北尾吉孝日記

この記事をシェアする

皆さんは、所謂「格付機関」による格付けというものをどう捉えていますか?
例えば、リーマンショック前には格付機関は「米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)にもトリプルAを与えていた」わけですが、その後同社は実質的に破綻し公的資金注入を受けて、今や政府管理下で経営再建中という状況にあります(※1)。
また、東京電力株式会社(以下、東電)についても東日本大震災が起こる前には「S&P:AA-、Moody’s:Aa2、R&I:AA+」というように高格付けが付与されていたわけですが(※2)、ある日突然5717億円の赤字を計上し、今や実質債務超過という状況に陥っているのです。
こうした歴史的事実がある以上、今というタイミングで「格付けとは一体何なのか」ということを改めて考える意味というのは非常に大きいと私は捉えています。
私が債券を買う場合について言えば、格付けを判断基準にするなどということは一切無く、ラストリゾートがあるかどうかという一点に絞って検討します。
例えば、今年6月の経営近況報告会でも述べた通り、先日トルコ最大の銀行から円建て債券引受のオファーがありましたが、その格付けはと言うとAAAでもなければ所謂A格債でもなくB格債でありました。
では、当該銀行が潰れるリスクというのは非常に高いものなのかと言うと、トルコNo.1の銀行を国は潰し得ないと思われ、そういう意味ではトルコ政府がついていますから、ラストリゾートがあるというわけです。
即ち、最大の決め手となるのはラストリゾートの有無であり、それを有するトルコ企業が発行する上記債券については私どものパートナーと共同で応じて行くということになるのです。
また別の例を挙げますと、ロシア最大のエナジーカンパニーであるガスプロム社の債券を購入するという時、その格付けを理由に躊躇していたメンバーに対して、私は「格付けなどはこだわる必要はありません。ロシア最大の国策企業をロシア政府が潰すなんてあり得ないでしょう。大丈夫だから買いなさい」というように伝えたわけですが、事程左様に私の判断基準はラストリゾートの有無という一点でしかないのです。
上記情報紙の記事にも下記記述がありますがAIGや東電以外にも格付けの信用が失墜するような事例というのはこれまで数多あったわけですから、その歴史に学ぶならば債券購入に際し格付けというのは殆ど意味をなさないものと言わざるを得ないでしょう。

『1983年のワシントン公共電力システムの債務不履行、95年のカリフォルニア州オレンジ郡の財政破綻、2001年の米エンロンとワールドコムの破綻、近年の住宅ローン問題など、一般に認められた評価が「正確性」や「適時性」に欠けていた例は、山ほどあったのだ。SECが格付け大手各社を公認格付け機関と認定した1975年、ニューヨーク市では長年にわたる不正経理問題が発覚した。ところがムーディーズは72年に、S&Pは73年に同市の格付けを引き上げるという失態を演じていた。』

従って、上述した意味においても私は格付機関の格付けに対し大きな疑念を抱いていますし、そうした判断の方が寧ろ的確ではないかとすら思っているというわけです。

参考
※1:日経ヴェリタス第180号
※2:2011年5月10日日経産業新聞





(任意/公開)
(任意/非公開)

  1. 米格付け会社のムーディーズは24日、日本国債の格付けを従来の「Aa2」から「Aa3」に1段階
    引き下げと発表しました。今回の格下げは多額の財政赤字と、2009年の世界的な景気後退以降
    の政府債務の増加を受けたもの、債務残高の対GDP比上昇の抑制を困難にしているいくつかの
    要因があることが、今回の格付アクションの根拠となりました。

    2002年5月以来、約9年ぶりの日本国債の格下げは基本的に財政再建路線の見通しがたって
    いないことが背景にあります。税と社会保障の一体改革の法制化のメドがたたず、復興基本計画
    の中でも増税の具体案が出ていない。民主党の中で増税反対派が多く、財政再建に前向きだった
    野田財務相も近頃、トーンダウンしてきています。

    経済成長が財政再建に不可欠であるとの観点から、本日政府が発表した「円高対応緊急パッケージ」は、
    市場が期待した介入実施の発表ではなく、内容的にもやや消化不良の面があり、ドル・円の反応は
    限定的となっています。

    北尾CEOの「債券を買う場合、決して格付けを判断基準にしないこと。購入を検討する最大の決め手は、
    ラストリゾートの有無という一点に絞る。」といった手法はとても参考になり、大変勉強になりました。
    今後は少しずつ実践していきたいと思っています。



Copyright © SBI Holdings, inc. All rights reserved.