北尾吉孝日記

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先月26日の日本経済新聞に「補正財源、赤字国債も視野 政府、震災復興へ検討 歳出・歳入見直し徹底、来月に第1次予算編成」と題された記事があり、その中で下記のように述べられています(※1)。

「1995年の阪神・淡路大震災は建物や社会インフラなどの被害額が10兆円規模に上り、復旧・復興のため3度の補正予算を組んだ。震災対策経費は3兆2000億円、円高対策を含む補正の歳出は合計9兆1000億円に達し、国債発行額は9兆円を超えた。
東日本大震災の被害額は内閣府が16兆~25兆円と試算するなど、阪神を大きく上回る見通し。復興まで含めた複数の補正の規模は10兆円に達するとの見方もある。」

結論から言えば、今回の震災関連費用について私は総額で20兆円~30兆円規模に上ると見ています。
上記「震災対策経費」として今回は少なくとも10兆円は出さなければならないでしょうし、更には今後も拡大する蓋然性の高い原子力関連の被害額、あるいは様々な被害補償といったことを全て考慮するとトータルで最高30兆円程度まで掛かるのではないかと思っています。
そのような中で東日本大震災の復興財源として「日銀の国債引き受け」に関する議論が昨今盛んに行われていますが、その実施にあたって考慮すべきことが多々あるのは間違いないでしょう。
本件について日銀の白川方明総裁は「仮に日銀が直接引き受けに踏み込めば、市場に対して誤ったメッセージを送ることになり、国債の安定発行という震災復興の基盤自体に影響を与える」と懸念しているようですが(※2)、現下の非常時においてそのような懸念は全く関係ありません。
やはり最終的には「禁じ手」と言われる日銀の国債引き受けというものがどうしても必要になってくるのではないかと私は考えています。特例法でやればいいのです。
先月15日のブログでも指摘した通り、現在の日本国債というのはその95%程度が日本の銀行システムを中心とした様々な金融機関によって所謂個人金融資産を背景に日本国内で消化されているわけですが、①低下して行く貯蓄率、②電力供給不足による生産能力減や自粛の蔓延による消費減によるGDPの低下、③今回の復興対策に絡む国債増発、④その国債の日銀引き受けということになってくれば、日本国債格付けは更に引き下げられる可能性もあります。
そして、行く行くは外国人に日本国債を買って貰わなければ立行かなくなってくるかもしれないわけで、今後その格付けが更に下がって行くならば、当然ながら外国人は国債購入時に高金利をどんどん要求してくることになり、国債の利払いがどんどん増えて行くことになるのです。
従って、我々はこのような大変際どい状況に直面しているという認識をまずは確りと持たなければなりませんし、今回の復興財源に対する処し方が日本の行く末を決める上で大事なポイントになってくるということを考えるべきでしょう。
その一方で民主党の復旧・復興検討委員会の下に設置された特別立法チームが纏めた「東日本大震災復旧復興対策基本法」原案にも「復興財源として特別法人税や特別消費税などの創設検討が明記」されているように(※3)、今というタイミングで所謂「復興増税」に関する議論までなされていますが、景気の現況を考えれば全くナンセンスであることは明らかです。
このような非常時に復興増税などと称して増税を実施しようとすることに対し、「国民を馬鹿にするのも良い加減にして欲しい!」と私は強い憤りを覚えています。

増税ということで言えば、私は電力料金に対する課税は最も良い方法の一つではないかと思っています。
これは電力料金に対する課税というよりも電力料金の引き上げのことですが、計画停電などという馬鹿げた事をするよりも極めて理に適っているのではないでしょうか。
基本的に全てのモノは需給関係によって価格が決まるわけで、電力供給力が落ちたのであれば電力価格が上がって行くのは当然のことです。
従って、電力料金を引き上げても良いと思いますし、引き上げて良いと言えば自ずと節電するようになってくるのです。
これからも節電目標、計画停電というような愚行を続けるのではなく、今後は同じような効果の実現を経済合理性に委ね一般に任せるべきなのです。
そしてもう片方でエコ減税、特に太陽光発電システム導入に対する優遇措置(補助金・減税等)についても早急に実施しなければなりません。
一般家庭の住居、あるいは高層ビルにおいて徹底的に太陽光発電システムを導入すべきであり、これに関しては半分義務付けるという位のことをすべきではないかと私は思っています。
これまでは屋上の緑化を図るといったことが言われてきましたが、今後は例えばある高さ以上のビル全てについてその屋上に太陽光発電システムを導入しなければならないというような規制を設けるべきでしょう。
また今『政府内では発電部門と送電部門を分離する「発送電分離」に踏み切り、送電部門を東北電力と合併させて「東日本電力」とする案や、ナンバー2の関西電力と統合させて、東西で異なる電力の周波数の統一を進め、長期的な電力の安定供給体制の構築につなげる案などが議論されている』のは皆さんもご承知の通りです(※4)。
これについて私は東電の送電部門を即刻別会社に移管すると共に、関電、中電、九電を含めた全電力会社及び日本政府の出資による新会社を創設し、その事業体において電源周波数の統一を一刻も早く実現すべきであると考えています。

最後に直近の日銀短観について一言だけ述べておきますと、今回は当然のことながら「企業の景気認識が冷え込んでいることが確認」されました(※5)。
しかしながら、あの阪神・淡路大震災時の状況を考えて見れば、「確かに1995年1月の鉱工業生産指数は前月比2.6%低下したものの、翌月には2.2%上昇した」わけです(2011年3月22日日本経済新聞朝刊)。
従って、今回についても鉱工業生産といったものはトータルで直ぐに回復してくるでしょうし、政府による様々な資金的援助、あるいは復興需要等も出てきますので基本的には日本経済のリカバリーは早いと思います。
唯その中で問題として残るのは原子力発電所が今後どうなって行くのかということです。
今東電の電力供給力というのは3950万kWとされており(※6)、その供給力は7月末において4650万kW程度になるものと東電は見込んでいるようですが(※7)、何れにしても現行の在りようでは今夏の大幅な電力不足は免れ得ない状況で(最大電力需要-今夏の東電見込み:約5500kW、過去最高を記録した2001年夏:6430kW、2010年夏:約6000kW、2009年夏:5449kW、2008年夏:6089kW、2007年夏:6147kW)、経済活動の停滞を招くことになってしまうのです(※8)。
従って、先ほども述べたように一刻も早く電力料金を引き上げて自発的な節電を促し、もう一方では太陽光発電システム導入に対する優遇措置(補助金・減税等)を早急に徹底実施すべきです。
そして基準を超える高さのビル全てについて太陽光発電システム導入を義務付けるというような規制を設けるべきだと私は思っています。

関連記事
日本の貯蓄率

参考
※1:補正財源、赤字国債も視野 政府、震災復興へ検討
※2:日銀総裁、復興国債引き受けは「市場に誤ったメッセージ送る」
※3:復興増税で民主迷走=岡田氏、作業チーム案を一蹴
※4:東日本大震災:福島第1原発事故 東電、発電・送電分離案 大手と統合検討--政府
※5:日銀短観:経済下押し、不可避 景況感悪化、生産回復「夏以降」
※6:4月6日(水)以降の計画停電の実施予定等について
※7:今夏の需給見通しと対策について
※8:東電、夏の計画停電は避けられない見通し




 

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