北尾吉孝日記

『東電国有化論の根拠』

2011年4月28日 17:21
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「原子力損害の賠償に関する法律」の第二章・第三条には下記規定が設けられており、「ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。」との但し書きが載せられています。

【原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。】(※1)

要するに電力事業者の過失の有無が損害賠償責任帰属の決定要因になりますので、今回の問題が過失かどうかというのをこれから徹底究明して行かなければならないということです。
今回の事態に関して菅首相並びに枝野官房長官は口を開けば“想定外”と言いますが、一体如何なることを想定外と言うのでしょうか。
例えば想定外の高い津波によって原発の電源喪失の事態が発生したというわけですが、本当にそれは想定外の事態なのでしょうか。
今回の津波というのは1896年の明治三陸地震津波とほぼ同規模であったというように見られており、115年前の事態と殆ど同じであることを想定外などというように言える根拠はどこにあるのかというわけです。
地震のエネルギーの蓄積というのは大体80年から100年位の間に出てくる可能性があると捉えなくてはならず、1923年9月に起こった関東大震災から見るとそろそろエネルギーが溜まっているのではないかということで東京でも大地震が心配されているのです。
それ故上述した意味で言えば、私は想定外である事自体が過失であると思っており、今回の事態は想定外とは言えないものだと考えています。
従って、東京電力株式会社(以下、東電)の過失というのは当然問われるべきだと私は捉えており、仮に過失ということであれば、損害賠償責任はまず東電が負わなければなりませんし、当然ながら民間企業として破綻するという所まで基本的にはあらゆる事柄に対する補償を行わなければなりません。
東電は現在の純資産、そして原子力損害賠償責任保険契約及び原子力損害賠償補償契約を全て活用して凡そ4兆円位までは補償出来ると言われていますが、4兆円を超える部分については国が払わざるを得ません。
それ故以前から述べているように東電は一時国有化すべきだと私は思っており、国有化せずに中途半端な対処をすれば、今度は日本の司法が問われることになると見ています。
そしてまた想定外ということで国税を直ちに投入することにでもなれば、司法に訴える人も結構出てくるでしょうから、その訴訟に起因する様々な問題が生じる可能性もあると考えています。
上述した通り4兆円を上回ることは確実で恐らく10兆円以上になると思われることから、東電の一時国有化は不可避であると私は捉えており、そしてまたそうするのが最も筋の通ったことではないかと思うのです。
前回の『野党の民主党批判は御門違いな面も』と題したブログでも一時国有化すべき理由の一つとして「民主党政権下で極めて透明性の高い形でしかも外部から委員や役員等を送り込み雁字搦めにする中で新たなる企業に再生すべきだという考え」があるというように述べましたが、政官財及びマスコミといったものの癒着構造を叩き潰すべく推し進めて行かねばなりません。
そして更にはIT技術を使って電力を効率的に供給する次世代送電網「スマートグリッド」を活用した電力供給体制を日本全体に整備し、明治時代から続いている周波数の違い(50ヘルツ/60ヘルツ)などという馬鹿げたものを日本から一掃すべきです。

次に少し余談になりますが最近経済産業省は『9電力が共同出資し、「原子力賠償補償機構(あるいは基金)」と呼ぶべき東電へ資金を供給する枠組みを創設』するというような一方的な構想を展開しているようですが(※2)、ご存知の通りこれらは全てパブリックカンパニー、公開企業です。
公開企業に対して政府が「あれをしなさい」,「これをしなさい」という権利は全く無いわけで、如何に公益性の強い事業を運営していても公開企業は株主のものであるということを忘れてはなりません。
従って、上記出資が半強制的に行われるならば、各企業において株主代表訴訟の問題にもなり得るでしょう。
また東電のように独占的利潤を上げていた企業の株主に長期間なっていれば、非常に高額な配当を継続的に受けることが出来ていたわけで、今回のような問題を起こし破綻したのであれば、株主も当然その責任を負わねばなりません。
それについては債券保有者も同じであって、公開企業の倒産という状況の中でその責任を負うというのは当たり前ではないかと私は考えています。

最後に『東日本大震災からの復興ビジョンを策定する政府の「復興構想会議」(議長・五百旗頭真(いおきべまこと)防衛大学校長)』について一言申し上げておきます(※3)。
上述した議長の五百旗頭という人は碌々議論も行っていない段階で『「全国民的な支援と負担が不可欠」として「震災復興税」の創設を提唱』しましたが(※3)、今のタイミングで税率を上げれば経済復興に対してマイナスの効果しかないことを彼は理解出来ていないのでしょうか。
復興構想会議の議長がどれ程の人物かは存じ上げていませんが、少なくとも経済というものを何も分かっていない人であるということだけは確かです。
更に言うならば、議論をする前から結論を述べるなど以ての外だと思いますし、何でも彼んでも税金を使うというのは許し難いことです。
このような愚人を議長として選出したのは、これまた菅首相であり、その任命責任というのは極めて重いと言えましょう。
菅首相の責任問題ということで言えば、皆さんもご存知の通り他にも多々ありますが、その一つに「最悪の事態となったとき東日本はつぶれる」「(福島第1原発周辺は)10年、20年住めないのかということになる」というような信じ難いナンセンスな発言を連発していることが挙げられます(※4)。
「歩く風評被害」とまで評される菅首相は上述したような様々な責任問題をどのように認識しており、一体何時まで首相の座に留まるつもりなのか、私には理解不能という他ありません。

関連記事
福島原発事故に対する政府・東電の責任

参考
※1:原子力損害の賠償に関する法律
※2:“被災者救済策”の政府原案判明 「9電力共同出資機構」で調整
※3:東日本大震災:復興税を提案 復興構想会議の五百旗頭議長
※4:「東日本つぶれる」「20年住めない」…首相は「歩く風評被害」





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  1. わが国の土地バブルが破裂した後に、今回同様、常識派の先生方が金融機関いじめに明け暮れ、税金の強制注入に遅れた結果が失われた20年だったのではないでしょうか?金融という公器を痛めつければ自らの懐具合も貧しくなることに気づかずです。今回の東電いじめも似たような結果をもたらすものと思います。東電という産業のインフラを支える企業を何兆円もの賠償漬けにすれば、少なくとも関東、東北の産業の行く末は悲しいものとなるように思います。東電の経営陣をこっぴどく痛めつけることには賛成しますが、産業インフラを弱体化させるのは反対します。SBIはなくなっても別の会社が幾らでも代替してくれますが、東電は慎重に扱うべきと思います。
    五百旗頭真氏の発言については北尾さんと同意見です。官僚のロボットになっているような気がします。

  2. 公開会社は株主のものと一方でいっておきながら、一時国有化を主張なさるのはどういうつもりでしょうか?
    国有化した場合そこで使われる費用は税金からの支出になりますよね。仮に北尾さんの思いついた補償金の金額が10兆円だとしたら、東京電力を国有化した場合、増税は不可避なのではないでしょうか。これは震災復興税とは違い、経済にマイナスとならない増税なのでしょうか。
    補償額もわからないなかで、なんか10兆円くらいで東京電力は債務超過になりそうだから、まず国有化しようというのは筋が変です。国有化は最後の手段にすべきで、なぜ最初に用いるべきだと考えるのかよくわかりません。
    低い価格ながらも売買が成立しているところからいって、マーケットは北尾さんたちの考えに否定的なようですね。

  3. [...] ルトダウンでお騒がせ中の東京電力についても北尾 吉孝(SBIホールディングス株式会社代表取締役執行役員CEO)氏の寄稿している内容ですかっとして欲しい。- 『東電国有化論の根拠』- [...]



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