    ここにはものすごく豊富なノウハウがあります。 つまり、非常に大きな地震にも対応できる技術、津波の被害から予備電源とポンプを守ることが出来れば原発は完全停止できていたであろうこと。 実際に福島第二原発の自動停止がどのような過程を踏んだのかを調べることによって分かることが多いでしょう。この地域でその他にもいくつかの原発が無事にこの災害を乗り越えているのであればそれも大いに参考になることでしょう。

    もちろん放射性物質、そしてその使用済みとなった放射線を発する燃料廃棄物の問題は「臭いものに蓋」では済まされない大きな問題ですし、地震津波だけが自然災害ではないことを思うと、すべて解決とはいえないのも事実ですね。たとえば空から隕石が落下した、小惑星が衝突したなど、心配することならいくらでもあります。それこそ自然災害だけでなく飛行機の墜落やテロだってありえますものね。

    今アメリカではニューヨークの50Km 圏にある原発の問題が議論され始めました。当然でしょう。日本でも「すべて否定」から始まる議論ではなく、今回の天災に端を発した原発災害から学ぶべきことをしっかり学ぶことが必要だと思います。そしてそれを「タブー視」しないで、しっかりオープンに議論しあう環境をつくりましょう。



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