北尾吉孝日記

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「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」にも「躍進ネット関連株は健全?それともバブル?―ハイテク会議で意見相次ぐ」、「【肥田美佐子のNYリポート】リンクトインIPOバブルはシリコンバレーの堕落の始まり?」、「【コラム】インターネットバブル再来―必要な古典的証券分析」等々、昨今のインターネット関連株の状況に関する記事が多数ありますが、本ブログでは現在の相場というものをどう捉えるべきかについて私の経験も交えながら述べて行きたいと思います。
嘗て米国は1995年頃から所謂「ドットコムバブル」期へと入って行きましたが、昨年5月に『米国における投資事業の再開について』と題したブログで下記のように述べた通り、当時私は米国で比較的長い時間を過ごしていました。

【米国でインターネット企業が雨後の筍のように出てきた1994~95年、私は毎月1回1週間程度ホテルに泊まり込み、朝から晩まで様々なベンチャー企業を呼んで精査をし、次々と投資をして行きました。
そして、その中には、例えば、モーニングスターやイーローン、あるいはインズウェブ等々、私どもがジョイントベンチャーとして日本で作った色々な会社が登場しており、単に投資業だけということではなく、次は日本へ移出して行くというステージに入って行きました。】

この時期におけるインターネット企業というのは売上や利益といったものが殆ど無くともコンセプトIPO、即ちビジネスモデルのコンセプトのみで公開をし、それに対して異常な値が付くというような極めて可笑しな状況でした。
従って、そうした異常なバブルは当然破裂することになるわけで、ナスダック総合指数で見ると、2000年3月10日の5048.62をピークに急落して行くことになりました(ナスダック総合指数推移:終値―対前年比上昇率・・・1995/3/10:802.22―1.66%、1996/3/11:1080.5―34.69%、1997/3/10:1322.72―22.42%、1998/3/10:1748.51―32.19%、1999/3/10:2406―37.60%、2000/3/10:5048.62―109.83%、2001/3/9:2052.78―-59.34%)。
では、未だ売上も利益も微々たる状況であった「ドットコムバブル」期においては、何を持って値を吊り上げて行ったのかということですが、この部分こそが当時のバブルと昨今の状況との違いを見出し得る一つの観点になるのではないかと私は捉えています。
つまり、当時のようにユニークビジター数やページビューといった世界だけで値が決められて行くような時代はとっくの昔に終わり、現在は売上や利益が確実に出て大幅に伸び続けているとか、ユニークビジター数の伸びが驚異的であるといったことでもなければ、余り評価されることはないということです。
更に言うと、例えば中東・北アフリカ諸国においてフェイスブックを通じた民主化が行われようとしているのが今という時代であって、そういう意味では自国内での売上・利益や各種指標だけを伸ばすというのではなく、世界を相手にビジネスを展開し、世界中からビジターを集め、そして世界から収入・利益を得て行くということが出来るようなステージに入っているわけです。

先月4日『中国最大の交流サイト(SNS)で、中国版フェイスブックと呼ばれる「人人網(レンレンワン)」を運営する人人がニューヨーク証券取引所に上場した』わけですが、その利用者数は1億1700万人と日本の総人口よりも若干少ない程度といったものです(2011年5月7日日本経済新聞朝刊)。
人人の上場初日の終値は18.01ドルで「時価総額は71億ドル(約5700億円)」に膨らみ(2011年5月31日日経産業新聞)、現在は12.34ドルとそこから31.5%程度下落してはいますが(※1)、未だ3900億円超の時価総額となっているのは当然と言えば当然なのでしょう。アメリカのフェイスブックは公開すれば4兆8千億円程度という声もあります。今後人人はアマゾンやイーベイのような仕事もやっていくようなことをCEOが表明していましたので今後の時価総額の増大が期待出来ます。ちなみに、米国のアマゾンとイーベイの時価総額はそれぞれ6兆8千億円と3兆1千億円です。
また先月19日には利用者数1億人超の「ビジネス向け交流サイト(SNS)大手の米リンクトイン」がニューヨーク証券取引所に上場し、その「終値は公開価格の2倍の94.25ドル」で「時価総額は約89億1000万ドル(約7300億円)」にまで膨らみました(2011年5月20日日本経済新聞夕刊)。
現在は83.54ドルとそこから11.4%程度下落してはいますが(※2)、未だ6500億円程の時価総額となっているのはこれまた当然のことであろうと思います。

このように利用者数という観点から見ても、今ではその規模等に格段の違いがあるわけで、嘗ての所謂「ドットコムカンパニー」のようにその増加が見て取れるといった程度では最早高い評価を受け得ないのが現況なのです。
またグーグルヤフー、あるいはアマゾンイーベイといった既公開のネット企業の時価総額が次々と莫大なものになっているのはご存知の通りですが、未公開のネット企業についてもその買収額は極めて強烈なものになっています。

最近の例としては先月10日、マイクロソフトが「スカイプ(利用登録者:6億6300万人)」を運営する「インターネット通信大手スカイプ・テクノロジーズ(ルクセンブルク)を総額85億ドル(約6880億円)で買収すると発表」したことが挙げられましょう(※3)。
そしてその他にも、例えばグーグルがクーポン共同購入サイト大手の「グルーポンを60億ドル(約4900億円)程度で買収しようと」していたと報じられたり(2011年4月25日日経産業新聞)、あるいはグーグル、フェイスブックといったツイッターに「関心を示している企業の一部はツイッターの価値を80億-100億ドル(約6610億-8260億円)と評価」し買収可能性を模索しているという報道があったりと(※4)、ネット企業を巡る巨額買収交渉の話題が尽きることはないといった状況です。最近の報道ではグルーポンのIPO時の予想時価総額は1兆6千億円とも言われている。

以上、『「ドットコムバブル」再来か』と題して述べてきましたが、「バブル」とも言われるインターネット関連株の現況については今後も様々な角度から分析が試みられ、その真偽のほどは次第に明らかなものとなってくるでしょう。
その中で確りと認識すべきは上述した次の3点、①上記「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」の記事にもあるように(※5)、「1999年と違い今回のネット株の上昇では、大半のネット関連企業が収益を上げている」ということ、②ユニークビジター数やページビューといった評価基準の意味するところが嘗てとは大きく異なるということ、③短期間で世界的企業となっており、現在は全く違った形でネット企業の価値評価がなされているということ、ではないかと私は考えています。

参考:
※1:Renren Inc. American Depositary (RENN)
※2:LinkedIn Corporation Class A Co (LNKD)
※3:米MS:スカイプ買収を発表 総額85億ドル
※4:米グーグルとフェースブック、ツイッター買収で協議
※5:躍進ネット関連株は健全?それともバブル?―ハイテク会議で意見相次ぐ




 

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