北尾吉孝日記

『金正日後の北朝鮮』

2011年12月21日 17:37
この記事をシェアする

金正日総書記死去」に関する報道が連日続いていますが、一年程前のブログ『今年の10大ニュースと来年以降の最重要問題について』でも下記述べた通り、私は彼の死がそれ程遠くない将来に来ることであるとは捉えていましたがこれ程までに早く現実のものとなるというようには考えていませんでした。

【最後に来年以降も注視して行かねばならぬ重要問題が何かについて述べますと、それはやはり北朝鮮の動向であると私は考えています。
上記トップ10にも「2011年の注目トピックス」にも「北朝鮮砲撃事件」が入っていないことは私にしてみれば不思議ではありますが、遠く離れた国にとって北朝鮮問題など大したことではないと考えているということなのでしょうか。
1953年の朝鮮戦争休戦以後初となる韓国領土の陸地への100発以上の砲撃により民間人が死亡したということで、当然のことながら上記トップ10にも「2011年の注目トピックス」にも挙げられるべき問題の一つであるというように私は認識しています。
上記「北朝鮮砲撃事件」は金正日体制というものが三男正恩に継承され、後継体制作りが進められて行く過渡期に起こったことであり、この問題が今後どのようになって行くのかは世界にとって極めて重要なことであると思っています。
軍事的衝突によるものか、あるいは内部崩壊の形で民衆割拠によるものとなるのかは分かりかねますが、私は正恩体制移行後、大体3~5年以内に北朝鮮は崩壊して行くのではないかと思っていて、そうなった場合に世界、そして日本がどうその問題に対して行くのかということを考える必要があると思っています。
昔から「売り家と唐様で書く三代目(初代が苦心して財産を残しても、3代目にもなると没落してついに家を売りに出すようになるが、その売り家札の筆跡は唐様でしゃれている。遊芸にふけって、商いの道をないがしろにする人を皮肉ったもの)」と言いますが、金日成⇒金正日⇒金正恩と三代続く北朝鮮という国は言わば売り家であるということです。
共産主義国としての東欧諸国が崩壊に至るまで大体70年掛かりましたが、その観点から北朝鮮について言えば、「朝鮮戦争休戦協定」が結ばれてから約60年が経過しています。
60年とは人間で言えば還暦に当たり、人生の転機として一つの節目と捉えられるわけで、物事の移り変わりというものは大体60~70年となっており、東欧諸国が崩壊したように北朝鮮についても恐らく上記期間で崩壊して行くことになると私は見ています。
上記との関連で世代交代ということについて述べますと、世という字には三十という意味があり一世代というのは一応30年となるわけで、例えば「企業30年説」は正に30年を一つの節目としていますし、あるいは以前ブログで述べた通り、中華人民共和国樹立後、凡そ30年を経て鄧小平という人物が実権を掌握し大きな修正を行ったことで中国は崩壊せずに済んだという歴史もあるのです。
従って、凡そ全ての事象において一世代の倍の60年が一つの区切りとなっており、その意味でいよいよ北朝鮮の終焉の時期が近づいてきたというように私は認識していますし、上述した観点以外も含め何となくではありますが北朝鮮という国のバランスというものが近い将来崩れ去って行くのではないかというように強く感じています。】

次なる指導者と称される金正恩という人間がどの程度の人物なのかは現時点において殆ど判断材料はありませんし、昨日の『ウォール・ストリート・ジャーナル日本版』の記事にも「一部の専門家は、金正日総書記の妹、金慶喜氏とその夫で総書記の側近である張成沢氏が、金正恩氏が労働党と軍部で十分な力を付けるまで摂政の役割を果たす可能性がある、と見ている」とありますが(※1)、正恩氏の「教育者」とされている金正日妹夫妻や大学時代の個人教授といった正恩氏の側近達がどの程度の人物なのかについてもこれまた良く分かりません(※2)。
然れども上記の一年前の小生のブログでは「軍事的衝突によるものか、あるいは内部崩壊の形で民衆割拠によるものとなるのかは分かりかねますが、私は正恩体制移行後、大体3~5年以内に北朝鮮は崩壊して行くのではないか」と述べましたが、金正恩体制の崩壊というのは正日氏が想定より早く死去したということもあって更に早まって行く可能性もあるのではないかというように思っています。
そうした時に勿論日本や韓国が核兵器を有している北朝鮮という国の行方を心配するのは間違いないことですが、恐らく金正日後の新体制について最も憂慮しているのは中国だろうと私は見ています。
と言いますのも、本ブログでも幾度か取り上げてきた「ジャスミン革命」と称される民主化運動により未だ非民主化国家として残っている国はどんどん減ってきているわけですが、そうした意味では仮に北朝鮮が崩壊するとなればいよいよ中国に飛び火して行く可能性が出てくるということがあるからです(参考:2011年11月25日北尾吉孝日記『中国民主化リスク』)。
これまで先軍政治をずっと執り軍部に対して特別な恩典を与えるという中で軍事力を持ってしか国家統治を行い得なかった北朝鮮において、今の所完全に一つであるような様子を見せている軍部が今後分裂してくる可能性というのも無きにしも非ずだと思っています。
やはり根本的には国民を飢えと寒さから如何に守り得るのかというのがキーであり、金日成、金正日に続いて若き金正恩までもが当該問題を解決出来ないということであれば、当然ながら時間の問題で北朝鮮は崩壊して行くことになるわけで厄介な問題がまた一つ起こってきたというように感じる次第です。
昨日の日本経済新聞「朝鮮半島混迷、中長期で市場どう動く 専門家の見方」という記事にも向山英彦氏(日本総研上席主任研究員)の見方として下記記述がありますが、中国としては北朝鮮経済を何とかしなければ自国が危険に晒され得るというように考えていますから、恐らく中国として北朝鮮に改革開放路線を執らせるという方向を選択すると思います(参考:2011年2月2日北尾吉孝日記『中国の今後最大の課題』)。

『今後の焦点は金正恩(ジョンウン)氏への権力移行がスムーズに行われるかどうかだ。最良のシナリオとしては、権力移行が進む中でかつて中国がトウ小平氏の下で改革開放を行ったように、北朝鮮でも市場経済化が進むことだ。北朝鮮には韓国企業が進出する開城(ケソン)工業団地があり、市場経済化が進めば、生産活動が活発になる。米国は開城製を韓国製と見なしていないが、欧州は韓国製と認定しており、貿易面でも競争力の強化につながるだろう。
最も悪いのが、北朝鮮国内で権力争いが起こり、内部崩壊することだ。大勢の難民が発生し、中国と韓国はその受け入れに多大なコストを払うことになる。国際情勢の不透明感が強まり、投資家のリスク許容度も大幅に低下するかもしれない。』

私に言わせれば、改革開放路線の推進というのはイコールで金正恩体制の寿命を縮めるということに繋がって行くのではないかと思うのです。
中国が改革開放路線を推し進めた時期というのは一応厳格な一人っ子政策が実施されていたわけですが、その中で国民の全てと言っては語弊があるかもしれませんが、その大多数を飢えと寒さから守り歴史的に評価されているのが鄧小平という人物です。
昨日のMSN産経ニュース『「功」見当たらず 国民飢えさせた「出来の悪い2代目独裁者」』という記事にも「国民の多くがひもじく疲弊するなか、金正日父子だけが肥満体というその姿が、金正日体制の悲劇を象徴している」とありますが、国民からすれば「美味しい物ばかりを食べているから死んだんだ」というように内心では皆「ざまあみろ」と思っているのではないかと思います。
勿論、洗脳教育されているということもありますから、そのようには思っていない人も多くいるのかもしれませんが、そもそも人間であることを人間が放棄することは出来ません。
即ち、今後も洗脳されたままの状態であり続けるというのは到底不可能なことであり、そのことは過去の歴史が全て証明しています。

参考
※1:北朝鮮の若き指導者・金正恩氏、統治能力は未知数
※2:金正日・北朝鮮総書記死去:金正日総書記、金日成主席死去後の94年に最高指導者




 

(任意/公開)
(任意/非公開)



Copyright © SBI Holdings, inc. All rights reserved.