北尾吉孝日記

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近年の日本国内閣総理大臣の顔ぶれを見ますと、安倍晋三氏、福田康夫氏、麻生太郎氏、鳩山由紀夫氏と入れ代わり立ち代わり総理が代わるという状況ですが、残念ながら政権が代わっても人物ここにあらずという状況でありました。
そして今我々は菅直人氏という日本の歴史上最低とも思える総理を頂くことになっています。
非常時になると人物の評価というのは非常に分かり易いものですが、この人物評価について中国明代の著名な思想家である呂新吾の『呻吟語』の中にどのようにして人物を見つけるのかについて書かれた一節がありますので下記ご紹介します(参考:『人物を得る』)。

【呂新吾が何を述べているのかと言えば、まずは「大事難事に擔當(たんとう)を看る」ということです。
即ち、事が起こればその担当官の問題への対応能力を見るということ、そしてそれに併せて、仮にそのような事において自分自身はどのように処するのかということを常に主体的に考えるということです。
次に述べていることは「逆境順境に襟度を看る」ということ、即ち襟度の「襟」というのは「心」を指しており「度量の深さを見る」ということであります。
世の中というものは良い時が来れば悪い時も必ず来るわけで、万物全て平衡の理に従って動いており、そのような時に襟度を見ると言っています。
更には「臨喜臨怒に涵養を看る」と書いてあり、「臨喜」というのは喜びに臨んだ時に恬淡としているか、「臨怒」というのは怒りに臨んだ時に悠揚としているかというようなところに涵養を見ると述べているわけです。
そして最後に「郡行郡止に識見を看る」ということ、つまりは大勢の人(群行群止)の中で人を見るというように書かれています。
その人が大勢の中で大衆的愚昧を同じようにしているのか、それとも識見ある言動をとっているのかということを見る中で人を見抜いて行くということです。】

今回の大震災を経て彼の人物というものが色々な所で見えたわけですが、率直に申し上げれば一刻も早く日本のために総理の職を辞して貰いたいというように思います。
彼は数多くの弊害を齎してきたわけですが、その一つに総理要請として中部電力株式会社(以下、「中部電力」)が浜岡原子力発電所を全面停止するということが挙げられましょう(※1)。
このようなことが法治国家において許されて良いはずはなく、これからも今回のような総理要請がどんどん出てくるとも限らないわけで、非常に由々しき事態であると私は思っています。
このようなこと程、ある日突然唐突な要請を行うものではなく、きちっとした手続きを踏み、筋を通すべきことであるのはtwitterでも呟いた通りです。
一昨日の臨時取締役会で中部電力は総理要請を受諾したわけですが(※2)、株主総会においては「政府からの要請です」というのでは否決されるかもしれません。
先日呟いた通り、公開会社とはという観点から考えた場合、今回の総理要請は如何なものでしょうか。
既に中部電力の株価は大幅に下落していますが(※3)、一体政府は中部電力の株主に対してどう責任をとるつもりなのでしょうか。
そしてまた株主代表訴訟になった時に、会社側はどう責任をとるつもりなのでしょうか。
そこまで血税で面倒を見るというのであれば、所謂米国のgovernment enterpriseとは違うわけですから、その辺の仕組みを改めなければならないでしょう
このように日本というのは名ばかりの法治国家とも言えるわけで、前原氏が大臣職を辞したのと同じ法律を菅総理自身も犯したにも拘らず、そのままの職責に居座れるという状況は奇怪なことです
『老子』の中に「国家混乱して忠臣あり」という言葉がありますが、この日本の現状の中で一刻も早い忠臣が待たれます。
嘗て英国や米国が国家混乱した時には、正に偉大な人物が指導的立場に就きました。
言うまでもなく、それはサッチャーとレーガンのことを指しています。
この辺りのことについては、野口悠紀雄氏の『経済危機のルーツ モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか』という本にも詳述されていますので、以下引用もする形で述べて行きたいと思います。

マーガレット・サッチャーという人物は、所謂英国でエリートとされるオックスフォード大学やケンブリッジ大学を学部レベルで卒業したわけではありません。
彼女はオックスフォード大学で学んではいますが、それは大学院のことであり、そして専攻も余りエリート扱いされていない当該大学の化学です。
オックスブリッジにおけるエリートかどうかの評価は、学部のしかもどの伝統あるカレッジを卒業したのかということが全てなのです。
そのような意味で彼女は所謂英国の本流を歩いてきた人間ではありませんが、彼女はある意味英国の歴史に残る稀有の政治家であったと思います。
当時の英国というのは国営企業と労働組合に支配され、所謂「英国病」に陥っていた正に大変な環境下にあり、社会に蔓延していた閉塞感の中で「このまま凋落の一途を辿るのか」というように国民の誰もが感じ始めていたような危機的状況でした。
その中で彼女は下記改革を実施したわけですが、以前ブログで述べた通り、彼女は英国病を克服するための希望の星と言われていた2つのこと、つまり①北海油田を成功裏に開拓することで英国経済を支えて行くこと、②国際金融センターとしてシティを徹底的に強化し世界の金融の中心にして行くことの両方を見事にやり遂げ、英国を繁栄に導いて行ったのです。

【サッチャーが行なった改革は、具体的には、国営企業の民営化、規制緩和(特に金融業)、税制における所得再分配機能の緩和(所得税率の累進性緩和、フラット税率の採用)である。抽象的に言えば、「大きな政府」「福祉国家」「ケインズ主義」の見直し、ないしは否定である。】

また、ロナルド・レーガンについてもサッチャーと同じ様なもので、下記のように米国が大変な苦境に陥って、ある意味国家混乱した状況の中で大統領職を務め上げました。

【70年代のアメリカは、経済面でも政治面でも、最悪の時期を経験していた。ベトナム戦争の悲惨な体験はアメリカ人の心に深い傷を残し、人々はその後遺症から脱却できなかった。経済面では、70年代石油ショックによるスタグフレーションに長期間悩まされた。この状況は、80年代になっても変わらなかった。さらに、90年代の初めの不況期まで持ち越された。
この時期、日本はバブルに沸いていた。日本車がアメリカ市場を席巻し、ジャパンマネーがアメリカの不動産を買いあさった。「日本はアメリカを経済的に占領してしまうのではないか」という恐怖を、多くのアメリカ人が現実のものとして感じていた。】

特に80年代の米国というのは、日本の製造業にその地位を奪われたり、あるいはロックフェラーセンター等の米国を象徴するようなものが日本勢に次々と買収されたりと、日本にこてんぱんに負かされるという状況で大変厳しい時代でした。
その中で彼は所謂「サプライサイド・エコノミックス」というものを使いながら、米国の伝統的なケイジアン的なものも否定し、税制についてもサッチャーの税制改革(「所得税における高率累進税制の見直し、フラット税率への移行、法人税を利益課税からキャッシュベース課税に移行させる試み」等)に影響を受けて下記の通り抜本的転換を断行し、そして米国の再活性化を導いて行ったのです。

【所得税では、14段階あった税率を15%、28%の2段階にした。また、諸控除の廃止、縮減によって課税ベースの拡大を図った。企業課税では、税率を引き下げた。加速度償却の縮減・合理化、投資税額控除の廃止等の租税特別措置の縮減を図り、課税ベースを拡大させた。】

ロナルド・レーガンのジョークの一つに『“Mr. Reagan, how could an actor become a president?”(レーガンさん、どうして俳優が大統領になれるのでしょうか?)』との質問に対し、彼が『“How can a president not be an actor?”(「大統領が俳優にならない」なんてことができるでしょうか?)』と答えたというのがありますが、このことからも分かるように彼は非常にウィットに富んだ大統領でした。
そして笑顔を振りまく中で非常に強い信念を持ち、米国を復活へと導いた偉大な人物であったというように私は思っています。

以上、『待望せられる一国の指導者としての人物』と題して述べてきたわけですが、上述した意味でこの2人のような指導者が日本に現れてくることを今正に待望をしています。
今度こそ能力、手腕、人格が欠落した世襲議員の類ではなく、豊かな教養とインターナショナルなセンスを持った、本当に国を引っ張って行くことが出来る人物に指導的立場に就いて欲しいと切に願うものであります。

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日本と中国
英国新政権に対する政策懸念

参考
※1:官邸、極秘協議1か月…法的根拠なく行政指導
※2:中部電:臨時取締役会で浜岡原発停止を決定-菅首相の要請を受諾(2)
※3:中部電力(株)【9502】:株式/株価 – Yahoo!ファイナンス





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  1. 残念ながら、飛び抜けた人材は総理大臣になっていませんね。 歴代の総理は優秀な人材だと思いますが、

    日本の総理大臣という事は、世界の指導者レベルで、トップクラスでないといけません。

    ただ、そういう人材は総理大臣になれないのかもしれません。

     浜岡原発の件は英断だとおもいます。 優先順位は、人間の生命や日本国の存続が一番で、経済やお金は二番です。

    問題は色々とあるでしょうが、お金で解決できるでしょう。 電力会社が強いからなのか、東電の責任は限定的になりそう

    ですし、自然エネルギーへの転換もあまりされないようですね。 浜岡原発に限って言えば、防波堤が出来たら

    再開するといっていますが、そんなお金があるのなら違うことに使うべきです。 原発自体、正常に動いていても

    人体に有害な代物と知りましたし、自分や身内に害が及ぶと思ったら原発に賛成する人はいないと思われます。



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