北尾吉孝日記

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先週木曜日の『ウォール・ストリート・ジャーナル日本版』(以下、WSJJ)の「ドイツ国債の入札、大幅札割れ」という記事にも下記記述があるように「欧州ソブリン危機」というのは最早ギリシャやイタリア、スペイン等の問題から本丸のドイツやフランスへと延焼し始めており、いよいよユーロ崩壊を視野に入れねばならないような展開となってきています。

『ドイツ政府が23日実施した10年物国債の入札は札割れとなり、ユーロ導入以降で最も低調な結果に終わった。欧州の債務危機が悪化するなか、ユーロ圏で最も安全とされる資産でさえ投資家からの需要が減少していることが示された形だ。
募集額60億ユーロ(約6200億円)に対して、応札額は36億4400万ユーロにとどまった。平均落札利回りは1.98%。
(中略)一方、仏・ベルギー系大手銀デクシアの救済計画で、ベルギー政府は合意済みの救済負担コストを拠出することができないとの報道が流れ、域内での緊張感が増した。デクシア問題はフランス政府の足元でリスクが増加していることの表れであり、同国のトリプルA格付けへの脅威がまた一つ増えた格好だ。』

そして今週、ユーロ圏のソブリン債市場は下記WSJJ記事引用にもあるように「債務の持続性が疑問視されている国々が新発債の入札を予定しており、新たに不安定な局面を迎える可能性がある」と見られています。

『今週はイタリア、スロバキア、ベルギー、スペイン、フランスが国債入札を予定し、起債総額は190億ユーロ前後に上る。先週はオランダとドイツのほか、イタリアがゼロクーポン債を含めて入札を実施し、77億4,000万ユーロ分を発行した。
イタリアが25日実施した6カ月物短期国債入札の平均落札利回りは6.504%となり、ユーロ導入後の最高を更新した。困難な資金調達状況があらためて浮き彫りとなった格好だ。
(中略)イタリアは28日、2023年償還のインフレ連動債で最大7億5,000万ユーロの調達を目指す。さらに12月1日には、14年、20年、22年償還の国債3種を最大80億ユーロ起債する計画だ。
「これらの国債発行に市場がどう対応するかによって、1日のスペイン国債入札の基調が決まる可能性が非常に高い」と、コメルツ銀行のシュナウツ氏は語った。
(中略)スペインは12月1日、35億ユーロの新発3年債を入札にかける予定。格下げ懸念が再燃するフランスも同日、30億~45億ユーロの調達を目指す考えだ。』

昨日の状況については下記の通りですが(※1)、一刻も早く手を打たねばユーロ崩壊は避け得ないというのが正に現況と言えるわけで、打つ手としては最早次の三点を出来れば同時に実施する以外、他に道はないというように私は考えています。

『イタリアなど財政不安国の国債利回りが低下(価格は上昇)する一方、ドイツやオランダなど最上級の「トリプルA」格付けの国債利回りはやや上昇した。
(中略)イタリア政府が同日実施した期間15年の国債入札は予定額を調達し無難な結果となった。ただ、予定額下限に近く、落札利回りも7.3%と高水準だった。
(中略)投資家はなお欧州の国債の保有に慎重とされ、イタリアの10年物国債利回りは7.1%で高止まりしている。同日実施のスロバキア国債入札で調達額が大幅に予定を下回るなど東欧での入札に波乱も起きている。米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは同日発表のリポートで、ユーロ圏各国のデフォルト(債務不履行)の可能性は「排除できない」と指摘した。』

まず第一に挙げられるのは、今月11日のブログ『「イタリア危機」について』でも指摘したように1兆ユーロ程度の規模でしかないEFSF(欧州金融安定基金)を少なくとも2~3倍程度に早急に拡充するということです(参考:2011年11月28日ロイター「EFSF運用ルール固まる、29日のユーロ圏会合で承認へ」)。
二つ目として、先述の「ドイツ国債の入札、大幅札割れ」という記事でも下記述べられていますが、ある意味での財政統一化を図るユーロ圏共同債の発行を実現し金融・財政・通貨の全てをユーロ圏で一本化して行くということです(参考:2011年11月16日北尾吉孝日記『ユーロ圏の将来3』)。

『今回の札割れには、債務危機の解決に向けてユーロ共同債の採用をドイツが最終的に受け入れざるを得なくなるのではないかという懸念が反映されている可能性もある。
ドイツ政府はユーロ共同債の導入を一貫して拒否してきた。この発行により、他のユーロ加盟国のデフォルト(債務不履行)リスクの共有を強いられ、自国の借り入れコストが上昇するためだ。しかし、ユーロ圏の解体を防ぐためにドイツに残された道は共同債の発行以外ないかもしれない、というのが多くの観測筋の見方だ。』

最後に三つ目として、上述のブログでも下記指摘したようにIMFがユーロ圏を応援し支えようとして全面的に協力して行くというのが明示され、その背景として米国は勿論の事、日本や中国等からも危機抑止の原資が積極的に拠出されるということです。

【もし選挙を気にしなくて良い所があるとすれば、その一つにIMF(国際通貨基金:International Monetary Fund)が挙げられましょうが、そのIMFに対してG20、取り分け巨額の外貨準備高を持つ中国や日本がどれだけ支えて行くのかが大事になってきます。
あるいは、本件に対して米国がどう政治的なリーダーシップをとって行くのかというのも当然ながら重要になるわけですが、今の状況を見ていますと一向に治まりそうにもないような感がしており、基本的には世界全体がユーロの存在というものを無くてはならないものとして認識せねばならぬことなのであろうと思っています。】

ユーロというコンセプト自体の終焉に向け欧州が動き始めている中で米国が果たす役割というのは前述の通り中国や日本と共に非常に大きいわけですが、先週木曜日の日本経済新聞社説「米経済を危険にさらす政争」でも下記述べられている通り、今回また此間の「米債務上限問題」と同じように擦った揉んだしているという事態を見るにつけ、正に残念というより他はありません。

『米議会超党派委員会の財政再建を巡る協議が決裂した。社会保障費の削減に反対する与党・民主党と、富裕層の増税に抵抗する野党・共和党の対立が原因だ。
両党は今年夏、連邦債務の上限を引き上げる代わりに、財政赤字を削減することを決めた。このうち10年間で1.2兆ドル(約92兆円)以上の削減案を超党派協議に委ねておきながら、期限までに合意できなかったのは遺憾である。
これで米国が債務不履行に陥るわけではない。1.2兆ドルの歳出を2013年から強制的に圧縮する「トリガー(引き金)条項」の発動によって、同規模の財政赤字削減が担保されるという。
しかし国防費や社会保障費などを機械的に減らすため、安全保障や経済運営の足かせになりかねない。オバマ大統領はトリガー条項の修正を拒否するというが、議会が歳出削減の回避に動くようなら、今年夏に続く米国債格下げの圧力が強まる恐れもある。』

米国においても政治が「ねじれ現象」を起こしている中でオバマ大統領としても非常に難しい舵取りが求められる状況になっているわけですが、こうした中で昨日フィッチ・レーティングスが『米長期国債の格付け見通しを従来の「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げ』ました(※2)。
これから米国債が更にダウングレードされて行くというのも当然有り得ることですから、何とか一刻も早く議会が纏まってくれればというように切に願っています(参考:2011年8月26日北尾吉孝日記『終焉に向かうパックス・アメリカーナ』)。
また日本についても、野田総理が先日の「20カ国・地域(G20)首脳会議で、消費税率引き上げを事実上の国際公約として表明」してきているわけですが(※3)、本ブログでも度々申し上げているように世界経済の現況を考慮すればやはり消費税増税などという多くの国民の購買力低下に繋がるようなことを今というタイミングにおいて持ち出すのは余りにもナンセンスではないかと私は感じています。
先週水曜日の読売新聞記事にもあるように「民主党税制調査会長の藤井裕久元財務相は(中略)消費税率の引き上げは実質国内総生産(GDP)成長率が2%を超えることが条件になるとの考えを示し」ていたのですが何時の間にか結構な宗旨変えしてきていますし、野田総理においても昨日のWSJJ記事「一体改革、年内決着指示へ=消費増税、時期・幅明示を―野田首相」でも下記述べられている通り、現下の経済情勢において本件を進めて行く考えを変わらず持っているようです(参考:2011年11月21日毎日新聞『消費増税法案:首相「経済の好転が前提ではない」』)。

『消費税率を2010年代半ばまでに段階的に10%まで引き上げるとした「社会保障と税の一体改革」をめぐり、野田佳彦首相が週内にも政府・与党幹部で構成する「社会保障改革推進本部」を設置し、消費税率の引き上げ時期や増税幅の年内決定を指示する方針を固めたことが28日、分かった。』

消費税についての前哨戦」とも一部で言われる『震災の復興財源となる「復興債」の発行と、その償還のための税制改正措置を含むもの』として『国会に提出されている「復興財源確保法案」』は「衆院本会議で賛成多数で可決され(中略)12月上旬までに成立する見通し」となっているわけですが(※4/※5)、私見を述べるならば2%以上の実質経済成長率が実現されている中での消費税や所得税を含めたその他諸々の増税というのがあるべき姿ではないかというように考えています。
以上述べてきたように、①EFSFの拡充、②ユーロ圏共同債の発行、③IMF(≒日米中)の支援という三点が同時に実現されるということ以外、最終的にユーロ崩壊を食い止める方法というのは存在しないのではないかと私は認識しています。
今後上記三点を同時に実施するにはユーロ圏各国の政治家に相当レベルの胆がなければなりませんが、ポピュリズムに走り自国の選挙民のことだけを考えるというように、そうしたレベルに達していなければ話しが纏って行く方向にはなるはずもなく、ユーロ崩壊は現実のものとなって行くでしょう。
例えば今「イタリアとギリシャでは、政治以外の世界でキャリアを積んだテクノクラートが、選挙で選ばれたリーダーと交代している」わけですが(※6)、こうした人達が最後に何を成し遂げることが出来るのかについては胆が据わっている人物か否かが最も大事な問題であるということです。
現況とは正に風雲急を告げる大変厳しいものであり、世界中の株式市場もそうしたことを組み込む形で動き始めてきているのではないかと私は見ています。
仮にユーロ崩壊が現実のものとなってくれば、最早リーマンショックの比ではない大きさで世界経済に衝撃が走ることになるでしょうし、正に世界恐慌の引き金になる可能性すらあるというふうに考えています。

参考
※1:伊・仏の国債入札順調 東欧で波乱、懸念は根強く
※2:フィッチ、米格付け見通しを「弱含み」に トリプルAは維持
※3:「国際公約」消費増税に政権の命運 法案が解散左右
※4:復興財源確保法修正案 衆院通過
※5:東日本大震災:「復興増税」が衆院通過 来月上旬、成立の見通し
※6:【社説】ギリシャとイタリアでテクノクラートが台頭




 

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