北尾吉孝日記

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先月26日の「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」に「【コラム】IMF、アメリカ時代の終わりを2016年と予想」と題された記事があり、その中で下記のように述べられています。

「2週間前に公表されたIMFの公式見通しによると、中国の経済は、実質ベースで2016年――今からわずか5年後に米国を追い抜く。(中略)
各方面の専門家の話を聞いても、それは数十年先の話だと言われるだろう。最も弱気な向きでさえ、2020年代半ばと予想するだろう。
しかし、彼らの予想は誤っている。彼らは、米国と中国の国内総生産(GDP)を、現行の為替レートを使って比べているだけだ。(中略)
IMFの分析は、為替に基づく比較に加え、購買力平価(Purchasing Power Parities)を使い、経済の実態に目を向けたものだ。
購買力平価に基づくと、中国のGDPは、今年の11兆2000億ドルから2016年に19兆ドルに拡大する。一方、米GDPは、15兆2000億ドルから18兆8000億ドルに拡大する。この時点で、世界のGDPに占める米国のシェアは17.7%と、近年で最も低くなる。中国のシェアは18%に達し、さらに拡大を続ける。
わずか10年前、米国のGDPは中国の3倍だった。」

2010年通年のGDPで日本を抜き去った中国が今度は「2016年――今からわずか5年後に米国を追い抜く」というわけですが、ドルの価値が大幅に減価して行く中、2015年にはその兆候が確実に見えてくるのではないかと私は考えています。
また何ベースでGDPを表現するのかというのは大事な観点の一つであり、仮に歴史的最高値を更新し続けている金で表現する場合(※1)、米国のGDPが大きく下がるのは分かりやすい例として挙げられましょう。

唯、これまでも本ブログで指摘してきた通り、中国にも様々なボトルネックはあります。
第一に挙げられるのは、昨年12月に『アジア各国の金融経済情勢~中国、インドネシア、ベトナム~』と題したブログでも触れたように、為替管理の撤廃や金利の自由化といった共産主義的発想からの脱却を実施しないことによるインフレの進行です。
次に今正に十分な取り組みが求められているのは国民全般に亘る学校教育や社会保障といったものの格差是正であり、こうした是正がなければ実質的格差は拡大して行くことになるでしょう。
それから中国国家統計局により先月28日に発表された2010年の国勢調査結果を見ても明らかなように、三つ目として高齢化の急速な進行が挙げられます(参考:「80年代初めに5%以下だった65歳以上の人口比率は1割に迫る。2050年には3割に近づき、現在2割強の日本を上回る高齢化社会が訪れるとの見方もある」-※2)。
上述したような問題に対して中国はやはり確りと準備をし、適切に対処をして行くということがなければ大問題になり得るわけで、すべきことをしないことから生ずるボトルネックとして注視して行かなければならないと私は見ています。
上記文脈で更に言うならば、今年2月に『中国の今後最大の課題』と題したブログで下記述べた通り、現存する社会格差を如何に減じて行くのかという中で問題になるのは「農村部の都市化」であると思われます。

【所謂農村人口というものを捉えるべく総人口に対する都市人口の割合というのを見ますと、1900年当時中国では大体25%であったと言われています。
それが今や凡そ45%となり、そしてこの新しい都市化に向けた革命を終える2030年には恐らく70%を超えてくるであろうと推測されています。
現在、中国の都市部と農村部の所得格差は3.5倍以上あると言われていますが、この都市化を押し進めることによって格差を無くし、そして社会不安に繋がるリスクというものを大幅に減少させることこそが中国の今後最大のテーマであると私は考えています。】

唯、その都市化政策推進に当たっては莫大な量の様々な資源が必要になるわけで、上述したブログの下記引用にもあるように、資源の制約というものが大きなボトルネックになってくると私は考えています。

【今でも鉄鉱石や亜鉛、銅や鉛、あるいはアルミといったものについて世界総需要の4分の1程度を中国が占めると言われていますが、今後推し進められる都市化政策によってこれが更に増えてくることが当然ながら予想され、資源価格の高騰がこの方針を推進するための非常に大きなボトルネックとなってくるでしょう。
それに加えて今は規模の大きい国々が世界中で正に同時的に経済のTake Offを迎え高度成長を遂げて行っており、BRICsのみならずVISTAやアフリカ諸国においてもそろそろTake Offして行くような状況にまでなってくるわけですから、その意味でも上述の問題はより深刻なものとなる可能性があるように思われます。】

また2050年には石油資源が枯渇するとも言われていますが、未だ石炭主流の中国が石油主流に移行する中で膨大な石油需要が発生する時、一体どうなるのかについても考えなくてはなりません。
同じ様に、確保が難しくなってきている水資源とどう向き合って行くのか、あるいはシビアな状況になってきている公害問題にどう対処して行くのか等々、中国は様々なボトルネックを沢山抱えているのです。
このような困難な状況下、米国を追い抜くとされる2016年までに中国がそれだけの経済成長を実現出来るのかは、上述したような色々なボトルネックの行方如何に掛かっているというように私は見ています。

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中国の今後最大の課題

参考
※1:NY金、最高値更新 NY株は2年11カ月ぶり高値
※2:中国で少子高齢化進む 労働人口「15年から減少も」





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  1. いつもありがとうございます。



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