北尾吉孝日記

『偉大な中華民族の復興』

2011年5月9日 10:06
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先月私は清華大学百周年記念式典に出席してきましたが、その記念式典では非常に印象深い数多くの言葉に触れることが出来ました。
その一つに胡錦濤氏が何度も使っていた「中華民族の偉大なる復興」という言葉があります。
この趣旨が何かと言えば、20世紀の僅か一局面を除き、その他の世紀の殆どは中国という国が世界の中心であって、正に中華という真中に咲く華であったというものです。
そして世界で最も経済力、軍事力を有した国であったわけですが、20世紀においてのみそのような国ではなかったということです。
ところが21世紀、世は正にアジアの時代というようになり、またその中で圧倒的な覇権を目指しているのが中国という国です。こうした意味で「偉大なる復興」なのです。
また、私が参加したパネルディスカッションに登場していたパネラーの一人、清華大学国際関係研究所所長の閻学通氏が次のような印象深い発言をしていましたので下記ご紹介します。

彼が言われるには、「80年代・90年代の日中関係と現代のそれを比べて見ますと、80年代の方が良好であった。90年代から21世紀に入り日中関係というのは様々な側面において大分ぎくしゃくし始めた。」
これについては例えば『「尖閣問題」にどう対処すべきか』や『「尖閣映像流出」について』等で指摘したような領土問題といったものも勿論ありますが、より基本的な問題というのは日中間の補完関係にあるというのです。
つまり80年代には日中間の強い補完関係がありましたが、90年代から21世紀に入りその補完関係が段々薄らいできたということが、そもそもの根本要因であるというように閻さんは述べていました。

上記に関して私の見解を述べますと、彼の考え方は正鵠を射ていると思っており、日中経済の補完関係の度合い、即ち中国の日本に対する依存度というのはどんどん薄らいで行っているというように認識しています。
日中貿易を例に見れば、その輸出入額は、80年代:2.1倍(輸出1.7倍、輸入2.6倍)、90年代:3.6倍(輸出3.8倍、輸入3.6倍)、2000年以降:3.5倍(輸出4.9倍、輸入2.8倍)と拡大を続けており(※1)、直近(2010年)では対前年比30.0%(輸出36.0%、輸入24.7%)と大幅に増加しています(※2)。
唯、両国間の貿易比重を見ますと、80年代・90年代については下記引用にある通り、また21世紀以降については下記a~dにあるように日本と中国では対照的に推移しているわけです。

~80年代・90年代~
「日本の貿易に占める中国の比重は高まり、80年の3.5%から01年に11.8%にまで高まっている(1位の米国は01年で24.5%)。なかでも輸入の比重は80年の3.1%から01年の16.5%へと大幅に高まった。このため、日本の貿易相手国に占める中国の順位は、90年代に入って急上昇し、01年には2位(輸出2位、輸入2位)となっている。(中略)
他方で中国の貿易に占める対日貿易の比重は78年に23.4%で、日本は第1位であったが、80年代に後退し、80年代後半には香港と首位が入れ替わった。中国の原産地規則の改定という要因もあって92年以降、日本の地位は再び上昇に転じた。01年では17.2%(対日輸入17.6%、対日輸出16.9%)となっている。貿易相手国としての順位も93年から輸出入額では再び日本が1位となっている。」(※3)

~21世紀以降~
a.輸出総額に占める対中輸出の割合:2001年7.7%→2010年19.4%・・・11.7%増(※4)
b.輸入総額に占める対中輸入の割合:2001年16.6%→2010年22.1%・・・5.5%増(※4)
c.輸出総額に占める対日輸出の割合:2001年16.9%→2010年7.7%・・・9.2%減(※3・※5)
d.輸入総額に占める対日輸入の割合:2001年17.6%→2010年12.7%・・・4.9%減(※3・※5)

上述した日中貿易の各年代における状況から言えることは、両国の国際貿易全体に占める日中貿易のウェートは夫々確かに大きいが、日本とは違い中国はより大きなウェートを他国ともどんどん占め始めているということです。
そのような状況下、中国の日本に対する依存度というのは今後どんどん低下して行くと私は見ており、それこそが日中関係を規定する根本要因であるという閻さんの主張は全くその通りであると思います。
中国は正にこのアジア圏全てにおける覇権を目指しているというようにしか私には思えません。

では、上述したような局面の中で日本はどうかと言えば、相も変らず愚かな指導者が一国の舵取りを担い続け、そしてまた旧態依然とした政官財及びマスコミの癒着構造といった悪弊を未だに断ち切ることが出来ず、何一つ前を向いて進めることが出来ないという状況です。
例えば2011年度税制改正法案に盛られ漸く前に進み出した法人減税について、菅首相は野党からの撤回要求に対し「しっかりとその方向で検討したい」と応じてみたり(※6)、あるいは「東日本大震災の復興に必要な財源を確保するため、(中略)所得税や消費税、法人税などの臨時増税案」が出てくるという始末で(※7)、全くと言って良いほど政策に整合性がありません。
また先月も本ブログで下記の通り述べましたが、TPP問題については今回震災が起こったからといって決して判断を先送りすべきものではなく、日本全体として力強く推進して行かなければならない事項であるわけで、どうして政府関係者にはそのことが未だに理解出来ないのかと訝しく思います。

【今回の大災害によって昨今日本は大変厳しい状況にありますが、併せて国を開くということに関しても積極的に進めて行くべきであり、日本が21世紀を生き抜く上での必須事項であると考えています。
従って、TPP問題については早急に前進させるべきと捉えており、これこそがグローバリズムの世界の中で日本が生き残る唯一の方法であるというように私は思っています。】

【関連記事】
「東北地方太平洋沖地震」の経済的影響

参考
※1:日中貿易額の推移(通関実績)
※2:JETRO 貿易統計データベース
※3:季刊 国際貿易と投資 Autumn 2002 / No.49 様変わりする日中貿易
※4:財務省貿易統計
※5:2011年3月14日 日経速報ニュース
※6:菅首相、仮設入居「盆までに必ず」=法人減税の撤回検討-1次補正、2日成立
※7:「復興税」財源どこに 数兆~10兆円規模





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  1. ブログの記事から引用します。
    習近平は、よく「中華民族の復興」と言うが、それを言うなら国民を幸せにしろ。民主化運動を弾圧して何が中華民族の復興か。人権、格差、環境など国内に問題が山積している。国内問題に専念しろ。

    「中華民族の復興」はウソっぱち。本音は「中華帝国の復興」。



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