北尾吉孝日記

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今月に入り株式会社東京証券取引所(以下、東証)と株式会社大阪証券取引所(以下、大証)の合併協議が新聞を賑わせていましたが、このニュースを聞いた時に私が最初に考えたのは、「果たして東証・大証合併というのが日本の独禁法上可能なのか」ということです。
即ち、パブリックカンパニーの大証と同じ様に同業態の東証自身が上場を目指しパブリックカンパニーになろうとしているわけですから、両社合併により圧倒的シェアを持つというようなことが独禁法上許されるものなのかということです。
先週木曜日に『「PTS元年」の現況と展望』と題したブログでも指摘しましたが、東証が公開しバリューがつくとなれば、どう考えて見ても大証とのバリュエーションの差は非常に大きくなるわけですから、大証株主をはじめ大証自身も経営統合への抵抗感が高まってくるのではないかと考えており、恐らく大証が東証に飲み込まれるという形での合併でしかないのであろうというようにも思います。
最近本件は少し下火になってきたというような感がありますが、何れにしても今後も紆余曲折のある案件なのであろうと認識しています。
他方、上記『「PTS元年」の現況と展望』というブログで詳述した「ジャパンネクストPTS(SBIジャパンネクスト証券株式会社が運営する私設取引システム)」と「Chi-X JAPAN PTS(チャイエックス・ジャパン株式会社が運営する私設取引システム)」について言えば、株式会社SBI証券(以下、SBI証券)が「SOR注文(複数市場から最良の市場を選択して注文を執行する形態の注文)」という形でジャパンネクストPTSに参画した先月27日以来、ジャパンネクストPTSが何ヶ月か抜かれていたChi-X JAPAN PTSを抜き、元のPTS一位の地位に戻りました。
そして、ラフな計算ではありますが、SOR(Smart Order Routing)を通じたこの一ヶ月間の取引をトータルで見ると、少なくとも6000万円程度のプラスが投資家に生じているわけです。
上記ブログにて下記のように述べた通り、今後は手数料ではなくSORこそが本当の意味での差別化を齎し、そしてまた、手数料よりも遥かに大きなプラスのインパクトを投資家に与えて行くものだということです。

【即ち、これまでのネット証券会社間の競争というのは、基本的には手数料競争が主たるものでしたが、今後はそうした世界ではなく、投資家の収益により大きなプラスのインパクトを与えるであろうSOR(Smart Order Routing)というものが恐らく主たる競争の源泉になるでしょう。】

唯、上述したようにSORが私どもの差別化要因であるからと言って、同業他社の参画を阻むものではありません。
ジャパンネクストPTSへのSBI証券の参画は段階的に進められていますから未だ本格的なものではありませんし、上述のブログにて下記の通り述べたようにマーケットメイカーとSBI証券のシステム的対応が両方相まって更なる取引の拡大が目指されて行くでしょうから、今後徐々に全体のボリュームが高められて行くことになるというように思っています。

【2007年8月27日、夜間において開始されたジャパンネクストPTSは2008年10月に昼間に取引時間を拡大したわけですが(※1)、ナイトタイム・セッションに参画している株主企業の中でデイタイム・セッションにも参画したいという声を上げる所が今幾つか出てきています。
デイタイム・セッションへの参画自体については勿論結構なことですが、そのシステム対応のために半年~1年という時間を費やすことになると思われます。
それ故その意味では、正にこの半年、1年が勝負であると捉えており、上記企業等が全て参画してきた時にChi-X JAPAN PTSは最早ジャパンネクストPTSに太刀打ち出来なくなると考えています。】

上記ブログにて私はPTSに関する問題点として下記等を挙げましたが、5%ルールは最早out of the questionとして即刻廃止されるべきものだというように私は捉えています。

【・5%ルール:『週刊東洋経済』より抜粋
「現行の金融商品取引法では、取引所外で株式の5%超を買い付ける場合はTOBを行う必要があり、PTSも取引所外と見なされる。PTSで株を買いうっかり5%を超えると、罰金が発生する。それが機関投資家にPTSを敬遠させているのだ。」(※2)
・10%ルール:『北尾吉孝日記』より抜粋
「PTSの運営において、取引量が対国内全取引所比の全売買代金の10%を越えてはいけないという制限がありますので、その時が最終章に向けた動きが本格化すると考えています。」】

10%ルールについては、私のブログを読まれTwitterで非常に的確な指摘をされている、サウスモールという方も発言されておられますが、私には何故10%なのかという疑問があります。
即ち、上場審査を筆頭に様々な審査上のコストが掛かる中、一方はそれを負担し片一方は負担しないというのは可笑しいのではということですが、私もそれについて理解出来ますが何故10%なのかという問題は未だ残ったままです。
更に言えば、上述の通り東証・大証合併については独禁法上の制約が当然あると私は捉えていますが、仮になされた場合は独禁法に対するものとして当該10%ルールは当然廃止すべきではないかということさえ私は考えています。
この10%という数字は精緻なコストを割って算出されたものでもないでしょうから「何故10%なのか」「20%ではいけないのか」といったことは問われるべきですし、更には「ある意味独禁法上の違反とも思われるような合併が行われた場合、何故その10%は維持されなければならないのか」といったことについても、私は法的な問題として横たわっているのではないかというように思っています。
そしてまた、上記ブログでも指摘した「最良執行(どの市場で取引すれば最も有利かをシステムが瞬時に判断し、最も有利な市場を選んで自動的に売買を執行すること)」というのは法律で謳われていることでありますから、今後も現況が続くようであれば、私は法廷で争うこともあり得るというように思っています。
また、グローバルな視点から考えれば、例えば日本のPTSを外国企業が保有するということも当然あり得ることでしょう。
米国でNYSE ArcaがNasdaqを買収しないのは独禁法上でも様々な問題が生じることによるもので、これは絶対に実現しないものですし、そしてまた一方でインターネットの時代においては電子取引で全てが行われるわけですから、グローバルな世界では、取引所を持つ主体や取引をする業者や投資家がどの国に存在しなければならないということもありません。
従って、取引所のグローバル再編成という流れの中で、今後日本の取引所が組み込まれて行く可能性も非常に高いのではないかというようにも私は認識しています。
これからの世界はあらゆるものがグローバルな中で動いて行くようになり、本当の意味でのグローバル社会というものになって行きますが、その世界に適応したものしか存在し得なくなって行くことでしょう。
そうしたグローバル経済において、上述してきた取引所というのはある意味象徴的なものとも言えるものですが、今後の世界というのは必ずそういう方向に動いて行くというように私は考えています。

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国内証券取引所の再編成

参考
※1:企業情報・SBIグループ – SBIジャパンネクスト証券株式会社
※2:企業・産業−−欧州覇者「チャイエックス」が参入−−東証の独占を揺るがす私設市場の潜在力と限界





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  1. 証券取引所の世界的な再編が加速している中で、2011年3月に東証と大証が経営統合に
    向けて動き出したが、トップ会談で統合をめぐる“主導権争い”で双方が譲らず、統合スキーム
    の3つの案が検討されているため、両証取の経営統合交渉が難航しているようです。
    今、取引所同士の統合の難しさが浮き彫りになってきております。

    長くアジアの金融市場を牽引してきた東証ですが、近年では中国をはじめとする新興国の
    証券取引所に猛追されており、2010年の株式売買代金は上海証券取引所に抜かれ、
    2年連続でアジア首位の座を奪われました。

    3年前に、インターネットで株の取引を始めた(SBI証券に口座を開設した)一個人投資家として、
    今回の両証取の経営統合の動きに基本的に大歓迎したいと思いますし、システムの統合で
    利便性が高まるといったメリットを期待しつつ、ぜひともアジアを代表する証券取引所として
    躍進して欲しいというのが私の感想であります。将来的には海外勢の取引所グループとの
    統合がさらに進む事で、アジア内のあらゆる金融商品が選択・売買取引できるようになる
    という時代が来るのかもしれない。もはや、証券の世界がグローバルな水平化、サービスが
    収斂していくという潮流には逆らえないと思われます。

    今後、もう国や政府、会社に頼って生きていくことは難しいのです。
    これからの時代は、自分で個人資産を守る時代です。
    “金融リテラシー”を磨くことが、ますます大切になってくるのではないかと考えております。



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