北尾吉孝日記

『菅内閣を憂う』

2011年5月13日 12:13
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先月28日のブログ『東電国有化論の根拠』でも指摘した通り、『東日本大震災からの復興ビジョンを策定する政府の「復興構想会議」』議長の五百旗頭という人のように(※1)、「全国民的な支援と負担が不可欠」などとして直ぐに税に関する発言をする人がいますが、私は如何なものかと思っています。
本来税というのは長期的ビジョンに基づいてどのような税体系が必要なのかが論じられるべきものであり、そしてまたその時には国民福祉、社会保障というような観点も加味しながら総合的に考えるべきものです。
従って、今週月曜日に本ブログで述べた通り、復興需要に応ずる資金が必要であるから税制をどうするとか、あるいは一時的に消費税や所得税等をどうするというのは、全くナンセンスな考え方としか言いようがありません。

今回の復興資金需要に応える為にどうすべきかについては、私に言わせれば、単に復興債を発行すれば良いだけのことではないかと思うのです。
「復興債を発行すれば危機的状況の日本財政が更に悪くなってしまう」という類のことを言う人もいますが、そのような人には「今回の震災関連費用が総額で20兆円~30兆円掛かった場合、それは924兆円の公的債務の何%になるのか」ということを冷静に考えて貰いたいものです(※2)。
それは多く見積もったとしても精々3%程度の話でありますが、では仮に公的債務が2~3%増加したとすると日本の国債格付けが更に引き下げられてしまうのでしょうか。
日本の貯蓄率』と題したブログでも述べたように、端的に言えば、今後例えば金利が僅か1%上昇するだけで9兆円の金利負担増が発生するわけで、そうしたことを考えますと、一部で懸念されている財政悪化というのはその程度の事柄でしかないことを確りと認識すべきでしょう。
震災被害に遭われた地域の人々に対して様々な資金的援助・物質的援助を施すべく、上述した程度の財政赤字の拡大を躊躇する理由はどこにもないわけです。
「禁じ手」と言われる日銀の国債引き受けであれ何であれ、2~3年での復興が見込まれることから満期3年の復興債といった短めの債券を発行すれば良いのではないかと私は考えています。
上述したように復興債の発行こそが最善の方法であると考える私からすれば、五百旗頭氏のようにその資金を賄うべく全国民に税負担を求めるというのは、経済というものを全く知らないナンセンスな人の戯言としか思えないのです。

あるいは中部電力株式会社(以下、「中部電力」)の浜岡原発停止を受けて、「火力発電所の再稼働のために石油需要が旺盛となり、原油価格はどんどん上昇するのではないか」というような主張を展開する人も中にはいますが、これに関してはどう捉えるべきでしょうか。
「原発危機で生産できなくなった電力のすべてを石油による火力発電で埋め合わせるとしても、それに必要になる石油は一日約50万バレル」と言われており(※3)、今回のように火力発電に纏わる石油需要が発生することから必要量は多少増えるかもしれませんが、結局はそれ程大きな量にはなりません。
「一日約50万バレル」という数字をどう捉えるべきかと言うと、例えば石油生産量世界第18位の国、リビアは「一日あたり150万バレルの石油をこれまで生産してきた」わけで、「別の言い方をすれば、日本の原発危機による石油への余波は、リビアの内戦よりも小さいとみなすことができる」のです(※3)。
このように石油需要に対する懸念についてはグローバルに考えれば微々たるものですし、先ほど述べた復興債に対する懸念についても924兆円の内の20~30兆円という話ですから、これまた全体から見れば微々たるものと言えましょう。
従って、分かったような顔して、国民全体での税負担の必要性を説いたり、あるいは原油価格高騰の可能性を指摘したりするような人というのは、全く以てナンセンスとしか言いようがありません。

また、復旧復興以外にも菅内閣が取り組むべき案件は数多ありますが、例えば本ブログで何度も指摘しているように6月までに判断されるはずのTPP参加の是非については、うんともすんとも聞こえて来ません。
内憂外患の状況下、同時並行で前進させるべき重要案件が山積しているにも拘らず、菅総理というのは復旧復興のみが仕事だと誤認している部分があるのではないでしょうか。
この復旧復興が重大課題であるのは言うまでもありませんが、菅氏は一国の総理であり、17人もの閣僚がいる中で(※4)、朝から晩まで復旧復興に関する事項だけに取り組んで一日を終えているようでは話しになりません。
同じことは枝野氏にも言えるわけで、「官房長官の仕事というのは本当に復旧復興だけなのですか」と問い詰めたくなるような成果しか生んでいないと思うのです。
復旧復興も勿論大事ですが日本の将来にとって大事な仕事は他にも山程あるわけで、菅総理並びに枝野官房長官は他の重要案件の進展が見られない現況で本当に良いと思っているのでしょうか。
現内閣の無能さについてはこれまで何度も指摘してきましたが、復旧復興という一つの事だけにしか取り組むことが出来ない彼らの様態を見るにつけ、私にはそのような所がそもそも無能であると感じられるのです。

私も小さな会社を経営していますが、グループ全ての経営に関するありとあらゆることを頭に入れて、短期的・中期的・長期的にどうかというのを勘案しながら優先順位を付けつつ、複数案件の全てを未だ手帳を持たずしてノンストップで同時に裁き続けています。
彼らのように一つ大事な案件があるからといって他の重要案件を後回しにするような暇はないのです。
我々民営企業のように潰れるという意識がある所と潰れないという意識で仕事をしている所との違いとは、正に上述したようなことなのだろうと思います。
菅総理や枝野官房長官が一つの事で右往左往し、それすらも十分に出来ぬまま肝心要のことは全て抜けて行くという有様を見るにつけ、それこそ正に能力の無い人の典型ではないかというように私には感じられます。

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参考
※1:東日本大震災:復興税を提案 復興構想会議の五百旗頭議長
※2:国の借金924兆円=2年連続で最大更新―昨年度末
※3:フォーリン・アフェアーズ・リポート
※4:枝野官房長官:閣僚3人増 法案13日に閣議決定




 

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