北尾吉孝日記

『中国民主化リスク』

2011年11月25日 12:23
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昨日の「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」の「軍の譲歩にもかかわらずエジプトの衝突続く」という記事にも下記記述があるようにエジプト情勢は依然として混迷が続いているわけですが、要するに非常事態であるからと言って軍事政権が国家統治を続けているということ自体に最早国民は辟易としており、ムバラク政権崩壊後から求めているのが徹底した民主化であるというのが鮮明になっているということでしょう。

『エジプトを暫定的に統治する軍最高評議会(SCAF)は大統領選挙を前倒し実施するなどの譲歩案を示したが、デモ隊はこれを拒否。23日も終日、デモ隊と治安部隊の衝突が続いた。
(中略)医療当局者によると、これまでに少なくとも28人が死亡し、1000人以上がけがをした。5つの人権擁護団体からなるグループは23日、死者の数は40人に近いと発表した。
(中略)タンタウィ軍最高評議会議長は22日夜の演説で、大統領選挙を来年6月末までに実施し、その後に最高評議会は権力を民政に移すと約束した。最高評議会はこれまで、大統領選挙は2013年か14年に実施するとしていた。
(中略)以前の抗議活動のときと同様に、この演説はタハリール広場のデモ隊の反発をさらにあおったようだ。』

こうした民主化を求める動きというのは拙著『日本人の底力』(PHP研究所)の中でも21世紀の一つの方向であるというように述べているわけですが、正に21世紀を特徴付けるそうした方向の中で次に問題化する国は恐らく中国ではないかというように私は認識しています。
上述したことについては先月5日『米欧中現在の情勢』と題したブログでも下記の通り指摘しましたが、中長期的に述べるならば中国が民主化されるのは結構なことだと思われますが、昨今のような世界経済環境下において直ぐには問題化しないで貰いたいというように考えています。

<中国が今後も警戒すべきは、今年2月の『チュニジア発民主化ドミノの行方』、及び今年3月の『激変する世界情勢とSBIグループの在り方』というブログでも下記のように指摘した通り、やはり「ジャスミン革命」のような民主化のうねりというものが中国国内においてどのような展開を見せて行くのかということです。

【今私が一番危惧しているのは上述したような世界規模でのうねりの中、中国にこの民主化の動きが伝播し嘗ての「天安門事件」のようなことが再び起こらないかどうかということです。
中国においては天安門事件の頃から民主化の動きがずっと燻り続けてきており、それがあの劉暁波氏によるノーベル平和賞受賞により表面化したわけで、今日また上記民主化の動きの中でどう展開して行くのかについては注視しなければならないことだと思っています。】
【一昨日の「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」の「中国、反政府デモ抑えるためソーシャルメディアの規制を強化へ」という見出しの記事にもあるように、中国政府は厳しいインターネット検閲を実施しているわけですが、今の中国はそのようなことで情報の拡散・流入が阻止されるという世界では最早ありません。
現在中国は国をかなりオープンにしており、多くの中国人が海外にどんどん渡航し、多くの外国人が入国しているわけですから、そのような観点から見ても様々な情報が中国国内に流入してくるような状況にあるわけです。
それ故中国政府も上記うねりが中国へ本格的に伝播することに対し神経を尖らせているわけですが、仮に中東諸国で見られたような動きに発展するならば、中国政府は再び大規模な軍隊による武力鎮圧に乗り出すことと思われます。
また基本的には中国が民主化されるのは結構なことだと思われますが、昨今の世界的潮流の中で現在の政治体制が崩壊するということにでもなれば、世界経済に対して相当大きな打撃を少なくとも短期的には齎すことになるということについても確りと認識すべきではないかと私は考えています。】>

やはり今後一つのリスクとなるのは胡錦濤氏から習近平氏への権限委譲のタイミングであるというように私は捉えていますが、その大事なタイミングにおいて政治の民主化への道を歩むという路線が示されなければ、中国国内における民主化圧力というものはどんどん強まって行くことになるのではないかというように見ています。
北京在住の芸術家・艾未未氏を挙げて例示すれば、今週月曜日の朝日新聞朝刊「(風 北京から)追徴課税の闇 もの言う芸術家に支援の輪」という記事にも下記の通りあるように彼に課された約1億8千万円の追徴課税に対し約1億円の寄付があっという間に集まったわけですが、振り込みを行った人というのは皆名前が表に出ることを承知の上でそうしたリスクをとって行動していますし、更には「紙幣を紙飛行機に折ったり、紙つぶてにして艾氏の庭に投げ込む人もいる」というわけですから潜在的な民主化要求というものが如何に大きいのかが分かるでしょう(※1)。

『艾未未(アイウェイウェイ)氏。54歳。世界的に著名な芸術家で、北京五輪のメーンスタジアム「鳥の巣」の共同設計者としても知られる。四川大地震で、もろくも崩れた校舎の手抜き工事と被害の全容を公表しない中国政府に怒り、命を奪われた子どもたちの名前を調べあげてネット上で公開した。人権活動家としての顔も持つ。
(中略)4月、艾氏は北京空港で拘束された。4日後、国営新華社通信は、公安当局が「経済犯罪容疑」で艾氏を取り調べていると報じた。
(中略)しかし、頭から黒い布をかぶせられ、どこへ連れていかれたのかもわからないまま81日に及んだ取り調べで、「経済犯罪」を問われたことは「なかった」と艾氏は話す。
(中略)解放後も安息は取り戻せていない。1日、艾氏の芸術活動を支える会社に税務当局が1522万元(約1億8千万円)の追徴税を課すと通告してきた。
(中略)納付期限は15日以内。追徴課税は当局の弾圧だ、と艾氏支援の声がネット上で野火のように広がった。「寄付したい」「銀行の口座番号を教えて」。
(中略)2週間で3万口、860万元(約1億円)を超える「貸し付け」が集まった。ほとんどが中国内から寄せられたという。』

上記に関しては彼の人気というよりも寧ろ国民が彼を使って民主化を求める意思表示をしているということなのだろうと私は考えていますが、こうした民主化の動きというのが習近平新体制への移行期により大きな力となって現出してくるのではないかと見ており、「天安門事件」のようなことが再び起こらないよう共産党政権も上手く誘導して貰いたいという風に思っています。

参考
※1:2011年11月8日東京新聞朝刊





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  1. 本日の名古屋株主ミーティングに参加した者です。
    記事とは関係ない書き込みですが、今日の説明会でうまく意見を言えなかったので、この場をお借りします。

    新たにFXの事業を始めることについて、質問でも出ましたが他者との明確な差別化がないと失敗すると思います。
    今の段階では、外貨での入出金ができないですが、これができるようになればまったく新しい顧客を開拓できるのではないでしょうか。
    また将来的にベリトランスやSBIレミットとのシナジー効果も期待できます。仮にSBI証券やFXで運用した外貨を海外送金できたら、本当に顧客中心主義だとおもいます。その潜在需要があることをお考えください。

    この提案は実務的に難しいことがあるかもしれませんが、外為ドットコムにできて金融のエキスパートであるSBIにできないとは思いません。ぜひご検討いただけたら、と思います。

    最後に、この書き込みがこの場に不適切なら削除ねがいます。



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