北尾吉孝日記

『見直されるか日本株』

2011年12月8日 11:25
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先月26日の日本経済新聞「日本株、売り込め 証券大手がセミナー」という記事にも下記記述がありますが、大和証券グループがキャラバン隊を組んで日本株を推奨すべく世界を周るということです。

『株式市場への資金流入が細るなか、証券大手が「割安になった日本株」の売り込みに動き出した。大和証券グループは所属するアナリストらが「エクイティキャラバン」を約20年ぶりに結成。17日に米ニューヨーク、21日に英ロンドンで機関投資家に日本株投資の有利さを訴えたほか、25日にも東京都内で金融機関の担当者ら200人超を集めてセミナーを開いた。
(中略)東証1部上場企業の株価は低迷しているが、PBR(株価純資産倍率)が解散価値の1倍を平均で下回り「割安」とみて買い時を探る動きもある。』

凡そ3年半前にも『オイルダラーの還流問題』と題したブログで下記のように述べましたが、ある日突然原油価格が4倍に跳ね上がった1970年代のオイルショック時に、私はオイルダラーの還流に向けてキャラバン隊を組織し3ヶ月おきに一ヶ月間程度を掛けて欧州、中東、アジアと世界を何度も周ったという記憶があります(参考:2011年6月2日北尾吉孝日記『歴史・哲学の重要性』)。

【第一次オイルショック当時を振り返ってみますと、世界中から巨額のお金がオイルダラーとして中東産油国に蓄積された後、この資金の一部は当然投資資金としてロンドンやNYに流れていきました。当時私が働いていた野村證券では、この資金を日本に一部還流させるべきだと考え、私も3ヶ月おきに日本株や債券を売るため中東諸国に出張しました。】

上述した通り当時はオイルダラーの還流を目的としたものでしたが、今度のように純粋に日本株が割安になったということでキャラバン隊が結成されたというのは大いに結構なことであるというように私は思っています。
考えてみますと、2008年9月のリーマンショックというのはCDO(Collateralized Debt Obligation)やCDS(Credit Default Swap)といった金融デリバティブ商品が膨れ上がり、そしてまたそれらが細々にされエキゾチックに混ぜられて毒まんじゅうが作られ、そうしたものが世界中に伝播する中で起こった現象であります(参考:2010年3月25日北尾吉孝日記『米国金融規制改革法案について』)。
そして今度は「欧州ソブリン危機」の進行により所謂PIIGSの国債が毒まんじゅう化しているわけですが、欧州金融機関については基本的には当該国債を初めとした債券を皆大量に保有していますし、あるいは相互間でPIIGSにある銀行債や株式を抱えているので、そうした金融機関のポートフォリオが毒まんじゅう化する中で喘いでいるというのが現況です(参考:2011年11月11日北尾吉孝日記『「イタリア危機」について』)。
では日本がどうかと言うと、上述のCDOやCDSを日本の一部金融機関も結構購入していたというのは勿論事実ですし、凡そ2ヶ月前に『「デクシア解体」について』でも下記指摘したように欧州ソブリン危機により日本の個人投資家がいわゆるソブリンファンドを通じて損失を被る可能性もあるとは思いますが、こうしたソブリンを多く抱えている日本の金融機関というのは比較的少ないのではないかと思われます。

【上述した毒まんじゅうをポートフォリオに組み込んだ場合の厳しさというのは日本にとっても対岸の火事では勿論なく、日本の個人投資家の間で人気があったソブリンファンド等が如何に毒まんじゅうを抱えているのかによっては個人投資家が大損するという事態に陥り得るということも我々は想定しておく必要があると思っています。】

上記文脈で言えば、日本というのはどちらのケースについても震源地からは遠く離れているとも言い得るわけですが、新興諸国については今回のことで結構痛手を被っているというのは昨日掲載したブログ『新興国における金融政策の転換』でも言及した通りです。
つまり端的に言えば、「欧州の債務危機の影響で資金が流出し、輸出も伸び悩んでいる」というように二重の意味で新興諸国は苦境に立たされているのですが(※1)、そのような中で今回痛手を被っていないのはある意味日本だけかもしれないというようにも思うのです。
また各国とも積極的な財政出動を行うには非常に厳しい状況になってきているわけですが、その一方で先月22日の日本経済新聞朝刊「回復鈍化も「補正」が支えに 日本経済研究センター・短期経済予測(経済教室)」でも下記指摘されている通り、日本だけが震災復興という大義の下で多額の公的資金が「真水」として出て行くのですから、そうした意味では日本の状況というのは満更悪くはないのでしょう。

『12年1~3月期は公的需要がけん引し、再び成長率が高まるとみられる。21日成立した第3次補正予算の中身をみると、GDPに直接寄与する「真水」は約6・5兆円(政府最終消費支出約1・5兆円、公的固定資本形成約5兆円)と推定される。がれき処理や放射性物質の除染作業は政府最終消費支出として早めに支出されるとみられるため、公的支出全体では12年1~3月期からGDPを大きく押し上げる。がれき処理や予算手当てが進めば、公的支出だけでなく、住宅投資や設備投資も増加する。』

勿論「円高」は続いてはいますが既にメジャーな日本の輸出企業は生産拠点の殆ど全てを海外に移しており、業績に対して短絡的にネガティブインパクトが及ぼされるというものではありません。
また日本という国は2005年から所得収支が貿易収支を逆転しているという状況で嘗てのように日本で製造した物を日本から輸出するという時代はある意味終焉を迎えており、海外で製造し海外から得られる金利や配当を拡大する中で経常収支のプラスを齎すというようなステージにあるわけです。
このように所得収支が経常黒字拡大を齎し(参考:【図解・経済】経常収支の推移)、そしてまた日本国債の95%程度が日本の銀行システムを中心とした様々な金融機関によって所謂個人金融資産を背景に日本国内で消化されているような国ですから円も買われているのでしょうが、そうした意味で言えば外国人投資家は「日本は大丈夫!」というふうに判断をしているのでしょう(参考:2011年6月2日北尾吉孝日記『歴史・哲学の重要性』)。
今日本の株式市場というのは「超優良株」のPBRが0.7倍台であったり、あるいは会社によってはまともな所が0.3倍台とか0.4倍台というような信じ難い状況になっているわけですが(※2)、これはあり得ない構図であろうと私は捉えており今後相場は好転して行くのではないかと見ています。
昨今様々なヘッジファンドがいい加減な噂を流し、それを材料に彼ら自身は一生懸命に売りに動くという形ですから、海外発の「あそこの資金繰りは危ない」といった類の情報には要注意が必要であるというふうに思っています。

参考
※1:新興国は景気の減速をしのげるか
※2:【特集】注目されるPBR1倍割れ銘柄!増えれば歴史的な底値に




 

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