北尾吉孝日記

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今月2日に『歴史・哲学の重要性』と題したブログでも少し触れましたが、私はまた世界経済に暗雲が立ち込め始めたのではないかと直感的に思っており、特に次の三つのことを大変憂慮しています。
第一に挙げられるのはやはり米国であって、住宅や雇用の状況を見ていますと、また底割れ感が出始めています。
昨年7月に『暗雲立ち込める世界経済』と題したブログでも下記のように指摘しましたが、住宅が底割れしてくれば、折角今まで隠れていたサブプライムローン絡みの不良債権化問題が再び大きくクローズアップせざるを得ないような状況になってくるでしょう。

【これまでの不動産価格の上昇により顕在化しなかったサブプライムローン関係の不良債権は300~400兆円位あると言われていますが、もし不動産価格がまた下落して行くというような状況にでもなれば、再びサブプライムローンの不良債権化問題というものが現出する可能性があるということで、私はこのことを非常に懸念しています。】

そのような環境下、オバマ政権は最早これ以上財政赤字を拡大し続けることが出来ないようなぎりぎりの所に来ていますし、金利についても下げる所まで下げたという状況ですから、次の打手が見出せない中で米国経済は底割れする可能性が出てき始めたのではないかというように私は危惧しています。
次に挙げられるのは、中国をはじめとしたエマージング諸国の現況です。これらの国はリーマンショック以後、旺盛な財政政策によって内需拡大を図り、これまで世界経済を牽引してきたわけですが、中国等にも少し疲れが出始めてきたのではないかと感じています。
上記「疲れ」とはインフレという病に犯され始めてきたということを指しており、中国の場合は特に不動産を中心としたミニバブルというようなことが盛んに言われているわけですが、それについては昨年7月中旬のブログ『欧・中の金融経済情勢など最近の雑感』で指摘した通りです。
そして昨年12月に『アジア各国の金融経済情勢~中国、インドネシア、ベトナム~』と題したブログでも述べたように、中国は為替をコントロールしてきた結果インフレに対処しなければならないというような非常に難しい状況を自ら招いてきたわけです。あらゆるコモディティ価格が上がり始めており、所謂賃金の上昇も加わる中でインフレという病に本格的に取り憑かれ始めてきていると思います。
それに対抗すべく中国はこれまでも金融引き締めという薬を処方してきましたが、それだけでは不十分な上、米国等からの外圧もあることから、今度は為替管理を徐々に緩めてきており、それ故元が少し高くなり始めてきているといった状況です。
中国の現況は重病段階にまで進んだというものではありませんが、何か少し成長に陰りが見え始めてきているというように私は見ています。
そして三つ目として「欧州ソブリン危機」が再度表面化し始めてきているということが挙げられます(※1)。
「ギリシャ問題」が片付いたというようには元々捉えてはいませんでしたが、私が予想していたよりも早い段階で当該問題がまたぞろ再燃し始めたという印象を持っています(参考『ギリシャ問題の行方』)。
本件について端的に言えば、ギリシャはもう持たないと思われますので、ユーロ圏から離脱するか、あるいは離脱しないのであればユーロ圏各国が大幅な譲歩をして行かねばならない段階であると私は考えています。
そしてそのような譲歩をする場合、例えばユーロ加盟国の中で最も負担を被ることになるドイツの選挙民が現政権に対してNOを突き付ける可能性もあるわけですから、そのような意味で今後のユーロ圏の運営は全般的に困難を極めるといった局面もあるのではないかと見ています。

そのような世界経済情勢において日本はどうなのかと言えば、現内閣が無能であるが故に大震災後3ヶ月が経とうとしているにも拘らず、復旧復興は全く以て進まないといった状況です。
先日テレビを見ていて、学校給食においてまともな物が殆ど与えられていない所が未だに存在するということを知ったわけですが、現時点では当然そのような問題は解決済みなのだろうと考えていただけに私は愕然としてしまいました。
また3ヶ月もの間、菅総理並びに枝野官房長官らは復旧復興という一つの事だけにしか取り組んでこなかったにも拘らず、未だ以て仮設住宅が十分に行渡っていないというのは一体どういう事なのでしょうか。
現内閣の無能さについては先月13日に『菅内閣を憂う』と題したブログでも数多指摘しましたが、これまで一体何をしてきたのかと、つくづくその無能さを思い知ったというわけです。
そして片方で菅総理はその無能ぶりを野党からも自党からも指摘され、自党からの70~80名程度の造反者も加って内閣不信任決議案が可決されそうになったにも拘らず8月頃までも権力の座にしがみ付くといった具合で、今至急を要する物事が全く進んで行かないのです。
これから参議院に問責決議案が提出されることになれば(※2)、民主党の両院議員総会開催前後でまた揉め揉め、結局は「ねじれ」状況において本案は可決されることになるでしょう。
そして少なくとも今国会は延長されることになるでしょうから、そうなれば野党側は国会審議に応じなくなるかもしれませんし、政府提出法案に対し全て反対の姿勢をとるようになって行く可能性もあるわけです。
このような情勢にあっては復興需要というものがどんどん発生してくるような状況であっても、そうした状況を期待することが出来ないということにもなりかねません。
原子力放射能問題についても解決の道筋がついたという状況ではなく、どちらかと言えばネガティブな方向への不確定要素が未だ以て非常に多くあるのです。
更には先日も指摘した復興財源に関して言えば、「東日本大震災の復興策を検討する政府の復興構想会議(五百旗頭真議長)は消費税や所得税など基幹税の増税で復興費用の一部を賄うことを念頭に置いている」との一部報道もありますが、「6月末にまとめる第1次提言ではどの税をいつどれくらい引き上げるかには踏み込まない方針」とのことで、何時まで経っても何の結論も出てこないというわけです(※3)。
そしてまた全力を投じながら遅々として捗ることのない復旧復興対策よりも更に進捗が見られない重要案件は山ほどありますが、その一つにTPP問題が挙げられましょう。
昨年11月に『TPP参加における基本的な考え方2』と題したブログで下記のように指摘しましたが、今の調子で行くと仮に日本がTPPに参加することになったとしても、その時にはTPPの枠組が既に全て決められてしまっているわけで、現内閣が無能であるが故にこれまたToo lateの世界になってしまうということです。

【「米国は来年11月にハワイで開くAPECでの交渉妥結を目指す。参加国は既にルール作りを始めており、日本は現時点でも出遅れている」と記事にありますが、日本がTPPに参加するかどうかの意思決定でもたもたしていれば、その間に米国主導でTPPの枠組が日本のコミットメント無しに全て決められてしまうということにもなりかねません。
そのように要件の決定段階に日本が入って行かないとなれば、日本にとって余計に不利なものとなる可能性があるということです。
更にTPP交渉を加速させたい参加国にしてみれば、情報収集が先と言えばどこも日本を相手することはないでしょうし、既に参加している国々の交渉がある段階にまで達した後、日本が参加表明を行っても、最早参加国の個別の同意は得られずTPPに加わることすら出来なくなる恐れがあります。】

上述したような日本の危機的事態を目の当たりにし、我々大衆は選挙の時にはもう少し日本の国というものを考えながら、一票を投ずべきではないかと私は一日本人として今非常に強く思っています。

関連記事
信なくんば立たず~菅内閣不信任決議案を巡って~
歴史・哲学の重要性
偉大な中華民族の復興

参考:
※1:トピックス:欧州ソブリン危機
※2:今国会中に問責決議案を提出 自民・石原幹事長が明言
※3:復興会議、財源に増税明記 1次提言の骨格固まる




 

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