北尾吉孝日記

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「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」にも「ビンラディン容疑者死亡」というトピックスがありますが、本件を皆さんはどう受け止められたでしょうか。本件がイスラム原理主義テロリズムというものを終わらせる一つの契機になれば良いというように私は思っています。
その一方で早速アルカイダは『米国人の「喜びは悲しみに変わるだろう」として、報復を警告』しているわけですから(※1)、今回の出来事が変な方向に行かなければと案じている部分も勿論あります。
唯、今私が上述したことよりも懸念しているのは、本ブログで幾度か述べているように中東民主化の動きの中で起こってきている様々な事柄です。
例えば、エジプトという国がイスラム原理主義的な動きを本当に取ることは無いのでしょうか。
これに関しては「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」の「エジプト新政権がイラン、シリアに接近」と題された記事等にもあるように、昨今のエジプトの動きを見ていますと何かそのような感じではなくなってきており、嘗ての中東戦争勃発時のエジプトを彷彿させるような動きが出てきているというように私は見ています。
一例を挙げますと上記『激変する世界情勢とSBIグループの在り方』と題したブログでも指摘したように、ムバラク氏が権力の座から引き摺り下ろされたことでエジプト管理下のスエズ運河をイラン軍の艦艇が通過するようになっているわけですが(※2)、このことはイランとイスラエルとの戦争が勃発するかもしれないということを意味しており、そのようなことが寧ろ私には懸念されるのです。
また、サウジアラビアでも民主化の動きが始まり、政府は約11兆円という莫大な金をばら撒いて事態の収拾に動いていますが(※3)、金をばら撒けばそうした動きが収まるのかというと今のところその気配は無いようです。
そして、先月7日のブログでも指摘したように、リビアでは内戦状態になっており(※4)、そこにフランスや英国を中心とした先進国も絡んで行っているわけです。
また、「潜伏する国際テロ組織アルカイダのメンバーが、政治的危機を利用して新たなテロ攻撃を仕掛けてくること」も懸念されるイエメンの動向についても勿論注視して行かなければならないことは言うまでもありません(※5)。
今年2月の『チュニジア発民主化ドミノの行方』と題したブログで述べましたが、民主化とイスラム原理主義と結び付くような形になってくることにはならないであろうと思っています。なぜなら、抑圧されていたものを抱える民衆は最早我慢出来ない状態だと思われ、より強固なイスラム原理主義的なるものが出てくるようにはならないと思うからです。

唯、誰が先導して現在の民主化の動きというものを作り出して行っているのかというのは非常に気になるところです。
これに関しては、先月21日に株式会社PHP研究所から上梓した拙著『日本人の底力』の第二章「社会の変革を担うのは誰か」から引用して以下述べたいと思います。

【まず、社会の変革者とは誰かを考えるとき、それが「大衆」なのか、「個人」なのかという問題があります。ここで注目したいのがスペインの哲学者であり文明評論家の、ホセ・オルテガ・イ・ガセトが『大衆の叛逆』(一九二九年)の中で語った言葉です。

今日大衆の勝利がもっとも高度に達している諸国家を吟味してみると、驚くべきことに、その国の人々は政治的にはただその日暮らしをしていることが明らかになる。この政治の中では、未来はまったく予知されておらない。(中略)
大衆が社会的権力を直接行使する場合には、権力は古来いつでもこのような性質を帯びてきた。そもそも大衆は目標なく生き、風のまにまに動く人間であるからだ。

現代人はまさに、ほとんどの人がこのような状態になっています。目的なく生き、風のまにまに動く。内閣支持率に対する世論調査でも、非常に数字が上がったかと思ったら、次の調査では大きく落ちる。まさにムードだけで動いていると言ってよいでしょう。その政治家の信念がどうか、政策がどうかなど、本当に考えて投票している人は少なくなっているのではないでしょうか。】

一般大衆というのはある意味風の随に踊らされている部分があり、そしてまたそこで必ずそのようなものを引っ張る輩というのがいるわけです。
中東民主化革命の先導者が民主化という崇高な目的を達成すべく尽力するのであれば良いですが、何を究極の目的として一般大衆を引っ張って行くのか、私は若干の不安感を抱いています。

関連記事
激変する世界情勢とSBIグループの在り方
2012年米仏大統領選挙とエネルギー政策

参考
※1:アルカイダが声明でビンラディン容疑者の死亡を確認
※2:イラン軍艦がスエズ運河を通過 イスラエルは反発
※3:サウジが追加懐柔策 今度は8兆円超
※4:【NewsBrief】カダフィ大佐の軍がミスラタを報復攻撃
※5:【NewsBrief】イエメン反体制派、調停案受け入れを表明




 

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