北尾吉孝日記

『日本教育再考』

2011年7月11日 15:07
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先週月曜日の読売新聞社説「デジタル読解力 情報を見極める目養う指導を」に下記記載がありますが、デジタル教育というよりも教育として最も重要になるのは、英語教育の二の舞を踏んではならないということではないかと私は考えています。

『経済協力開発機構(OECD)が、義務教育を終えた15歳を対象にした2009年の「国際学習到達度調査」(PISA)で、こうしたデジタル読解力を測る調査を初めて実施し、このほど結果を公表した。
日本の生徒の平均得点は519点で、参加した19か国・地域中、4位だった。1位の韓国には49点の差をつけられたが、OECD平均は20点上回った。』

私の受けた日本の英語教育というのは、一言で言えば、リスニングもスピーキングもほとんど出来ない人間が英語教師として指導に当たり、死んだような文法を中心に教え、試験ではペーパーテストだけを行うというものでした。
例えば、『言語教育の在り方』と題したブログでも以前述べましたが、私がケンブリッジ大学に留学している時にいた日本の某大学の英語の教授は、現代社会では死語で使えないような単語を知っている一方で、普通に会話することが出来ませんでした。
彼は英文学の先生であり、古本屋に行っては古い本を買い集め、シェイクスピアの書籍等を読んでいたことから読むには読めるのですが、リスニング・スピーキングにおいてはprofessor of Englishでも何でもないわけです。
「北尾さん、英語会話の勉強はどのようにすれば良いのでしょうか?」といった程度のお粗末な世界であり、それこそが日本における英語教育のシチュエーションであったわけです。

今後の教育の在り方を構想するにあたっては、やはりその前提としてまずは日本の置かれた立場というものを考える必要がありましょう。
即ち、所謂「ものづくりの時代」が終焉を迎えて行く中で、これから日本という国がポスト・インダストリアル・ソサエティ(脱工業化社会)というような世界に突入して行くという時代認識を確りと持たなければならないということです。
ものづくりと言っても匠の生産は残って行くとは思いますが、取り分け大量生産によるものづくりというのは中国をはじめとした国々にどんどん移行しているわけで、日本におけるものづくりの時代というのはある意味既に終わっています。
今後日本の製造業は海外拠点の更なる拡張を推進し、そこで生産活動を行い、そして、そこからFTA締結国等にどんどん輸出をして行くということになるでしょう。
例えば、韓国という国は下記記事にもあるように、上述したことに逸早く取り組んで輸出を急激に伸ばしており、日本のTPPを巡る動きに見られるような農業等に対する詰まらない言動は行われていないわけです。

『韓国の今年第1四半期(1~3月)の輸出額が史上初めて、個人消費額を上回ったことが16日分かった。41年前の1970年同期と比べ、輸出額は220倍に増えた一方、個人消費額は10倍にとどまった。』(※1)
『韓国の自由貿易協定(FTA)を結んでいる国・地域との貿易額が発効前より7割増えたことが分かった。関税の撤廃・削減で工業製品を軸に輸出を拡大。韓国はFTA網の拡充を着々と進めており、今年の韓国の全体の貿易額は2010年に比べ1割以上増え、1兆ドル(約80兆円)の大台に初めて乗る見通しだ。』(※2)
『米国が主導し、日本が出遅れを挽回(ばんかい)しようと参加を探る環太平洋経済連携協定(TPP)。実は韓国は、現在交渉に参加している9カ国とはすべて、すでに2国・地域間のFTAを発効済みか交渉中だ。通商交渉本部の幹部は「韓国がTPPに加わる必要性は今のところない」と言い切る。』(※3)

李明博(イ・ミョンバク)大統領というのは非常に優れた指導者であると私は思っており、今回の2018年冬季オリンピック招致活動一つを見ても、李大統領自らが現地で支持を訴え、金姸個(キム・ヨナ)も上手に使いながら戦略的に取って行くわけです。
日本はと言えば、『2016年オリンピック開催地決定について』と題したブログでも下記の通り述べましたが、石原都知事のような人間が多少意欲を見せたところでオリンピックなど招致出来るはずもなく、上述したような韓国の在り方というものを日本も少しは見習うべきではないかと思っています。

【日本の招致活動について言えば、石原さんが自ら絶賛するプレゼンテーションの是非は枝葉末節に過ぎませんし、英語でしっかりと話すことが出来ない石原さんや森喜朗さんではロビー活動を行うことは難しいと思っていましたので、その意味で東京の落選も当然の結果であると思っています。この招致活動経費の総額は150億円でその内の100億円が都税でありますので、結果として大変な無駄遣いであったと言わざるを得ません。】

少し横道にそれてしまいましたが、日本の将来の産業構造が一体どういうものかを先読みし、ポスト・インダストリアル・ソサエティにおいて一体何が大事になるのかという観点で教育を捉え直し、そして、そうした大事なものを教育上優先するような体制を敷いて行くべきではないかと思います。
例えば、第二外国語について言えば、独語・仏語の教育を行う時代は最早終わっており、それらは第三外国語程度にして中国語を第二外国語とすべきでしょう。
特に漢文の授業が始まる中学時代から中国語を学べるようにすべきであり、非常に早い段階から中国語も教育して行くという形に改革しなければなりません。
それからデジタルの世界については、今後益々「シンカ(深化・進化)」し更に大きな世界になって行くのは間違いありませんから、その世界の真髄を理解し本当にコンピューターを使いこなせるような人間が指導にあたり、実学として実用に供せられるというようにして行かねばなりません。
『全公立学校の教員を対象にした文科省の調査では、「子供がコンピューターを活用して情報を収集・選択できるよう指導する能力が自分にはない」と回答した人の割合が全体の3割にのぼった』そうですが(※4)、そういう人がデジタルの世界について教えても碌なことはありません。
私が文科相であれば、そうした人は全て代え、ITの起業家や実業家を招聘して授業を行って貰うというような形にすると思いますが、何れにしても無能な教師により何の役にも立たない教育が行われるというのでは日本の将来が危ぶまれます。
前述のようにこれまで日本では死んだ学問として英語教育がなされてきたわけですが、そうした馬鹿げた教育と同じ轍を踏んではならないのです。

この21世紀、日本という国がどういう世界を創って行くのかがまず第一にあって、そのためにどういう教育体制を敷いて行くのかを考えるべきであり、そしてまた、それを支えて行く人材の確保・育成という観点から教育は常に実学を中心に徹底すべきです。
各分野においてオリジナリティ溢れるものがどんどん創造されるような形にするにはどうすれば良いのかを考察すべきであり、デジタル教育で例言するならば、ケーススタディでMicrosoft、Amazon、Google、Facebookといったものを積極的に授業に取り入れて行くというのも、その一つとして挙げられましょう。
そうした中で、特に中学校以降、上記方向に基づいた教育を本格的に施して行けば、様々な才のある人が新しい事を始めて行くのに繋がって行くのではないかと私は考えています。

参考
※1:輸出、初めて個人消費超える=41年間で220倍に-韓国
※2:2011年7月6日日本経済新聞夕刊
※3:日経ヴェリタス第173号
※4:デジタル読解力 情報を見極める目養う指導を





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  1. 今の日本にとっては、従来の画一的教育から脱して、思い切り自由度・創造力を増して、
    記憶と受験を偏重した学習指導要領に沿ったカリキュラムから、世界で勝負できる人材を
    学生時代から養成するための全く新しい教育プログラムを、早急に開発すべきだと思われます。

    文科省が関わったら失敗必至、というリスクが存在しているので、志のある民間企業(例えば、
    「地球上で一番たくさんの“ありがとう”を集めるグループになろう。」というスローガンを掲げて
    いるワタミグループの渡邉美樹会長なら何か面白いことやってくれそうな気がします。)、
    あるいは現在、学校での成績向上や受験合格を目的とした進学塾・予備校は新しい教育産業を
    担う覚悟で生まれ変わり、今後は卒業後に役立つ語学、コミュニケーション力、構想力、ITスキル
    などを早くから教える方向へうまくシフトできたら、かなり面白い内容のものができるのではないか
    と思っております。

    また、地理的には九州は中国や韓国に近いので、まずは九州在住の中学生・高校生は英語のほかに、
    第二外国語として中国語・韓国語を勉強してもいいのではないか。半年~1年くらいは交換留学制度を
    活用しながら、実際に中国や韓国に滞在し生活してみることです。
    これは相手国の言語なり歴史・経済なりが勉強できる一番の早道ではないかと思います。

    最近、中国を訪れた外国人が驚くのが、英語に堪能な中国人が急増していることです。
    私自身も、中国・上海に帰省する度にそれを実感しています。
    特に昨年、上海万博の観光に帰った時、流暢な英語を話す店員さんを見かける度に、
    自分自身の長年の英語コンプレックスを何とかしたい、英語力を高めたいと切に願っています。



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